ふたりのMeg

深町珠

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17 科学と感覚

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「これもかわいいねー」と、めぐは
おばあちゃんの水着を選んでいる。


「わたしのはいいから、めぐ、自分のを選んで?」と
おばあちゃんは、紺色の、しかしサテンのように
光沢のある生地の水着、水玉模様のそれを見ていたりする。


本来のサテンは、水に濡らす事のない生地であるが
科学合成によって作られた新素材であろう。

半光沢で、光の当たり方で虹色に見えたりするのは
素材の糸に細かい起伏があるから、だろう。


光の屈折は面白いもので

それが色彩に見えたりするのは

光そのものが、複数のスペクトル、いろいろな色の光を含んでいるからで

それを分散させると、いろいろな色に見えたりする。


色、と言う概念も
科学の進歩でいろいろな形に変化している。



人間は、進化のスピードが遅い。

1世代、せいぜい早くても20年くらい。

その単位でしか変化しないので


今すぐに、人の心は変化しないけれど....。





環境の変化は、20年、1単位くらいで人間に影響する。








「あたし?迷うな。」と、めぐは

あざやかなレモンイエローの、蛍光色の縁取りのある水着を手に取った。
いかにも布地が少なくて、派手。


かわいいけれど。




おばあちゃんは「そういうのだと、おなか壊すわよ」と

一体式のもの(笑)を薦めた。

こういう方が可愛いし、安全。


そういう考えはオーソドックスである。





実際、世の人間の多くは愛よりも生物的な反応で生きている。


古典の美術でも、絵画、彫塑の多くに裸婦像が多い事でもそれと分かる。

それは古今東西問わず変わらない。



何か、人の心に訴えるものを作るには、誰もが知っている、感じられる物を
表現するのが簡単である。



美、と言って裸婦を描くのは
それを美と思う心の構造が、生命を尊重するようにできているため、である。


その曲線を美、と思い
尊重するようにプログラムされている。
進化の過程で、そうプログラムされた人々が生き延びた(つまり、発情を起こすサインであるので生き延びた)。


それを大切にする心も愛である。


愛しいと思う気持は恋である。



然るに、若い男の目前にめぐ、のような子が
水着で出現するのは危険である(笑)。


なので、おばあちゃんはそれを避けるように考える。

真っ当である。




そういった生物的なサインではなく、人間として尊重してくれる「愛」を持った
人の目前でだけ、その「美」を開示する。

それだから、貴重なのである。



と、昔の人々は考えていたから
例えば、極端な宗教的戒律のある地域では

女性は顔を出してはいけない、等。

そういう形で、争いを避けるように社会が作られたりもした。






人が根底に生物である限り、社会においてそれを隠蔽しないと
争いが起こってしまう。
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