ふたりのMeg

深町珠

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別れ道

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別れ道


「おばあちゃん.....。」
めぐは、それだけしか言えなかった。


おばあちゃんは、天女のような慈愛に満ち
微笑みながら、めぐを抱きとめた。

髪を撫でながら、よしよし、と
赤ちゃんの頃のように、背中をさすり。

その感触に、めぐは

遠い、幼い日の記憶を思い出し
安堵に包まれる。




もう、なにもいらない。
恋なんてしたくない。





そう思いながら。












おばあちゃんは、めぐに言う「帰ろうか」。



めぐは、涙に暮れながら...うなづく。






おばあちゃんは、温泉に入っていたので
湯の花の香りがした。



その香りは、めぐの家の裏山にある温泉と
いっしょ。


めぐは思い出す。

楽しかった初夏、ルーフィさんと3人で行った温泉の事。
図書館のこと。




みんな、あの時で止まっていれば良かったのに。



そんなふうに、ひとの記憶は4次元的である。


いつでも、その時に戻る事がイメージでは、できる。









その夜、めぐは
リゾートホテルの部屋で、ずっと眠った。


ひと夏ぶんの疲れが出たような、そんな気持もあった。


もちろん、恋をなくした痛みもあったけれど

それは、しかたのないことだと
納得できるくらいになっていた。



人間の心の恋は、そういうものである。


生きるためのパートナーを探すための機能。だから
過去を追ってもしかたない。




おばあちゃんは、館長さんと何かお話をしてきたらしい。
旅に出る、とでも言ってきたのだろうか。




もともと荷物のない旅だった。


帰るのも気楽。





坊やのことは、ちょっと気がかりだけれども
失意のめぐは、その思いやるゆとりも無かった。

なんていってもまだ18歳の少女である。

人間としての人生、魔法使いとしての将来。
そんなものを選択に掛けて、恋を失うには
まだ早すぎる。




「とりあえず、坊やはこの世界の子だから、ルーフィさんに
後をお願いしたわ」と、おばあちゃん。


ルーフィの名前を聞いても、もう痛みも感じなかった。


彼は、旅人として生きるしかない魔法使い。



めぐは、魔法が使えるけれど人間だ。



生きる世界が違うんだ。


めぐは、そう思った。





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