ふたりのMeg

深町珠

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時の流れ

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時の流れ


めぐは、なんとなく安堵を覚えた。
やすらぎ、と言うのだろうか。

こころの言葉だけで、そう感じるのは
思うと不思議だけれど

そう、感じた。



電車のモーターは、唸りを上げて。

運転手さんは、電流を切る。


かたんかたん、と
レールの継ぎ目を軽快に乗り越えながら、音がする。



「いろんなことがあったんでしょう?」と、めぐは
ラジオのインタビュアーみたいな聞き方をした。

電車は「ああ。わしらがこのレールを走り始めた頃は
まだ、戦争が始まる前、だったな。
男は、国を守った。人を守った。
それで、電車を動かす男はみんな、戦地に向かっていたから
女の子、そうだな。お嬢ちゃんくらいの子が運転してたりしたな。」

と、懐かしい事を思い出して、語っている電車。


また、停留所が近付いた。こんどは、降りる所だ。


「あたしくらいの・・・?」と、めぐは驚く。
自動車も運転した事ないの。と、ひとり言みたいに言うと、電車は

笑いながら「高校生くらいの子は、運転してたな。戦時中だった。
みんな立派だった。もう、みんなおばあちゃんだろう。
電車が好きなら、運転してみないか?」と
電車は、中吊り広告にある『乗務員募集』のカードを示した。」


「あたしが・・・・運転?」めぐは、夢想した。
紺色の制服で、白い手袋。
颯爽と電車を駆っていく自分。

・・・なんか、想像できないけど(笑)。




めぐの家の坂下の、停留所が近付いて。

電車は、モーターをブレーキにして減速した。


「ごめんなさい、もう、降りるの。」と、めぐは言うと

電車は、微笑むように「またおいで。」と言った。



「ありがとう、電車さん。また乗る。長生きしてね!。」と
めぐはにこにこして。


それは、声に出ちゃったので(笑)

ルーフィも、にこにこ。


ついでに、運転手さんも、にこにこ。

電車が好きな子の、ファンタジーだと思ったのだろうか。


でも、時々は本当に、心が通じる事だってある。





ステップを降りると、もう町並みは夜の様相で

ガス灯みたいなデザインの、鋳物っぽい灯りが点る。

実は、新しい技術で中空鋳造された軽金属の、レプリカで
電子発光の灯りなのだけれど、見たところは昔のガス灯みたい。


そんなふうに、時代は巡っていくのだけれども・・・・。


この灯りが、本物のガス灯だった頃から、あの電車さんは
走ってたのかしら・・・・。

そう、心でつぶやくと

それは電車に伝わり「そんなに年寄りじゃないよ(笑)。それは100年くらい前さ。」
と、豪快に笑って彼は、ドアを閉じた。


運転手さんがブレーキを緩め、ゆっくり、重々しく歯車が回りだして
モータは唸る。



赤いテールライトを見守って。


なんとなく、いい夜。


「時の流れって、すてきですね、時を重ねてゆけるって。」と
めぐは思った。


ずっと、すてきに時を重ねて生きたい。

けれども、ルーフィさんは・・・・・。同じ時を重ねて生きてはいけないのね。

その事をふと、思い出してしまって。
急にさびしくなっちゃう
めぐ、だった。

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