ふたりのMeg

深町珠

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心の物理

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心の物理


「モーターがブレーキになるんですか?」と
めぐは、ちょっと不思議そう


その、半疑問の表情は
なんとなく、子犬のように愛らしいと
ルーフィは思ったりするけど

でも、そんな事言うと怒るかな(笑)なんて。


微妙なお年頃。


「うん、ほら、磁石をふたつ、向かい合わせにすると押し合うでしょう?
小学校の理科の時間に実験したみたいに。



と、ルーフィ。


「うん。それで・・電気が起こるんですか?」と、めぐはまだ、半疑問。



「そう、それでね。この電車のモーターは電磁石だから。回らない方の磁石も電気で磁力が変えられる。


磁石同士が反発するように、電気磁石同士が向き合うなら、電線には電気が起きているって訳。



モペッドのヘッドライトの電気と、原理は一緒。


その電気をね、どこかで使うと・・・
抵抗になって、電気が流れにくくなるから

モーターの軸が周り難くなる。それを
ブレーキにしているのね。」と、
ルーフィは簡単に言った。」



「面白いですね。触ってないのに
力が伝わる、ブレーキになるって。」とめぐは感想を述べた。



「見えないからね。でも、力は伝わる。地球の重力もそうだし、この宇宙の空間が成立してるのも、そんな重力場のせいだし」と、ルーフィは
楽しく、物理の話をした。


元々、魔法は物理学的な側面があるのだ。

「モーターには、小さな宇宙があるんですね。」と、めぐは空想的に。


「うん、僕らの体を作っているのは、タンパク質だけど、炭素と水素だね。


その炭素にしても、原子核、それと電子が、太陽と惑星みたいな
宇宙そっくりの形で動いている。

その、電子が流れるので、電気が起こるんだね。


その、タンパク質を使って、体のあちこちが出来ていて。

神経ができて、脳が出来て。

覚えたり、考えたり。


それはもう、ひとつの宇宙だね。
重合宇宙。宇宙の中に宇宙がある。

僕らが時間旅行する、この超次元時空間によく似ているね。」


と、ルーフィも、少し空想的に
話をつないだ。



「それだと、電車さんにも心があるかもしれませんね。」と、めぐは
さっきから気になっていた、電車の心の事を尋ねて見た。




電車の運転手さんは、マスター・コントローラーを元に戻す。

計器のひとつ、針が、すっ、と左に戻った。

ブレーキハンドルを、静かに回すと
もうひとつの計器で、ふたつある針のひとつが、すっ、と左に振れた。


車輪から、軋み音がして。

「空気ブレーキだね。」と、ルーフィが言う。
ブレーキのマイナス加速度に従って、体が慣性に沿って揺れる。

その力も、触ってはいないけれど
確かに、力だとめぐは思う。



v2=v1+atである。
加速度はマイナスなので、速度が減っていく時の減速度、なのだけど。


その力に沿っていると、ルーフィ、となりに立っている愛しい存在に、めぐは、ぴったりしてしまう(笑)。

触れないのに、力が掛かってる。
触れたいって思う(笑)。


それも、変な物理学かな?って
めぐは、ちょっと恥ずかしいような
嬉しいような。


不思議な気持ちになった。






「オートバイさんとお話ができたのに、モペッドさんと、お話できなくて。
ちょっと残念ですね。」と、めぐ。


ルーフィは「偶然だったけどね。
オートバイさんは、必要があったから
話掛けてくれた。
そんな事が無かったら、黙っていただろうね。にゃごみたいに。」


めぐは、すこし考えるみたいに
吊り革が、ゆらゆらゆれるのを
眺めながら「にゃごも、お話できるんですね、にゃんこの間では。」と

楽しそうに、微笑んだ。



もちろん、ひとの言葉は通じないけれど

心の言葉で、通じるかもしれないね。



そんなふうに、ルーフィも思ったりした。


電車は、停留所での
お客さんの乗り降りが済んで。


ドアを閉じる。

空気が抜ける音がすると

運転手さんの前にある、計器のひとつ、針が少し動いた。




「本当に生きてるみたい」と、めぐは
計器の動きを眺めながら。


運転手さんがブレーキハンドルを緩めると、針が二本ある計器の
針のうち一本が、す、と上がる。


「どうなってるのかしら?」とめぐは
考えたり(笑)。


「ああ、あれはね。
元々、空気の圧力でブレーキを緩めるようになっていて。


いつも、一杯の力とバネの仕掛けでね、ブレーキが掛かった状態で止まってるの。


それを、走る時だけね。
空気をね、反対側に掛けて
ブレーキを緩めてるんだね。





と、ルーフィはさらりと言う。


でも、めぐにはちょっと複雑。



「んー、わかんない。」((笑))



ルーフィは楽しそうに「運動会の綱引き、みたいな感じかなー。
両方から力が掛かって、真ん中は
動かない。


それが、ブレーキが効いてる状態。

緩める方向に動かすには、かたっぽの力を抜くか、もう片方に力を足すか。」



「ふつう、力を足す方向で考えますね。」と、めぐは言う。



「そう、でも電車は重たいし、空気圧力を瞬間に上げるのは大変だけど、下げるのは楽。


もともと、エネルギーが高まってる状態から、下げるには楽だね。

自転車のタイアがパンクする時みたいに。

でも、空気入れるのは大変でしょう?」



なるほど、と
めぐは、なんとなく分かったような気がした。



「空気が抜けると、ブレーキが押されるんじゃなくて、走る時に
引いておくんですね。」と。


ルーフィは「そうそう。重いもの、電車は。

急に止まるには、それだけの準備がね。いるのさ。」と。


電車は、また
歯車の音を響かせて、モーターが唸りを上げた。

重いよ、って
電車さんが言っているみたいな
そんな気になった(笑)めぐだった。


「重くてごめんなさい」と

めぐは、ちょっと恥ずかしそうに(笑)。


クリスタさんは軽そうなので
いいなぁ、とおもったり。(笑)



「お嬢ちゃんは重くないよ」と
めぐに、誰かが語りかけたような気がして

めぐは振り向く。

低い、だけれども優しげな声だ。


ルーフィは、めぐが振り向いたので
すこし、驚いたけど

なんとなく、雰囲気で分かった。

めぐが、心で電車さんの心と
お話してみたい。

そう思ったから、電車さんが
答えてくれたのだろう。




「あなたは・・・・電車さんなの?」と
めぐは、心でつぶやいた。



その声は、静かに頷いて。


「そう。わしはお嬢ちゃんの乗っている電車さ。ずっと、この町を走ってるんだよ。もう・・・仲間も減ってきたけれど。」と、電車さんは
孫とお話するおじいちゃんのように
静かに、優しく語った。




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