ふたりのMeg

深町珠

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littie one and the world

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littie one and the world


その、ゆらゆらするヘッドライトの
黄色い光を楽しんでいるめぐの行方から
新しい型の自動車が、眩い青白い光のヘッド・ライトで
近づいてくる。

それは、スマートで
音も無く過ぎ去った。

電気自動車。

VVVFインヴァータのノイズが、音楽的に響く。


「あたし、こっちの方が好きだな、ああいうのより」と
めぐは、モペッド、オイルとガソリンの匂いのする
旧い二輪車を称えた。


「うん、そうだね。」と、ルーフィ。


形・音・匂い。

そういう、機能と関係ないところに
人間は愛着を感じる。

なぜかと言うと、それは
記憶の中に、快かった日々の思い出があるから。

恋愛もそうかもしれない。





「でも、このモペッドだってああいう光は出せるんだけどね」と、ルーフィ。


それはそうで、このモペッドが作られた頃には
電子発光ディバイスは無かった。

真空中に不活性ガスを充填し、そこにタングステンのコイルを巻き
白熱させる事で光を得ていた。


現在は、ダイオード発光が主流である。
それは、簡単に言うと電子が、シリコンの壁を昇る時に
勢い余って空気を振動させてしまうから。

電波も、音波も波である。光も、量子も。


小さなその光を、たくさん集めて大きな力にしているのだ。



それは、素晴らしい技術だけれども

愛でて楽しむ部類のものでもない。


「でも、このモペッドには、このライト。」と、めぐは
にこにこしながらそう言った。


「そうだね」と、ルーフィ。


ゆらゆらしない灯りにする事も簡単なのだけれど、
それは現在の電子技術あっての事。


このモペッドが作られた時代には、まだ真空管しか無かったのだから。


今では、高温超伝導までが実用になる時代であるから
隔世の感がある。


E=IRの、Rが無くなってしまうのだから。

つまり、永久に電流が流れ続ける。


詳しい理由は分かっていないから、現代の魔法であるとも言える。


いずれ、解明されるだろう。



ルーフィの持っている魔法と、現象だけ見ると似ているが。



そちらは、解析される事が無いのは
使われる人が少ないから、だ。


町が近づいて、楽しいドライブも終わり。


「ガソリン入れていかないと」と、ルーフィは言い

ガソリンスタンドに寄った。


クラッチを握って、エンジンと車輪の接続を離す。

エンジンは、ぽんぽんぽん、と
軽やかな音を立てながら回っているけれど

こうすると、自転車のように走る事もできる。


面白い仕掛けだ。


二人乗りのまま、スタンドに入る。

自分で給油するタイプのお店なので、ルーフィは飛び降りて
めぐは、ペダルを漕いでアレイに停めた。


エンジンを停めると、耳の奥がしーん、と鳴っているような気がすると
めぐが言う。


ルーフィは「楽しかったね」と、にこにこしながら。


めぐも、うん、と言って。



自転車のようなスタンドを下ろし、後輪を浮かせると
足元にある小さなガソリンタンクの蓋を開け、燃料ノズルから
ガソリンを注ぐ。


ガソリンが揮発して、臭いがする。




「ストーブみたい」と、めぐは言う。


「うん、似てるよね。これって、遠い昔の動物だったんだよ。
生まれ変わる時に、この世界に残った体が
こうしてまた、役に立っているんだ。」と、ルーフィ。



「・・・・役に。」と、めぐはなんとなく
果てしない気持になった。


死んでしまうのは悲しいことかもしれないけれど
でも、心は生まれ変わる。

残された体の方も、こうして役に立って。

もともと、植物を食べて動物は生きる。


空気中のCO2を、植物は炭酸同化作用でエネルギーにする。
豆科植物などは、N2を窒素固定でエネルギーにして。

それらを動物は食べ、からだを作る。それは、CH基であったり、NH基であったりして。


それらがまた、燃料になって。

また空気に戻っていく。


それをまた、植物がエネルギーにする。




それを、果てしないとめぐは思う。


「みんな、一緒なんですね。あたしも、世界の一部。」


「そうだね」と、ルーフィも微笑む。











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