35 / 502
天使さんと神様
しおりを挟む天使さんは、ルーフィのつぶやきを聞いて
思う。
神様が、めぐさんの人生を
最初からやりなおしてもらいたい
と思うには、たぶん、わけがあるから。
恐ろしい魔物の記憶が、心の
どこかに残っていると
健やかになれない。
それに、めぐさんの記憶に
異なる世界の事が残っていると
そこに、次元の歪みの記憶があって。
ゆくゆく、後の世代に受け継がれて
いくと、
いつか、それが
異なる世界につながる事になったり。
そういう事を心配して、の事。
そうなのかしら。
もし、そうなら。
天使さんは、その夜
めぐや、ルーフィたちが
眠りについてから、神様にお伺いを立てた。
静かな草原、めぐの家の西側に広がっている
なだらかな斜面。
月明かりが照らし、緑の細い草を
つややかに輝かせていて。
時折、群雲がながれ
蒼い影を作る空間に
透明な翼で、飛翔い。
神は、寡黙にして。しかし、天使さんの
告げたい事を理解しているようだった。
「その娘は、能力を持つ、と言う訳か。」
天使さんは、微笑みながらうなづいた。
そうなると、結局魔界に関わりを持つ事になるから
次元の歪みについて隠す事は
なくなる。
時間旅行をすると言う事は、
自ら異なる世界に向かう事だから。
「しかし、そうなれば
お前の宿れる相手にはなれまい。」
と、神は憂慮した。
魔法、つまり魔なる世界の法典に
基づく能力を持つ者と
天界の者が共存できない、それは
当然だった。
そうすると、元悪魔くんの願いは
途中であったとしても
成就を見届ける事なく、天使は
天に戻る事になってしまう。
あくまで、めぐの
人間としての幸せを思って
神は、裁定を猶予したのだから。
「役目を終えたら、戻るのが定めであろう、天使よ」と
神様は、荘厳に。
「いえ、わたしは天使ですが
天には戻らないで、ここで
めぐさんと、にゃごさんと
共に暮らして行きたいと思います」
と、天使さんは、凛々しく、しかし柔和な表情でそう言った。
「なんと」神は絶句した。
天使としての永遠を捨てても
めぐ、とにゃご、の幸せのために
限りある生命を選ぶ、と言う
天使の思いは、神様にも
ちょっと不可解な言葉。
でも、ひとのしあわせを願うのが
本来、天使の勤めなのだ。
摂理である。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
髪寄りな話~完全ノンフィクション
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
エッセイ・ノンフィクション
【これは……完全なる実話です】
10代の頃は髪の毛が多すぎて悩んでいたあの頃……今ではすっかり抜け毛に怯える日々。抜け毛を減らし、毛量を増やす為の日々を切実と綴らせて頂きます。
完全ノンフィクションなので、色々と突っ込みどころ満載かもしれません
※特に何か目新しいことや変化があった場合に投稿するので不定期更新になる予定です。ご了承下さい。
※他サイトでも投稿あり

セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました
今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ
鈴木竜一
ファンタジー
「おまえを今日限りでパーティーから追放する」
魔族から世界を救う目的で集められた救世主パーティー【ヴェガリス】のリーダー・アルゴがそう言い放った相手は主力メンバー・デレクの愛弟子である見習い女剣士のミレインだった。
表向きは実力不足と言いながら、真の追放理由はしつこく言い寄っていたミレインにこっぴどく振られたからというしょうもないもの。
真相を知ったデレクはとても納得できるものじゃないと憤慨し、あとを追うようにパーティーを抜けると彼女を連れて故郷の田舎町へと戻った。
その後、農業をやりながら冒険者パーティーを結成。
趣味程度にのんびりやろうとしていたが、やがて彼らは新しい仲間とともに【真の救世主】として世界にその名を轟かせていくことになる。
一方、【ヴェガリス】ではアルゴが嫉妬に狂い始めていて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる