ふたりのMeg

深町珠

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イケメンさん

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...cool!

そこには、どことなくルーフィと雰囲気が近い
冷涼な感じのスマートな紳士が
透明な瞳、静寂な面もち。

クール、と言うのが相応しいイメージだった。


「イケメンでしょ」なんて、ルーフィは笑う


「うん。かっこいー。」なんてわたしがつぶやくと

「でも、眠っちゃってるんだ、今は」
と、ルーフィは寂しそうに言った。

眠ったままでずっといられると思ってるのかなぁ、とも。「でも、魔法使いさんならなんでも出来ちゃうんでしょ?
どうして、眠っちゃったりしたのかしら」と
わたしは、なんとなくそう思った。

だって、おいしいものも食べられて、好きなことできて。
それに、時間旅行もできて。


「僕にもよくわからないのさ」と
ルーフィは遠い、白い雲を見上げるように、言った。


「眠る前に何かあったの?」と
わたしは、ライムの香りに包まれながら。


「変わった様子は無かったけれど...」とルーフィは言った。
でも、少し前から
何か考え入っていて。
それは、いつもだから
気にしなかったんだけど、と言った。

「ふうん、魔法使いさんっていつも考えてるの。」
物語や、アニメの魔法使いさんは
呪文とか、カードとか。
簡単そうに使ってるみたい。


「それは、お話の世界だからね。」と
ルーフィは言った。
大抵のお話は、魔法を使ってるひと、のお話で
魔法を作ったり、見いだしたりするお話じゃなくて。

それを作る人は、ちょっと違うみたいだね。
ルーフィは、思い出すようにそう言った。「でも、魔法使いさんならなんでも出来ちゃうんでしょ?
どうして、眠っちゃったりしたのかしら」と
わたしは、なんとなくそう思った。

だって、おいしいものも食べられて、好きなことできて。
それに、時間旅行もできて。


「僕にもよくわからないのさ」と
ルーフィは遠い、白い雲を見上げるように、言った。


「眠る前に何かあったの?」と
わたしは、ライムの香りに包まれながら。


「変わった様子は無かったけれど...」とルーフィは言った。
でも、少し前から
何か考え入っていて。
それは、いつもだから
気にしなかったんだけど、と言った。

「ふうん、魔法使いさんっていつも考えてるの。」
物語や、アニメの魔法使いさんは
呪文とか、カードとか。
簡単そうに使ってるみたい。


「それは、お話の世界だからね。」と
ルーフィは言った。
大抵のお話は、魔法を使ってるひと、のお話で
魔法を作ったり、見いだしたりするお話じゃなくて。

それを作る人は、ちょっと違うみたいだね。
ルーフィは、思い出すようにそう言った。「でも」
ルーフィはつぶやいた。
「魔法使って、何かが出来たしても
限りはあるからね。
例えば、君が書いているトラベル・レポートにしても
未来から、そのレポート自体を転送すれば
持ってくる事はできる。
でも、そのレポートで、たとえば君が
エミー賞みたいな表彰をされて
嬉しいかなぁ?」


..そっか。
わたしは、思った。
たとえば、片思いの彼に
おまじないをして。

魔法があったらいいなぁ、なんて
思ったりしても。

ほんとに魔法で、彼が
振り向いてくれたとしても。


なんか、うれしくない。


「ね。やっぱり魔法って言っても、限界はあるんだよ。」ルーフィはにっこりした。



「じゃあ、眠っちゃった理由って限界のせい?」
と、わたしはルーフィに問いかけた。

マロニエ通りの並木は
さわやかにさらさらと揺れて。

わたしたちとしては、シーリアスな内容の
おはなしをしてるけど

ふつうに、おだやかなお昼さがり....


「かもしれないね。その鍵を探さないと
僕も、もとの世界に戻れない。」



じゃあ、鍵が見つかったら
ルーフィとの楽しい旅も終わっちゃうの?

それもちょっと淋しいな、なんて
わたしは思った。でも
ルーフィはそれを、どう思ってるのかしら...


そういう時、魔法が使えたらいいのにな、と思う(笑)「でも、魔法で200年も眠っていられるなんて...」
わたしは、素朴にそう思った。

朝、起きなくちゃいけないときなんか...
もう5分、寝られたらと思ったりするのに(笑)200年なんて。

ルーフィは「君っておもしろいね」なんて笑った。

「ほら、小さい頃って時間を忘れていたりするし
おじいちゃん、おばあちゃんもそんな感じでしょう、あれと似ててね。
時間量子の動く速度が変わるの。それをね、魔法で大きくすると
傍目に見ていると200年、なんてタイムスケールが
彼の側では一瞬、なのさ。
ほら、僕らが1976年に行っていた間の数時間が、こちらでは一瞬だったように。」


ルーフィはそう言った。


「だとすると、ルーフィのご主人様はただ眠っているように見えて
本当は、どこかに行っているのかもしれない...わ」と
わたしは、ひとりごと。


「うん、ひょっとすると
過去か未来に旅したまま、戻ってこれなくなったのかもしれないね。
あるいは異世界に行ってしまったのか....なら、戻ってこれる理由を
作ってあげないと。」

ルーフィは、すこしまじめな口調になった。
「ねえ、ルーフィ」と、わたしは聞いてみた。
どんなところに普段は住んでるの?と。


ルーフィは答える代わりに、空間に円を描いた
さっきのスクリーンを、すこしワイドにした。


オープンカフェで、お茶を楽しんでるひとたちには
このスクリーンは見えないらしい。

それはそうね。もし見えたら珍しがって
ひとだかりができちゃう。


スクリーンの中、眠っている
ルーフィのご主人様は、王様のベッドのような
吊り天井のある空間に。

でも、壁を見ると洞窟みたい。


どんなとこなんだろう?と
映像をじっと見たわたし。

spark☆


瞬間、わたしは飛ばされた。異空間へ。

こんどはルーフィの存在がしっかり感じられ、不安じゃなかった。



次の瞬間、わたしは絶海の孤島、切り立った崖の上の
草原で潮風に吹かれていた。

「どこ...ここ?」



傍らのルーフィは、ふつうの男の子の感じ。

「やっぱ、その方がいいねルーフィ。かっこいい」


と言うと、ルーフィははにかみ気味にうなづいた。


そういうところもイギリスっぽいなぁ、と思う。


東洋人ならそういうとき、否定っぽく首を横に降ったりするけど

イギリスの人はたいてい、うなづく。

表情に含羞を込めて、ありがとう、の意味で頷くの。


旅してると、いろんなとこで異文化を感じるけど
ルーフィもフォーリナーなんだなぁ、なんて(笑)「すごいとこに住んでるのね...お買い物とかどうしてるの?」

思わずつぶやいたら、ルーフィは、とっても可笑しそうに笑いながら
「君って、可愛いなぁ、ほんと」

って、そういわれると
悪い気はしないけど、でもそんなに可笑しいかしら。

午後の草原、でも不思議な光景。

平らな無人島に、草がいっぱい。

周りは崖。

端っこに、岩山みたいなお城がそびえてる。


こんなところに住んでいて、淋しくないのかしら。
あ、そうだ。テレビ映るのかな...


ルーフィに聞いてみようかな、と思ったけど

気づいた。ここはどこか遠くの時空間。

ひょっとしたら200年前かもしれない。


そう思うと、古城がとても威厳を構えているように見えちゃって。


足を踏み入れるのが少し怖い。でも、

「さあ、行こうね」

と、るーふぃはすたすたと歩いて行く。

後ろ姿もとっても素敵ね、なんて思いながら
でも、魔法の絨毯で行く訳じゃなくて
歩いてる魔法使いって、ちょっと可笑しいな、なんて思ったりもした。


その、お城の中はひんやりとしていて。

どことなく、人のいる気配が感じられない空間だった。

大きな、とてもおおきな
エントランスを歩くと、靴音が響いて、帰ってくる。
跳ね返る音にまた、残響が響く。でも、岩肌をくり抜いたような階段と、壁の雰囲気は
どこか、見覚えがあるような気がする。


どこだったかな...

あ、そうだ。編集部の入り口。

「ねえルーフィ、ここって編集部に似てない?」

と、なんとなく尋ねてみる。

彼は、振り向いて

「うん、そういう事ってあるんだ。全く違う時間、空間に似たような所があったりする。
つながっていたりするんだよ。」


...まさか。あの編集部がお城?

愉快な想像に、わたしは笑顔になった。


じゃあ、編集長は魔法使いさんかしら。

なんとなく、ほんわかしてるところは
魔法使いさん、って言うよりは中華の仙人みたいだけどな。


にこにこしながら、わたしは階段を昇ってゆく。

ごつごつした岩肌は、長い年月に触れて風化している。

階段の途中、大きな扉はくすんでいたけれど
スムーズに開き、その扉の向こうには
スクリーンで見たのと同じ光景。でも、岩肌をくり抜いたような階段と、壁の雰囲気は
どこか、見覚えがあるような気がする。


どこだったかな...

あ、そうだ。編集部の入り口。

「ねえルーフィ、ここって編集部に似てない?」

と、なんとなく尋ねてみる。

彼は、振り向いて

「うん、そういう事ってあるんだ。全く違う時間、空間に似たような所があったりする。
つながっていたりするんだよ。」


...まさか。あの編集部がお城?

愉快な想像に、わたしは笑顔になった。


じゃあ、編集長は魔法使いさんかしら。

なんとなく、ほんわかしてるところは
魔法使いさん、って言うよりは中華の仙人みたいだけどな。


にこにこしながら、わたしは階段を昇ってゆく。

ごつごつした岩肌は、長い年月に触れて風化している。

階段の途中、大きな扉はくすんでいたけれど
スムーズに開き、その扉の向こうには
スクリーンで見たのと同じ光景。そのお部屋は、スクリーンで見たのとそっくり。

「そっくりだわ」と思わずつぶやくと

ルーフィは楽しげに「そうさ、だってそのままだもの」と。
にっこりと笑った。

部屋は、サッパリ、なんにもない。

映像で見たベッドと、ライティングデスクのようなテーブル、書架。

魔術書、呪術書、歴史書、予言書、占星術書。
物理学書。

「いろんな本があるのね」何気なく、読みかけの本を見ると
それは、歴史民族に関わる予言書だった。

時間操作の方法論、かしら。
フランス語で書かれてるから、よく解らない。

「これを読んで、眠りに入ったのかしら」とわたしはひとりごとみたいに言う、彼は「そうかもしれないね。現実に流れている時間から退いた、とすると」



眠っている魔術師は
ルーフィみたいに涼しい雰囲気の美形で
思わず、頬を寄せたくなるような(笑)。

なんとなく、お伽話みたいに
ふらっ、とkissすれば目覚めるかな?

なーんて、ちょっといたずらしたくなりそうな
そんな感じ。


ルーフィは、見透かしたみたいに
「kissしても、起きないよ、たぶん」


なんて言うから、わたしはちょっと戯れに「こないだ、kissしてみたらって言ったじゃない」って
言おうかな、と思って
ルーフィに振り向いた。


でも、言わない方がいいかな。(笑)

ルーフィは、真面目な瞳だった。



「眠る前の時間に旅行して、ご主人様の眠りを止める事ってできないのかしら。」
わたしは、ひとりごとみたいにそう言った。

でも、ルーフィは真面目に「うん、僕もそう考えた。最初にそうしてみたんだけど、彼の意志が固かったし、魔法の力が強すぎて
僕じゃどうしようもなかったんだ。それで、誰かの助けが必要だと思って
さ迷っていたら、君に出逢った、と言う訳。」

ルーフィは、冷静に深刻な話をした。ご主人様の事を彼、と呼ぶあたりは
意外にFriendlyな関係なのかもしれないな、と
わたしは思った。

ふつうの英国的風習なら、古来の階級制的な感覚が残っているから。「いつまで眠っていられるのかしら」ふと、ひとりごとのように私が呟くと
「うん、彼は魔法使いだから...たぶん、代謝を極端に下げてるはず。自分が意図する時まではね。」

「魔法使いって不死身なの?ずいぶん若く見えるけど」

見た感じ、ルーフィより若く見えたりもする。

「うん、ほら、時間旅行をするって事はね、物理時間とは関係なく生きてるんだね。」


そういえば、魔法使いって絵本だとずっとおばあさんだし。生まれた時からおばあさんだったのかなぁ、なんて思った。


「たとえば、夢の中なら時間はないよね?いつまでも眠っていたいって思う事あったりする。それと似てるかな、魔法って。」

ルーフィは、説明しにくそうにそういう。

「じゃあ、彼の夢の中に入れば何か解るかしら」


と、ルーフィに振り向いてわたしは言う。彼は
「夢の中に行く魔法があればね」と
微笑みながら両手を振った。


じゃあ、どうすればいいの?と、わたしはふと閃いた。

flash☆☆見る前に跳べ、って
古い格言みたいに(笑)
とりあえず跳んでみた。

どうしてかわからないけど行ってみたい、そう思ったから。

光が川のように流れ、褶曲している。
煌めいているみたい。

触れてみたい。そう思ったけど
なんとなく、触ってはいけないものみたいに感じた。


「そう、un-touchable」

roofyは、気づくとすぐそばにいた。

緊張していた気持ちが、さらり、と解れ
わたしは、自然に彼にもたれた。


「ここ、どこ?」

さあ、どこかな、と
彼はふつうに答えた。

そのことばより、とても近くにある彼の温もりの温かさで
ここが夢の中じゃない、そう思った。

触れてはいけない、そう彼が言った光の川よりも
わたしは、何か触れてはいけないものに触れてしまったような、そんな気がした。
「この光の川...なんだか」
と、わたしはきらきらしている水面を見て。


「うん、それは時間量子。ひとつひとつがね、時刻なんだ。褶曲してるのは、たぶん時間が歪んでるところ」

と、ルーフィは涼やかに答える。


「じゃあ、時間旅行してる、ってところ?」
と、わたしはルーフィを見上げて。
彼はとっても背が高いな、って
間近で見ると特にそう思う。

最初に、お屋根の上で逢った時も
そうだったけど、あの時は座っていたし。

お屋根から落ちる時だったから
感じてるゆとり、なかった。


ルーフィは、川を見ながらつぶやくように
「そうかもしれないし、夢を見ているのかもしれない。」



「夢?」






「うん、夢を見ている間って、時間も空間もないよね」




わたしは納得。そう、夢って自由きままで
どんなところにもいけちゃうし。いいなって。
でも、ふと気づく。
これが、ルーフィのご主人様の時間に影響している
時間量子の流れで、褶曲しているところ、淀みが「夢」だったら..

反射的に、わたしは淀みのひとつに近づいて。

思いの外深くて、なにか
吸い込まれるような感じがして

わたしは、ふらり、と
淀みのそばに...






「あぶない!」
ルーフィが大きな声を出して
我に帰ったわたし。
でも、遅かった。


burn!☆
spark☆

すごい閃光と炎が上がった。

わたしを助けようとして、ルーフィが
時間量子の流れに飛び込んで。

それからは、わからない。
煙と炎で、どうなっているのかも。

「ルーフィ、ルーフィいーっ!」わたしは、力の限り叫んだ。

でも、無限大空間の果てに、虚しくその声は消え去った。ゆらり、と
遠くからひと影。

「ルーフィ、ルーフィなの?」

わたしは尋ねる。叫んでいたかな。もう、わかんない。


残念だけど、と静かに告げたその人は...涼やかな瞳、すらりとした長身。

「あ、あなたは!」

眠っていたルーフィのご主人様だった。

ルーフィが御面倒を掛けまして、と
若々しいイケメンに似合わない老練な挨拶をした。
そんな所は、やっぱりイギリス紳士らしい。でも、
どうしていきなり起きたの、と思わずわたしは聴いた。

「ルーフィが無謀にも、時の淀みに飛び込んだから」

と、彼はさっぱりと答えた。


じゃ、ルーフィはどうなったの?と、わたしは反射的に詰問口調で。

「いや、わからない...たぶん、どこか遠い次元に飛ばされた...か。」


「か?」
わたしはすこし、苛立った。
あまりに冷静なので。
だって、自分の召し使いが居なくなった、と言うのに。

すこし怖い顔になったのか、わたしを見る彼の視線が少し、変わった。

「それか、消滅したか」


消滅って...死んじゃったってこと?そんなのないよ、そんなのって。だっって、せっかく仲良しになれたのに....

思わず、涙が零れた。

もう、どうでもよくなった。


「大丈夫、ルーフィは帰ってくる。魔法使いだからたやすく死にはしない筈さ。咄嗟に時間を飛ばしたかもしれない。時間量子の流れの中で。だから、時間エネルギーが反発しあってどこかへ飛ばされたのだろう」

科学的に、ルーフィのご主人様は答えた。でも、優しい声で。
泣いている私を宥めながら。なぜ、眠ったりしたの?とわたしは、尋ねた。


彼は、静かな声で「そう、未来を変えようとしたけれど、私の力不足だった。
時間エネルギーに変化が起き、人々は自然な時の流れを忘れた。
意味なく急ぎ、苛立ち、争い。それは、自然な時間エネルギーの存在を忘れてしまったから....」


わたしは思う。そういえば、ルーフィに出会う前はそんな事もあった。理由なく焦り、苛立ち、誰かに当たり。

都会に住んでると、そんな事もある。いや、それが普通かしら。


だけど、ルーフィに会って、優しい気持ちに戻れた。自然な時間を思い出した。
苛立ったって、焦ったって1分は同じ、そうだもの。


彼は、語る。
「それは、自然エネルギーの存在が弱まって
人々が人工的なものに傾倒していったからなんだ。ノストラダムスは、それを恐怖の大王が空から降る、と言い
ジョン・レノンはそれをイメージしてごらん、愛が必要だ、と歌った」


そうだったんだ、とわたしは思った。

彼らも時間旅行者だったから、それを伝えようとしたんだ....「だけど、眠っちゃったのはどうして?」

わたしは、思わず。

彼は、ちょっと困ったように「うん、なんとか未来を変えようとしてね。その方法論を見つけに。それは簡単だった。」

わたし、ちょっと拍子抜け。「簡単なの?!」


彼、ルーフィのご主人様はちょっと困ったみたいに告げた。「うん、稚な心で生きていけばいいのさ。ほら、幼い頃って自由自在で、時間に囚われないでしょう。」


そういえば、そんな気もする。ちっちゃい頃は時間が早く感じたり、遅く感じたり。でも、大人になってから
何かに追われるようになって....


彼は、唐突に言った。「それは、損得みたいなものだったり、欲だったり。いずれにせよ、自然に崇高なる時間エネルギーを阻害するものさ。気付いた人々は自然に回帰していった...けれど。」

彼は、淋しい表情をして。
「でも、それに囚われる人々ばかりさ。不思議さ。損得、得したらその利益で豊かになれればいいけど。みんな損得だけに囚われてイライラするのさ。短い時間で多く仕事しようとして失敗したり。それを変える魔法は見つからない....」「じゃあ、方法論は簡単でも変えられないってことなの?」わたしは、ちょっと不思議に思って。


彼、roofyのご主人は
ごく普通にそうさ、と言いこの、不思議な無限大空間の果てへと視線を泳がせ「簡単な事なのに、変えられない、なんてよくある事だね。ミヒャエル・エンデがね、時間泥棒、なんて例えたみたいに。」

わたしはちょっと苛立った。だって、roofyがいなくなっちゃったって言うのに。ご主人様は淡々としてて。「あの...Roofy、彼のことが気にならないんですか?」

わたしは、すこしキツイ言い方だったかな、と
言ってしまってから後悔した。


ご主人は、静かな表情のまま、頷いた。
「うん、気になるさ。でも、彼は一人前の魔法使いなんだ。
自分でなんとかするだろうし、そうできるからこそ
身を挺して君を救ったのだ、と思う。
無鉄砲に飛び込んだんじゃないだろう。」









わたしは、恥ずかしくなった。

そう、ルーフィはわたしを助けるために
どこかに行ってしまった。

それなのに、ルーフィのご主人様を
悪く思ったり。

わたしって、嫌な子....


「ごめんなさい、あの、わたし...。」

と、言いかけた時、ルーフィのご主人様は
涼やかに微笑んだ。


「そう、でも、眠ってしまっていた私が一番悪いのさ。
そのせいで、ルーフィが困ったんだから。
やっぱり私の責任だ。」










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