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日曜、ふたたび
しおりを挟む「〖魔法:空間転移〗ッ!」
じぃちゃんが見せてくれた手品が実は魔法と言う事実を、ばぁちゃんに教えてもらった僕は、この世界でも魔法が使える事を知った。
それならば僕も魔法が使えるはずだ…と、必死に魔法を使おうとする。
だが、何度やっても魔法は発動しない…だだ、それでも諦めずに魔法を使おうとすると何度目かは分からないが、身体から何かが失われた感覚に陥る。
この感覚は魔法を使った時みたいな…だが、残念ながら魔法が発動した気配がない。
「クソッ!やっぱり失敗した!!」
そう、この世界に戻って直ぐ、今までの事は夢だったのか?と思い、魔法を使おうとした。
その結果、何度試しても魔法は使えなかったのである。
「あらあらあら、正義さんは普通に使えていたのに、何が悪いのかしら…。」
僕とじいちゃんの違い…本当に、何の違いがあるのか僕が知りたいくらいだ。
「そう言えば、結局、私は使わずじまいだったのだけど…。」
と言って、ばぁちゃんは家の中へと入っていってしまう。
それから暫くして、ばぁちゃんが戻ってきた。
その、ばぁちゃんの手には、何だか不思議な感覚のする小さな箱があった。
「ばぁちゃん、それは?」
「これはね、正義さんが私にプロポーズしてくれた時に、私にくれた物よ。」
「へ~、じぃちゃんが…。」
正直、プロポーズした時の物と言われても興味はない。
それがあれば、プリン達の所へ戻れると言うのなら話は別だが…。
「でもね?私は正義さんに幸せを、いっぱい貰ったから…これは夢幻ちゃんにあげるわ。
多分、夢幻ちゃんに必要な物だと思うの。」
そう言って渡された、小さな箱を、恐る恐る開ける。
するとそこには…見た事もない石が付いているリングである。
「これは…指輪だよね?」
何処から見ても指輪だが、何故か当たり前の事を聞いてしまう。
まぁ、プロポーズの時と言うのだから、指輪を贈るのは至極当然の事だと思う。
「そうね、確か…正義さんが言うには『願いの指輪』と言っていたかしら?
その指輪は、持ち主の本当に叶えたい願いを、一度だけ叶えてくれるそうよ。
まぁ、私は願いは正義さんが全部叶えてくれたから試した事無いのだけど…。」
そう言って、僕にウインクをする、ばぁちゃん…。
何度か若い頃の写真を見た事があるが、このタイミングでそんな事をされたら…ばぁちゃんが、もし若かったら、僕もじぃちゃんみたいに、恋に堕ちていたかも知れない。
「って、待った!!そんな大事な物、貰えないよ!」
気付くのに遅れたが、ばぁちゃんは使わなかったとは言え、プロポーズと一緒に渡されたのであれば、これは婚約指輪である。
つまり、これは…ただの指輪などではなく、じぃちゃんの形見と言う事でもある。
そんな大事な物を、『はい、そうですか』と簡単に貰う訳にはいかない品物だった。
「いいえ、それは違うわ。
今の、夢幻ちゃんだから、私は上げたいの…だって、夢幻ちゃんは男の子じゃない!
だったら、夢幻ちゃんは、惚れた女の子を幸せにしてあげる義務があるわ。
そう、正義さんが、私を幸せにしてくれた様に!」
まさかのダメだし…だが、ばぁちゃんの言う通りである。
じぃちゃんなんか、惚れた女の為に、世界まで救ったのだから…。
しかも、貴重な『願いの指輪』を使わせる事なく、幸せにしたと言われたら、じいちゃんと、ばあちゃんの孫である僕が、自分の惚れた女の一人や二人…いや、正確には四人だが…幸せに出来ないでどうするって話だ。
「あ、あ~ぁ、もう!分かったよ、ばぁちゃん!!」
僕はそう言うと、ばあちゃんから『願いの指輪』を受け取ると指に填める。
そして…あちらの世界に行く事を強く…強く強く願った。
【…ジ…ジジ…聞こ……?…てるかな?】
【お~い、聞こえますか~?】
「…その声は…もしかして先生?」
「あら?今の声、私にも聞こえたわ。」
どうやら、先生の声は、何故か僕だけではなく、ばぁちゃんにも聞こえている様だ。
【良かった、繋がった!】
【何故か、急に強い力を感じたから逆探知してみたんだけど、やっぱり貴方だったのね!】
「え、えぇ…でも、何で先生が?」
【何でって…こっちの世界に来たいって強く望む声が聞こえたから?】
「え?それって…。」
【えぇ、来れるわよ?でもね?
今度は私が召喚する訳じゃないから二度と帰れないし、今度こそ死んだらそれでお終い…それでも良いの?】
そう言われて、僕は思わず、ばぁちゃんの顔を見る。
もし、このまま向こうの世界に行く事になれば、もう、ばぁちゃんや家族とも会う事が出来なくなると言われたのだ。
それでも、それでも僕は…。
「もう、夢幻ちゃんったら、何を迷ってるフリをしてるの!
貴方は、世界の理さえ、その意思で覆したじゃないの!」
「え?僕が、世界の理を?」
「そうよ、プリンちゃんが死んだ時、それでも夢幻ちゃんは諦めず世界の理を捻じ曲げ、彼女を救ったのよ?
だったら、今度も、そんな『世界の理』なんて捻じ曲げちゃえば良いのよ!」
【ちょッ!?何言ってんの貴女!】
【私、あの後、綻び直すのに三日間も徹夜しまくったんだからね!】
「あ~もう、五月蝿いわね!お姫様で聖女だった私が許す!夢幻ちゃん、やっちゃえッ!!」
【だから、煽らないでってば~!】
ばぁちゃん、それは傲慢とも言える理屈ですよ?
だが、あの一件で先生から何か言われそうだと思っていたけど、何も無かったのはそう言う事があった訳か…。
「ププッ…流石、ばぁちゃん、言う事が違う!
そうだよな…好きな子を幸せにする為なんだもん、世界の一つや二つ、敵に回したって、どうって事ないよな!」
ばぁちゃんに感化されたからか、そう思ったら、何も心配する事が無くなっていた。
次の瞬間…指にはめた『願いの指輪』が激しく光り出す。
今なら、使えなかった魔法も使える様な気がする。
「ばぁちゃん、俺、行ってくるよ!」
「あら、やだ…いつの間にか、夢幻ちゃんも、男の顔出来る様になったじゃない。
だったら、これは私からのお呪まじない…もう、おばあちゃんだから効果は期待出来ないけど…。」
『チュッ』
そう言って、ばぁちゃんが、俺の額にキスをする。
「聖女様の祝福なんて、勇者セイギにしかしなかったんだから…絶対に負けんじゃないよ!」
「あぁ、任せとけ!速攻で、ぶっとばしてくる!」
そう言って、ばぁちゃんから距離を取る…そして…。
『パチン!パチン!パチン!パチン!パチン!パチン!』
六芒星を描く様に腕を動かし、その頂点となる部分で指を鳴らす。
チートスキル〖森羅万象〗…その効果がヤバ過ぎて、今までは使う事自体、良くない事だと思っていた為、極力、使わない様にしていた能力を、コレでもかと言うほどフルに発揮する。
そして、僕は頭に浮かんだ呪文を唱える。
「世界と世界を繋ぐ門、我が意を受け、我の望みし世界の門を開け!
願わくば、我が望みし時へと我を誘え!」
目の前の空間がバチバチと音を立てている。
だが、まだ門は開いていない。
何か、邪魔する力が働いている様に気がする。
【あ~、もう!良いわよ良いわよ!】
【今度は何日掛かるか分かんないけど、許可すれば良いんでしょ!】
【…まぁ、貴方達の願いは既に、七夕の時に受理しちゃてるし…ね。】
すると、今まで邪魔していた力が霧散したのを、確かに俺は感じた。
次の瞬間、俺は再度、詠唱し魔法を発動させる。
「〖魔法:次元転移門《アナザーゲート》〗!」
『バキン!』
先生が許可したからか、目の前に空間が罅割れ、ついにゲートが開く。
「ばぁちゃん、俺、行ってくる!」
「えぇ、今度はお嫁さん達を連れて遊びにおいで。」
「あぁ、絶対に戻ってくるから!みんな良い子達だから楽しみに待ってってくれよ!!」
俺はそう言うと、こちらの世界とあちらの世界を繋ぐ門を潜るのだった…。
じぃちゃんが見せてくれた手品が実は魔法と言う事実を、ばぁちゃんに教えてもらった僕は、この世界でも魔法が使える事を知った。
それならば僕も魔法が使えるはずだ…と、必死に魔法を使おうとする。
だが、何度やっても魔法は発動しない…だだ、それでも諦めずに魔法を使おうとすると何度目かは分からないが、身体から何かが失われた感覚に陥る。
この感覚は魔法を使った時みたいな…だが、残念ながら魔法が発動した気配がない。
「クソッ!やっぱり失敗した!!」
そう、この世界に戻って直ぐ、今までの事は夢だったのか?と思い、魔法を使おうとした。
その結果、何度試しても魔法は使えなかったのである。
「あらあらあら、正義さんは普通に使えていたのに、何が悪いのかしら…。」
僕とじいちゃんの違い…本当に、何の違いがあるのか僕が知りたいくらいだ。
「そう言えば、結局、私は使わずじまいだったのだけど…。」
と言って、ばぁちゃんは家の中へと入っていってしまう。
それから暫くして、ばぁちゃんが戻ってきた。
その、ばぁちゃんの手には、何だか不思議な感覚のする小さな箱があった。
「ばぁちゃん、それは?」
「これはね、正義さんが私にプロポーズしてくれた時に、私にくれた物よ。」
「へ~、じぃちゃんが…。」
正直、プロポーズした時の物と言われても興味はない。
それがあれば、プリン達の所へ戻れると言うのなら話は別だが…。
「でもね?私は正義さんに幸せを、いっぱい貰ったから…これは夢幻ちゃんにあげるわ。
多分、夢幻ちゃんに必要な物だと思うの。」
そう言って渡された、小さな箱を、恐る恐る開ける。
するとそこには…見た事もない石が付いているリングである。
「これは…指輪だよね?」
何処から見ても指輪だが、何故か当たり前の事を聞いてしまう。
まぁ、プロポーズの時と言うのだから、指輪を贈るのは至極当然の事だと思う。
「そうね、確か…正義さんが言うには『願いの指輪』と言っていたかしら?
その指輪は、持ち主の本当に叶えたい願いを、一度だけ叶えてくれるそうよ。
まぁ、私は願いは正義さんが全部叶えてくれたから試した事無いのだけど…。」
そう言って、僕にウインクをする、ばぁちゃん…。
何度か若い頃の写真を見た事があるが、このタイミングでそんな事をされたら…ばぁちゃんが、もし若かったら、僕もじぃちゃんみたいに、恋に堕ちていたかも知れない。
「って、待った!!そんな大事な物、貰えないよ!」
気付くのに遅れたが、ばぁちゃんは使わなかったとは言え、プロポーズと一緒に渡されたのであれば、これは婚約指輪である。
つまり、これは…ただの指輪などではなく、じぃちゃんの形見と言う事でもある。
そんな大事な物を、『はい、そうですか』と簡単に貰う訳にはいかない品物だった。
「いいえ、それは違うわ。
今の、夢幻ちゃんだから、私は上げたいの…だって、夢幻ちゃんは男の子じゃない!
だったら、夢幻ちゃんは、惚れた女の子を幸せにしてあげる義務があるわ。
そう、正義さんが、私を幸せにしてくれた様に!」
まさかのダメだし…だが、ばぁちゃんの言う通りである。
じぃちゃんなんか、惚れた女の為に、世界まで救ったのだから…。
しかも、貴重な『願いの指輪』を使わせる事なく、幸せにしたと言われたら、じいちゃんと、ばあちゃんの孫である僕が、自分の惚れた女の一人や二人…いや、正確には四人だが…幸せに出来ないでどうするって話だ。
「あ、あ~ぁ、もう!分かったよ、ばぁちゃん!!」
僕はそう言うと、ばあちゃんから『願いの指輪』を受け取ると指に填める。
そして…あちらの世界に行く事を強く…強く強く願った。
【…ジ…ジジ…聞こ……?…てるかな?】
【お~い、聞こえますか~?】
「…その声は…もしかして先生?」
「あら?今の声、私にも聞こえたわ。」
どうやら、先生の声は、何故か僕だけではなく、ばぁちゃんにも聞こえている様だ。
【良かった、繋がった!】
【何故か、急に強い力を感じたから逆探知してみたんだけど、やっぱり貴方だったのね!】
「え、えぇ…でも、何で先生が?」
【何でって…こっちの世界に来たいって強く望む声が聞こえたから?】
「え?それって…。」
【えぇ、来れるわよ?でもね?
今度は私が召喚する訳じゃないから二度と帰れないし、今度こそ死んだらそれでお終い…それでも良いの?】
そう言われて、僕は思わず、ばぁちゃんの顔を見る。
もし、このまま向こうの世界に行く事になれば、もう、ばぁちゃんや家族とも会う事が出来なくなると言われたのだ。
それでも、それでも僕は…。
「もう、夢幻ちゃんったら、何を迷ってるフリをしてるの!
貴方は、世界の理さえ、その意思で覆したじゃないの!」
「え?僕が、世界の理を?」
「そうよ、プリンちゃんが死んだ時、それでも夢幻ちゃんは諦めず世界の理を捻じ曲げ、彼女を救ったのよ?
だったら、今度も、そんな『世界の理』なんて捻じ曲げちゃえば良いのよ!」
【ちょッ!?何言ってんの貴女!】
【私、あの後、綻び直すのに三日間も徹夜しまくったんだからね!】
「あ~もう、五月蝿いわね!お姫様で聖女だった私が許す!夢幻ちゃん、やっちゃえッ!!」
【だから、煽らないでってば~!】
ばぁちゃん、それは傲慢とも言える理屈ですよ?
だが、あの一件で先生から何か言われそうだと思っていたけど、何も無かったのはそう言う事があった訳か…。
「ププッ…流石、ばぁちゃん、言う事が違う!
そうだよな…好きな子を幸せにする為なんだもん、世界の一つや二つ、敵に回したって、どうって事ないよな!」
ばぁちゃんに感化されたからか、そう思ったら、何も心配する事が無くなっていた。
次の瞬間…指にはめた『願いの指輪』が激しく光り出す。
今なら、使えなかった魔法も使える様な気がする。
「ばぁちゃん、俺、行ってくるよ!」
「あら、やだ…いつの間にか、夢幻ちゃんも、男の顔出来る様になったじゃない。
だったら、これは私からのお呪まじない…もう、おばあちゃんだから効果は期待出来ないけど…。」
『チュッ』
そう言って、ばぁちゃんが、俺の額にキスをする。
「聖女様の祝福なんて、勇者セイギにしかしなかったんだから…絶対に負けんじゃないよ!」
「あぁ、任せとけ!速攻で、ぶっとばしてくる!」
そう言って、ばぁちゃんから距離を取る…そして…。
『パチン!パチン!パチン!パチン!パチン!パチン!』
六芒星を描く様に腕を動かし、その頂点となる部分で指を鳴らす。
チートスキル〖森羅万象〗…その効果がヤバ過ぎて、今までは使う事自体、良くない事だと思っていた為、極力、使わない様にしていた能力を、コレでもかと言うほどフルに発揮する。
そして、僕は頭に浮かんだ呪文を唱える。
「世界と世界を繋ぐ門、我が意を受け、我の望みし世界の門を開け!
願わくば、我が望みし時へと我を誘え!」
目の前の空間がバチバチと音を立てている。
だが、まだ門は開いていない。
何か、邪魔する力が働いている様に気がする。
【あ~、もう!良いわよ良いわよ!】
【今度は何日掛かるか分かんないけど、許可すれば良いんでしょ!】
【…まぁ、貴方達の願いは既に、七夕の時に受理しちゃてるし…ね。】
すると、今まで邪魔していた力が霧散したのを、確かに俺は感じた。
次の瞬間、俺は再度、詠唱し魔法を発動させる。
「〖魔法:次元転移門《アナザーゲート》〗!」
『バキン!』
先生が許可したからか、目の前に空間が罅割れ、ついにゲートが開く。
「ばぁちゃん、俺、行ってくる!」
「えぇ、今度はお嫁さん達を連れて遊びにおいで。」
「あぁ、絶対に戻ってくるから!みんな良い子達だから楽しみに待ってってくれよ!!」
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