DiaryRZV500

深町珠

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第23話 フルパワーの魅力

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[フルパワーの魔力]


首都高速3号線から東名高速へ入ったRZVは、空いている高速を横浜インターへ向けて
走り始めた。
ゴミゴミとしてディーゼルの排気で臭く、防音壁が真っ黒の東京インターから
すこし離れると、すぐに郊外の雰囲気になる。
多摩川を渡る頃には空がすっきりと見えるように空間が開けてきた。

さあ、そろそろいいかな。

6thに入れてクルージングしていると、国内仕様よりもスムーズな感じの
フルパワーRZV。

さて、ワイド・オープンはどうかな、と。

まずは4thに落としてゆっくりと加速してみると、太いトルクがマシン全体をがっちりを支える感じ。
アクセルを多少ラフに扱っても大丈夫な感じは、耐久レースにも出られそうだ。
ホンダの16inch前輪マシンが、いかにも繊細なひらひら感で、多少フロントが心許ない
のに比較して安定志向のRZVだったが、トルクの増大でその感がより強まった感じ。
矢のように、というより岩のように頑固な直進性だ。

マシンをバンクさせたとしても、急激にテールを振り出したりしない。

安定していて、とても安心だ、と思っていると、スピードがどんどん増えてゆく。


GPマシンレプリカ、ってこういうものか、と
GPマシンに乗った事もないのにそう思いこんでいた俺だった。


ならば、と......

一度速度を落としてから2ndに落としてフル加速をしてみる。


いきなり、だったので前輪加重を忘れると、簡単に前輪は宙に舞う。
レヴ・リミットを越えようとするので3rdに上げても、まだフロントは浮こうとする。
しかし、危なげな感じではなく、太いトルクがフラットに延びている感じは
どこか、2サイクルというよりは大排気量の4stマシンのようだ。
とはいえ、それよりは楽しいフィーリング。

アクセルを閉じたとしても、不安な挙動は起こらない。
それまでに乗っていたCBX750Fが、アクセルオフでフロントがぶれる癖があったのと
比較するととても気楽だ。

だから、もっと、もっと、と加速したくなる。

高速道路程度のコーナーだったら、何の苦もなくクリアするし、そんな時も変な動きはしない。
アクセルを開けても、テールが逃げようとするのではなく、ただ前に進もうとする
その感じは、それまでに感じた事のない独特なものだった。


鼻歌まじりでシフトを上げてゆくと、簡単に180km/hフルスケールのメーターは
指針の意味がなくなる。

でも、そんな速度でも追突さえしなければどこまでも走り続けられるような感じだ。


こいつは、すごい。

フルパワー仕様の凄さに思わず、笑みがこぼれる。

気がつくと、もう横浜インターをとっくに過ぎて、海老名SAの近くだった。

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