タビスルムスメ

深町珠

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ゆりゆり

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愛紗と菜由は、2階の露天風呂に行こうと思ったけど
外をサンダルで歩くと、寒いし
ペタペタ煩いかな、と思って・・・。
なにしろ、22時近い。

ホテルの中も寝静まった感。

その、深夜のホテルの雰囲気と言うのも、どことなく寝台特急のようで
愛紗は好きだった。

菜由は「ふたり部屋って、いいね」

愛紗は「どうして?」

菜由は「うん・・・こういう時も気兼ねないでしょ」

多人数は楽しいけど、誰か寝てたりすると・・・気を使うし
さりとてひとりもちょっと、淋しい。



愛紗は「私達って、不思議よね、なんとなく。」


回廊を歩き、照明が少し暗くされた絨毯の上を歩いて。

エレベータの▽ボタンを押した。


菜由は「そう?」


愛紗「だって、ただ九州出身だってだけでしょう?」

菜由「そっか」



東山急行へ入り、本社研修で一緒になって。
同じ営業所に、偶々配属されたと言うだけ。
同郷人、それだけ。

エレベータが来て。

すぅ、と・・・・ドアが開く。










同じ頃。405のパティはひとり。
TVをつけて。のーんびりしていた。

「あたしもお風呂いってから寝ようかな」
なーんて。

明日は休みである。


なにせ、鉄道員。

不定休だから、ボーイフレンドを作る暇もない。

それ以前に「野球したいなー」(^^)。


フルスイング!

ホームラーン!

なーんて、思う・・・・。18歳のパティ。


「愛紗は、真面目だなぁ」と、正直そう思う。


パティは、別にずーっとCAでもいいと思ってるし

こういう平日休みのお仕事も、いいところもあるし。
楽しく生きていければそれでいいと思う。


「なんであんなに真面目に、ドライバーの仕事を考えるんだろう?・・・
あ、やっぱり事故が怖いのかな」


なーるほど。よく解った(^^)。


「お風呂行ってこよ。」


タオル持って。

カギはきっちり持って(笑)。









406の、ともちゃん、さかまゆちゃん。

ともちゃんは、持ってきたパジャマに着替えて。

かわいらしい、ももいろの、ふんわりした。

さかまゆちゃんは「かわいい」と、にこにこ。


ともちゃんは「えへー。ちょっとこどもっぽいけどー。好きなの。
ふわふわして」


さかまゆちゃんは「ともちゃんもふわふわしてるもの、お似合い」

と、お部屋のベッド・サイドにあるBGMのスイッチを入れてみた。


静かなストリングス。


レーモン・ルフェーブルの「ジェット・ストリーム」だった。


ともちゃんは「ラジオでよく聞いたっけ、中学の頃」


さかまゆちゃんは「そうそう。機長さんがしぶーい声で。

「私の、レコードアルバムの時間がやってまいりました・・・・。
今、モルディブは午前7時・・・・

とか、ね(^^)」


ともちゃんは「そうそう!あの詩、ノートに書いたっけ。」


さかまゆちゃんは「勉強するつもりで起きてたけど、ラジオ聞いて・・・
楽しんでただけ」


ともちゃんは「うふふ(^^)」


さかまゆちゃんは「スチュワーデスって、憧れたっけ。」


ともちゃん「今、列車のCAになったのも、それで?」


さかまゆちゃん「そうかも。旅のお仕事ってステキね。」



ともちゃんは、すこしなにかを空想して・・・

「うん。寝台列車の食堂車クルー、とか。やってみたいね。」



さかまゆちゃんは「うん。あれは・・・なんだっけ。
日本食堂に入らないとダメじゃない?」


ともちゃん「そうなんだ。仕事似てるけど。じゃ、夜行列車の
ワゴンさん」


さかまゆちゃんは「あれは・・・どこだっけ。門司で交替じゃなかったかな?」



ともちゃんは「そっかー。」


さかまゆちゃん「女の子は、22時ー5時は勤務できないもの。どの仕事でも」


ともちゃん「ふーん、まあ、楽でいっか」(^^)。



さかまゆちゃん「そう。22時過ぎたから、寝よ」


ともちゃん「そだね」(^^)。









408の、友里絵と由香。


「はー、なんか・・・旅も終わりが近づくと。哀愁だなぁ」と、由香。


「バイバイ、哀愁ディ!」と、踊る友里絵。



由香は「ハハハ。でも違うぞそれ」


友里絵「いーの!」


由香「でもさーぁ、愛紗がドライバー辞めるとなると。中型路線は人、足りなくなるでしょ?」


友里絵「いきなり現実になるなぁ、そうだけど・・・でも、有馬さんも
もともと、あんまりアテにしてなかったみたいよ。
だって、ダイヤ見ると男子だけで回ってたもの」


由香「そっか。さすがだなぁ。のんびりトドちゃん」(^^)。


友里絵「で?あんたがドライバーになる?」


由香「うん。誕生日がもうすぐだから、そしたら免許取って・・・
だって、ガイドって寝る時間無いけど、ドライバーの方がまだマシ」


友里絵「契約になればいいみたいね。月給じゃなくなるけど、楽は楽。」


由香「ドライバーでもそうだったね。だから、定年になった人が・・・・
指令だった坂江さんとかさ。楽しそうにやってるもんねぇ。昼間だけとか。
年金貰いながら。」

友里絵「坂江さんは、体悪いんだけど、それでもやってるみたいね。
なんか・・・・薬飲みながら走ってるって」


由香は「その位、足りないんだドライバー・・・。じゃ、やっぱ、あたし、するかな」


友里絵「する?手仕事?」


由香「バーか・・・ははは。ねえ、手仕事よっかさ。
2人きりだし。・・・あんた、百合エでしょ?」


友里絵「その百合じゃないって」


由香「ハハハ」


友里絵「最初ね、あたしが生まれた時は
百合絵にしようって、考えたらしいの。
でも、ユリだといかにも・・・だし。
漢数字の名前って良くないんだって。お寺の和尚さんが」


由香「ふーん・・・和尚さんがつけたの?」


友里絵「そうじゃないらしいけどね。聞いたんだって。いちおー。
あ、そうそう、タマちゃんは和尚さんがつけたんでしょ、あの名前。」

由香「そうなの?」


友里絵「うん、なんか、ひいじいちゃんが和尚さんで。
青森にお寺あるって。・・・あ、理沙ちゃん知ってるかも。青森だし」


由香「どっかでつながってるねー。そのうち、タマちゃん戻ってくるんじゃないかなぁ
大岡山に」


友里絵「だといいね。楽しくなるね」


由香「ホント。有馬さんも喜ぶよ、きっと」


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