タビスルムスメ

深町珠

文字の大きさ
上 下
267 / 361

さかまゆ

しおりを挟む
そのうち・・・線路が行き止まりになって、行く手は笹が生えている。

友里絵は「あれ?行き止まりだよ?」


坂倉さんは、最後尾の展望室に入って。マイクを握り・・・観光案内。


ーー皆様がご覧になっている線路は、
スイッチバック、と言います。急坂を、線路を切り替えながら
列車は、阿蘇の外輪山を越えて行きます。
これから列車は、方向を変えて阿蘇方面へと向かいますーーー


と、車内に放送が流れる。


友里絵は「ガイドさんみたい」

由香「あんたもガイドさんじゃん」


友里絵「忘れてたね。(^^)。」


菜由は「鉄道のガイドさんってのもアリかもね」

愛紗「そうかも」



停止位置表示が、線路の脇に立っている。


友里絵は「機関車のところから見えないのにね、どうやって解るんだろ」

由香「なんか、坂道にあったみたいよ、目印。」


菜由「賢いなぁ」


車両の最後尾が、ガラス張りの展望室になっていて
観光の人は、自由に出入りできるようになっている。


木の内装は、どことなく懐かしい感じ。


坂倉さんは、車掌さんと一緒に。
停止位置確認、よし!。


ただ、なんとなくメイドさん風の服なので(^^)かわいい。


確認が終わると、車掌さんは肩から下げた列車無線で機関士に話す。

停止位置、確認。

機関士が、了解。と、無線でお返事。


機関室で、逆転器を回す。

前進位置に。

給排気位置を大きく取る。

 ぽ、と。短く汽笛。

機関助士は、投炭をしているが
この機関車は重油を併燃しているので、さほど忙しくはない。


機関士は、機関車単弁、と言うブレーキを緩めつつ
スロットルレバーを引く。

先ほどから、編成直通ブレーキ弁は解放してある。
連結器ばねを伸ばしておくためだ。

上り坂である。

機関車がゆっくり、前に出て行く。

蒸気が、シリンダに入り、出て行く。

しゅ、しゅ・・・。

結露した水を排出する、ドレインを開く。

線路に蒸気が、しゅー、と。出て行く。


シリンダ弁位置が最大なので、蒸気が多く入る。
力も大きい。


編成の前の方から、ゆっくり、ゆっくり・・・引かれていく。

電気機関車とは違う、ゆったりとした動き。


最後尾も動き始めた。


ゆる、ゆる・・・と、揺れながら。


友里絵は「なんか、いいね。のんびりしてて」
由香「ほんと」


菜由は、むかーし、子供の頃に乗ったな、と思う。

愛紗も、なんとなく、ふるさと日南を思い出す。

海沿い、森の中を走る列車に揺られて・・・どこかへ行ったっけ。


どこに行ったかは覚えて居ないけど。





友里絵のケータイに、まゆまゆ(^^)からメールの返信。

友里絵はすかさず「あそBOYでね、坂倉さんに会ったよー、「まゆまゆ」ちゃん(^^)」


と、返信。



吉松のまゆまゆはそれを見て、ニッコリ。

「さかまゆにあったんだー」

坂倉さんと、日光さんは同期。なので、仲良し。

まゆまゆ、さかまゆ、と、呼び合う(^^)。



由香は「偉い偉い、サイレントにしたね。」と、にこにこ。


友里絵は「うん!まゆまゆから。愛紗のオスカルみたーい、だって」


愛紗は「えー、あ。コラージュか」と、納得。

友里絵は「こらーじゅってなに?」


由香「なんだっけ?」


菜由「写真のモンタージュみたいなやつ」


友里絵「ああ、あの、刑事もので出てくる・・・犯人探しみたいな。愛紗が犯人?」


由香「じゃなくて、写真を切り貼り」

友里絵「ああ、なんだ、アイコラか」


由香「そうみたい」



列車は、ゆっくり、ゆっくり、急坂を登って行く・・・。


------------------------- 第336部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
なゆなゆ

【本文】
「ニックネームで呼び合うのって、可愛いね」と、友里絵。

菜由「じゃ、あたしはなゆなゆ」

由香「キモっ」と、言った途端に逃げた。

菜由「このっ」と、拳を振り上げたときにはもう居ない(笑)。

菜由「逃げ足の速いやつ」と。


友里絵「所詮、袋のネズミよ。ふっふっふ・・・。」と、懐手。お侍さんの顔真似。

由香「出合え、出合えー!」

友里絵「火付け盗賊改め方、長谷川平蔵であーる」ドヤ顔。



ドイツ人ふうの叔父さん・・・・「what? event?」と、愛紗に聞く。

愛紗は「non ,non ...she is commedienne . this is adlib .」


ドイツ人の叔父さんは、「oh , merverous! wahaha...」と、友里絵の肩を叩いて。

でっかい手(^^)。


ドイツのお札らしい紙幣を、友里絵に渡して「ガンバッテ、ネ」と、日本語。



由香「愛紗、なんて言ったの?」

愛紗「コント芸人のアドリブって」


菜由「わはは!デビュー作か、これ!」


友里絵はお札を持って「これ、幾らなんだろね」

由香「さあ・・・?記念にとっとけ」

友里絵「とっとけ、とっとけ」


由香「ハム太郎」


友里絵「そうそう。肉やのオジサンがモノ持ちが良くて。
なんでも「とっとけ、とっとけ」って言うので・・・。

みんな「とっとけハム太郎」って呼んでた」


菜由「面白いね」


愛紗「お肉屋さんだもんね」



列車は急勾配を登っていく。



坂倉さんはアナウンスーーーー。




ーーーー皆様と列車は、ただ今33‰の勾配を登っております。
日本の鉄道では、最も急な勾配です。
1000m進んで、33mの高さを登っていますーーー。


と、美しい声。


背が高くて、すっきりした声。
色白、ひとえ、黒い髪、きれい。
まるいお顔。


友里絵は「お人形さんみたい」

由香「ほんと。」

友里絵「こけしとか」


由香「電動?」


友里絵「バカ」


由香「聞いてない、聞いてない」


菜由「ったくもう・・・。(^^;;;;。」


愛紗は、なんのことかわからない・・・・。」




勾配を登ると、阿蘇の外輪山の中だ。

右側にある山に、風車が回っていて。


蒸気機関車も、ひと息ついた感じ。

かたたん、かたたん・・・・と。静かだ。


さかまゆちゃんは、ガイドが一息ついて・・・。友里絵たちのところに。

「楽しそうですね」と、にこにこ。


友里絵は「はい!とっても。SL初めてなの」と、にこにこ。

さかまゆちゃんも、にこにこ。

友里絵は「まゆまゆからメールが来てね。さかまゆちゃんの汽車に乗ってるって書いた」


さかまゆちゃんは「(^^)まゆまゆも乗務でしょ?」

友里絵「うん。たしか・・・そうだと思う。昨日一緒だったから」


由香「一緒にね、熊本回ってくれて」


菜由は「楽しかったな」

愛紗「ほんと」


友里絵「さかまゆちゃんは、いくつ?」

真由美「19です」

友里絵「あー、じゃ、同期?まゆまゆと」



真由美、こくり。「試験も一緒で。熊鉄で受けました」

由香「一緒で、いいね。あたしたちとおんなじ」

真由美は「みなさん、同期・・・国鉄ですか?」

友里絵「あたしらは、バスガイドなの。東山の」

真由美は「いいですね。バスガイドさんって。華やか」


由香「そっかな」と、にこにこ。



真由美「2号車に、乗車証があります。お飲み物もあります。いかがですか?」

友里絵「いこいこ!」

由香「そだね」

菜由「なゆなゆも」

愛紗「キモっ」

菜由「愛紗が言うな!」と、ひっぱたくマネ。

楽しく、楽しく・・・列車は走る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

イラスト部(仮)の雨宮さんはペンが持てない!~スキンシップ多めの美少女幽霊と部活を立ち上げる話~

川上とむ
青春
内川護は高校の空き教室で、元気な幽霊の少女と出会う。 その幽霊少女は雨宮と名乗り、自分の代わりにイラスト部を復活させてほしいと頼み込んでくる。 彼女の押しに負けた護は部員の勧誘をはじめるが、入部してくるのは霊感持ちのクラス委員長や、ゆるふわな先輩といった一風変わった女生徒たち。 その一方で、雨宮はことあるごとに護と行動をともにするようになり、二人の距離は自然と近づいていく。 ――スキンシップ過多の幽霊さんとスクールライフ、ここに開幕!

不器用に着飾って

雨宮 苺香
青春
シーンごと、視点ごとに1話分を構成した読みやすさに特化した短編作品。 すれ違う感情は熱で溶かして、言えない感情も混ぜて、固めれば、ほら。 やっと形になる2人の恋愛。それはまるでチョコレート🤎 バレンタインに合わせて制作する甘い恋愛作品をぜひお楽しみください! この作品は雨宮苺香から読んでくれるあなたへの本命チョコです🥰

私の隣は、心が見えない男の子

舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。 隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。 二人はこの春から、同じクラスの高校生。 一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。 きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

晩夏光、忘却の日々

佐々森りろ
青春
【青春×ボカロPカップ】エントリー作品  夕空が、夜を連れて来るのが早くなった。  耳を塞ぎたくなるほどにうるさかった蝉の鳴く聲が、今はもう、しない。  夏休み直前、彼氏に別れを告げられた杉崎涼風は交通事故に遭う。  目が覚めると、学校の図書室に閉じ込められていた。  自分が生きているのか死んでいるのかも分からずにいると、クラスメイトの西澤大空が涼風の存在に気がついてくれた。  話をするうちにどうせ死んでいるならと、涼風は今まで誰にも見せてこなかった本音を吐き出す。  大空が涼風の事故のことを知ると、涼風は消えてしまった。  次に病院で目が覚めた涼風は、大空との図書室でのことを全く覚えていなかった……  孤独な涼風と諦めない大空の不思議で優しい、晩夏光に忘れた夏を取り戻す青春ラブストーリー☆*:.。.

坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】

S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。 物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。

処理中です...