タビスルムスメ

深町珠

文字の大きさ
上 下
212 / 361

急行「球磨川」

しおりを挟む
「お世話になりました」と、愛紗は
フロントさんにご挨拶して。

菜由は「お代は・・・伯母さんのツケか」

愛紗は「そう。」

「さあさ、お代は見てのお楽しみ!」と、友里絵。

由香「化け物小屋かよ」と、ちょっとからかう。



友里絵は「なんで化け物なんだよ」
と。笑って。


フロントさんも、にこにこ「また、いらしてくださいね」


と、玄関を出て。
5人は、ぐるっと回ってキッチンに・・・。
網戸の向こうにいるおばあちゃんに「おばあちゃーん」と、声を掛けて。

おばあちゃんは、網戸の向こうから、こちらを見て「ああ、かえるの」と、にっこり。

サッシになっている、台所の引き戸を開けて。
からから・・・。



「後片付け、お手伝いしたかったけど」と、真由美ちゃん。


おばあちゃんは「いーよ。短いお休みなんだし。明日は?」と、にこにこ。


真由美ちゃん「B番だから、9時頃出ればいい」


おばあちゃん「そっか、ゆっくりしな。忙しい時は休めないし」


真由美ちゃん「ありがと」

おばあちゃんは「みなさんも休暇でしょ?」

球磨川を渡ってくる風は、涼しげ。
堤防の上は自動車が通れないので、静かでいい。
一応舗装はしてあるものの・・。


愛紗は「はい。土曜まで」


真由美ちゃんは「いいですねー。長い休暇って。憧れちゃう」

愛紗は・・・何故休暇が取れたか、みんながなぜ一緒に来てくれたか、を
思うと・・・ちょっと申し訳ないような、そんな気もする。
そう。愛紗の進む道を案じてくれたのだった。


友達ってありがたいなぁ。そう思う。


おばあちゃんは「そうだねー。わたしも、長く休んだことなんてない。
休んでも、することないし」


友里絵「それで旅行に」


おばあちゃんは「なるほど。ハハハ。じゃ、あたしはお昼の支度があるから。
道中お気をつけて」と、おばあちゃんはにっこり。


友里絵「ありがとうございます」
由香「お世話になりました」
菜由「お元気で」
愛紗「行ってきます」

そこから、5人で・・・今度は土手の上を歩いていく。


「昼間だと、虫もいないね」と、友里絵。

川沿いは、特に護岸をしていない自然のままなので・・・
草木が生い茂り。

鴨が、ふわふわ。波間に浮かぶ。


真由美ちゃんはにこにこ「あ、かわいい」

お母さん鴨と、子鴨たち。

くっついて、波間にゆらゆら・・・・。

友里絵も「ほんと。かわいいねー」

と、ケータイで写真撮ったり。


昼間なので、静か。慌しい雰囲気もない。
空は、少し薄くもりの感じだけど
かえって、涼しくていい。


「陽射しが強い感じがするけど」と、友里絵。

真由美ちゃん「そうですか?」

菜由は「なんとなく、そうかも」

由香は「少しだけ南だからかな」


確かに、相模よりは地図の上では南・・・なような気もする。


友里絵は「結構、遠いね」と、ちょっと疲れた、と言う表情。
堤防に腰を下ろして。


堤防と言っても、そのくらいの高さしかない。
土手の上だとは言え・・・。

由香「運動不足だよ。かばん持ってやるよ」と。

友里絵のかばんは、結構重い。

「何が入ってんだろ」と、開けてみると・・・。


友里絵は「あ、オトメのかばんを勝手に!、スケベ」と(^^;

由香「だれがオトメだ!女同士じゃん」(^^;

友里絵「いちおーオトメ」
と、ドヤ顔で。

由香「・・・まあ、生物的にはそうだが」
と、ちょっとマジメに。

友里絵「何がいいたい」
と、問い詰め顔。

由香「心がBBA」と、笑って。

菜由「まあ、あたしも・・・・。かも」


由香「菜由はいいのよ。」
と、優しく。

菜由「使用済みだからか」


由香「いや、そこまでは・・・言ってないけど」
と、焦る。(^^;



愛紗は「なんか、菜由も・・・ヒロシみたい」

菜由「・・・おいの人生、これでよかとですか・・・・。」と、背中丸めて。

由香「愛紗!音楽音楽!」

愛紗は「え?あたし?」


友里絵は「そーだって。相方じゃん」


愛紗は「いつから相方なの?」(^^;


友里絵「さ、歩こうか」

由香「オマエが座ったんだろ!」と、張り扇・・・は、ないか(^^;


真由美ちゃんは「乗り合いタクシー呼んでおけばよかったです」


菜由「あるの?そんなの?」

真由美ちゃん「ハイ。バスの代わりに。前の日までに言っておけばいいとか聞きました。
私は市民ですから。」


愛紗は「かえって便利かも」


菜由「でーもさぁ、大岡山でもあったんだけど。すぐに廃止になった」


愛紗「そうだっけ?」


菜由「うん。なんか、タクシーじゃ運びきれないらしい」


友里絵「いろいろあるな」


と、とことこ歩いていると。駅前から真っ直ぐの。赤い橋のところまで来た。


真由美ちゃんが、だんだん言葉少なになって・・・。
その気持が、友里絵にもよく判る。

駅前通りへと左折して。

ふるーい、コンクリートの舗道を歩いていて。

小川を渡って、左手に人吉神社が見えて。
昨日、遊んだ鶏さんの姿は、きょうは見えない。


友里絵も、ちょっとおとなしくなってしまう。
真由美ちゃんが沈んでると。

駅前まで来て。昨日の、からくり時計のところまで来て。

愛紗は「次は・・・急行「球磨川」かな?」
なんて言うと・・・真由美ちゃんはちょっと淋しそう。

友里絵は「そうだ!熊本行ってさ、おにーさんに会わせて!」と。


真由美ちゃんは「え?・・・・いるかしら・・・。ちょっと、聞いてきます」と、明るい表情になっ

て。

駅の事務室へ。


由香「友里絵さ・・・・。」

友里絵は「言いたい事はわかるけど」と、掌を上げて、俯いて。


菜由「そう・・・でも、真由美ちゃんも一緒に来たいみたいだし・・・。」

愛紗「明日が9時ならね。熊本往復くらいなら・・・。」


由香「そっか。でもさ・・・別れが辛くなるだけじゃ・・・・。」


友里絵「それはそうだけど。」


真由美ちゃんは、駅の事務室から帰ってきて
「機関区に行けば、ちょっとだけ会えそうですね」と、息弾ませて、にっこり。

かわいい表情。



菜由は「じゃ、お休みなのに、悪いけど。お願いしまーす」と、間延びして返事をして。

真由美ちゃんは「いいえ!わたしも、その方が、楽しいです!」


11時の急行「球磨川」に乗る事にした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

DiaryRZV500

深町珠
青春
俺:23歳。CBX750F改で峠を飛ばす人。 Y:27歳。MV750ss、Motoguzzi850,RZ350などを持っていた熱血正義漢。熱血過ぎて社会に馴染めず、浪人中。代々続く水戸藩御見医の家のドラ息子(^^:。 Nし山:当時17歳。RZ250。峠仲間。 などなど。オートバイをめぐる人々のお話。

男子高校生の休み時間

こへへい
青春
休み時間は10分。僅かな時間であっても、授業という試練の間隙に繰り広げられる会話は、他愛もなければ生産性もない。ただの無価値な会話である。小耳に挟む程度がちょうどいい、どうでもいいお話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

黄昏は悲しき堕天使達のシュプール

Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・  黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に  儚くも露と消えていく』 ある朝、 目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。 小学校六年生に戻った俺を取り巻く 懐かしい顔ぶれ。 優しい先生。 いじめっ子のグループ。 クラスで一番美しい少女。 そして。 密かに想い続けていた初恋の少女。 この世界は嘘と欺瞞に満ちている。 愛を語るには幼過ぎる少女達と 愛を語るには汚れ過ぎた大人。 少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、 大人は平然と他人を騙す。 ある時、 俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。 そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。 夕日に少女の涙が落ちる時、 俺は彼女達の笑顔と 失われた真実を 取り戻すことができるのだろうか。

TEN-ent
青春
女子高生5人が 多くの苦難やイジメを受けながらも ガールズバンドで成功していく物語 登場人物 ハナ 主人公 レイナ ハナの親友 エリ ハナの妹 しーちゃん 留学生 ミユ 同級生 マキ あるグループの曲にリスペクトを込め作成

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

green
青春
一ノ瀬財閥の令嬢、一ノ瀬綾乃は小学校一年生からサッカーを始め、プロサッカー選手になることを夢見ている。 しかし、父である浩平にその夢を反対される。 夢を諦めきれない綾乃は浩平に言う。 「その夢に挑戦するためのお時間をいただけないでしょうか?」 一人のお嬢様の挑戦が始まる。

あしたのアシタ

ハルキ4×3
青春
都市部からかなり離れた小さな町“明日町”この町の私立高校では20年前に行方不明になった生徒の死体がどこかにあるという噂が流れた。

処理中です...