タビスルムスメ

深町珠

文字の大きさ
152 / 361

旅芸人

しおりを挟む
「仲良しで旅行かー。いいね。」と、局長さん。

区長さんは「いつまでも仲良くね」

由香は「はい。あたしらも、ガイドからドライバーになろうとしてて。
あの、上品な子が、愛紗って言うんですけど。先になって。」

「そうか、卒業旅行か・・・淋しくなっちゃうね」と、局長さん。

「でも、同じ職場なら、会えるでしょう」と、区長さん。

宴たけなわ。思い思いに、楽しそうに笑っている。
みんな、結構偉い方みたい。


友里絵は、決断。「あの子が、向こうだと危ないから
こっち、故郷に戻んなさいって、有馬課長が。」と、つい、言ってしまう。


局長は「有馬?、って・・・九州の?キミたち、東山だって言ってたね。」

由香は「ご存知なんですか?有馬さんを」


局長は「ああ、同郷人はね。それに、同じ業界だと。」

区長「鹿児島だね、あの方」


友里絵「そーなんだ!偶然ってすごい。」と、笑顔。


区長は「危ないって言うのは・・・・女子だから?」


由香は頷く。



局長は「どこでもあるけど・・・神奈川、東京は多いね。
東海道線のCAでもある話で。早朝・深夜は男子勤務にしたとか。」


友里絵は「あたしたちがドライバーになっても、危ないですか?」


区長は「うーん。バスはあんまり詳しくないけど・・・・おーい、長崎さん。」

長崎は、長閑な顔をして。坊主頭に黒い眼鏡。ずんぐりむっくり。

「なんですかーぁ」と、とことこ。


「ああ、この人ね、自動車部の。
長崎さん、こちらはさっきのね。バスガイドさん。
女子ドライバーのセクハラ被害を気にしてて。
九州ではある?」


長崎は、のーんびり「いえ、こっちでは。
国鉄バスは長距離主体だし。それに、終バスが早いから
男子ドライバーの暴行被害とかも無いですね。
女子ドライバーは、大体日勤で帰って貰ってます。」


「そうか、ありがとう長崎さん。もしさ、もしもの話だけど。
女子ドライバーが来たら、歓迎する?」と、局長。

長崎は「はい。人手不足ですから、どこも。どの方?」


局長は、愛紗を示す。


長崎は「あんな可愛い方が。いやーもったいない。
鉄道部で受け入れたら如何でしょうか。
駅員でも、車掌でも。アイドルですね。ははは。
CMに出てもらえますね。」


局長「そういう事。こっちにみんなで越してくれば?
一緒に働けるでしょう。あなた方も
バスガイドで無くても良ければ、列車の乗務員とか。
CAなら、すぐにでも入れますよ。
それから車掌、運転士コースにも行けますよ。
成績次第で。」


友里絵は「わー、いいお話!」

由香「ほんとだねー。でも、あたしたち高卒。あ、ゆりえは専門卒だけど。」

局長さん「ほー。高学歴芸人さんだ」

みんな、笑った。

区長さんは「なにがご専門ですか?」

友里絵は「え、えーと・・・ペット・トリマーと、小動物看護師。資格あります。」

局長さん「そういうビジネスも企画にあったね、確か。今は多角経営の時代だから。
駅にね。いろんなお店を作るのが流行りだから。そういう仕事に進めるかもね。」


由香は「言ってみるもんだね。」


友里絵は「おーい、あいしゃー、なゆー、こっちおいで」


愛紗と菜由はびっくり「どうかした?」と、とことこ歩いてくる。


友里絵が「あたしたち、国鉄に入れるかもだよ」

愛紗は、自分の事ではないと思って「そう。良かった。ほんと。無理してバスの運転しなくて

も・・・・。」


友里絵は「あたしたちは別。愛紗のこと!」


愛紗「わたし?」


由香「国鉄でもね、若い人は足りないんだって。」

区長は「そう。いい人は少ないです。田舎だとね。鉄道みたいに
時間が不規則な仕事は、みんな嫌がって。
綺麗なオフィスワークとかに行くから。
みなさんのように、実務経験がある方は大丈夫です。
尤も、都会で実務している女子乗務員は、まず戻ってこないですね。」


愛紗「どうしてですか?」

区長は「私鉄の方が給料いいし。国鉄だと最初から乗務員は現地採用だから。
転勤は希望しないと無いです。」


局長「男子ならね、車掌になれば寝台特急に乗務できて。日本中行けますけど。
機関士は2時間単位で、実働6時間。
その他乗務員も、基本6時間勤務です。あとは残業手当になるから
普通は隔日勤務ですね。」



友里絵「いいなー。夜行列車かー。」

来るときに乗った寝台特急「富士」が、楽しかった。そんなことを思い出して。


区長「そうそう。女子でも食堂車クルーは、夜行列車勤務がありますね。
九州から大阪、東京とか。」


由香「そういうのも、楽しいね」


局長は「旅芸人だね」

みんな、笑った。


楽しい、旅先の夜は、更けていく・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

マドンナからの愛と恋

山田森湖
恋愛
水泳部のマドンナ、レナに片思いしていた高校生・コウジ。 卒業後、平凡でぐうたらな会社員生活を送る33歳の彼の前に、街コンで偶然、あのレナが現れる。 かつて声もかけられなかった彼女は、結婚や挫折を経て少し変わっていたけれど、笑顔や優しさは昔のまま。 大人になった二人の再会は、懐かしさとドキドキの入り混じる時間。 焼肉を囲んだ小さな食卓で、コウジの心に再び火が灯る——。 甘くほろ苦い青春の残り香と、今だからこそ芽生える大人の恋心を描いた、再会ラブストーリー。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

処理中です...