タビスルムスメ

深町珠

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おくらぱん

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「わたしはまだ、ドライバーになれていないけど。」と、愛紗。


菜由は「研修中は、誰でもそうだって。それに、愛紗の場合はさ。
運転が出来ない訳じゃなくって。
かわいい子だからって、悪い事するような人から守る為だもの。
会社だってその方が楽だもの。」


愛紗は「女って損だなぁ」



菜由は「そうかもね。でも・・・得する事もあるんだから。わざと
損な立場で働くことないよ。ホントに。
いい仕事もあるじゃない。ドライバーだって、定期観光バスとか
だったら。」


愛紗は「ドライバーだけが仕事じゃないって、なんとなく解ったような気がするな。」


友里絵は「あたしらがドライバー志願しても、野田さんも何にも言わなかったけど」


由香「そりゃー、元不良だし。ははは」


友里絵は「笑っていいのか?」

由香「いいともー!」


菜由は「さ、寝よっか。明日は・・・・どこ行くんだっけ。西大山かな。
列車本数ないから、早起きしないと」


友里絵は「あーい。寝よ、寝よ。」


由香「おやすみ」


愛紗は「おやすみなさい」


菜由「おやすみなさい」


楽しい、指宿の夜は更けていく。













翌朝、4人が起きたのは・・・
お日さまが高く昇った時間だった。


愛紗は「あ!大変」

遅刻、と思ったのだけれども「そっか。今は旅行だった」


日勤ならいざしらず、実際の勤務になると
毎朝、起きる時間が異なるし、寝る時間も違う。


毎日、時差ボケのような状態で
さすがに、それは堪えた。

ガイドの仕事でも、そんなに大きくは違わなかったし
第一、運転はしない。

鉄道員でも似たようなものであるが、バスの運転は
路線だと、混雑した市街も走るし
道路を横断する人や、自転車、バイクも居る。


緊張の度合いは、だいぶ違うので
路線研修程度でも、かなり・・・緊張した。


それだけに、解放されている今は
安心だった。

楽だった。




「やっぱり、辞めようかな、ドライバー」なんて
こんな朝は思ったりもする。





菜由もめざめ「おはよ、愛紗・・・何時?」

愛紗は、部屋の時計を見て「8時」


菜由は「それだと、西大山は列車で行くのは無理ね。」



愛紗は、まあ、どうでもいいのだけど・・・。


友里絵が起きて来て「ふぁ・・・おはょー。」と、眠そうに。
髪の毛も、もしゃもしゃ。


由香は「朝かー。」と、起きて来て。時計見て「8時過ぎ・・・だと、9時の列車は無理」


バスガイドの仕事柄、無理な日程は嫌いである。
危険だし。

わがままを言う客を見ていると「ああはなりたくない」と思うのかもしれない。






愛紗は時刻表を見て「じゃ、11時の列車で西大山へ行って、そこから
バスで回れば?池田湖とか。長崎鼻とか。」



友里絵は「あたしはそれでいい。この辺りって、どこでも楽しいもん。
そこにいるだけで」


のどかなところに居ると、そういうものなのかもしれない。
人の集まる観光スポットに行きたい、と思うより
のんびりと過ごしたい。

そういう気持になる、そういう旅もある。



由香も「それでいーよ。今晩もここに泊まるなら、手ぶらでいいし。楽だね。」




友里絵は「よし!、じゃ、ごはんごはん!」


由香は「食うことになると元気だなぁ・・・・朝ごはんって何時まで?」


愛紗は「9時。」



由香は「大変だ。それじゃ一時間ないよ。」


友里絵は「そんなに食べないよ。朝なんて。」






・・・・とは言ったものの。



朝のバイキングも豪華だった。


サラダバー、ミルク、コーヒー。フレッシュジュース。

みんな、新鮮なもので。それだけでも美味しい。


卵料理あれこれ。スクランブルド・エッグ。サニー・サイドは、自分で焼けるように
鉄板が温められていて、好みに作れる。
ターン・オーバーにも出来る。

ゆで卵。半熟もあるし、固ゆでもある。


麺類は、焼きビーフン、サラダスパゲティ、お蕎麦、うどん。


ごはん。高菜ごはん、豆ごはん。


お味噌汁は、豆味噌、麦味噌。おすまし。

コンソメ、ポタージュ。これは昨夜と同じ。


ロールパン、フランスパン、イギリスパン。


「おくらロールだって」と、友里絵。「めずらしーね。」


トースターで、好みに焼けるようになっている。
ベルトコンベアみたいに、パンを乗せると
ぐるりと一回り、その間に焼けてくる。



香ばしく焼けたおくらロールを食べた友里絵は「ふつうのパンかな?ちょっと粘っこいかも」




「紫芋パンもある」と、由香。



こちらは、ほんとに紫色で。なぜか、表面はふつうのロールパンだけど
ふたつに割ると紫いろ。
仄かに甘い香りがする。




その他、クロワッサンもある。



コーヒー、カプチーノ、アメリカン、カフェオレ、ラテ。




「こりゃ食べきれないなぁ」と、菜由。


「持って帰れば」と、友里絵。


「ダメダメ」と、由香。


「じょーだんだってば」と、友里絵。


朝日が差し込む窓際は、海がよく見える。



「清々しい」と、愛紗。


和食がお好み。

ごはんと、納豆、お味噌汁は麦が好き。


生卵も、新鮮で美味しい。


なぜか、ハムエッグだけが洋風だけれども。

マカロニサラダと、サニーレタス。



「旅っていいな」

そう思う瞬間。

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