タビスルムスメ

深町珠

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767A、場内、進行。東京、定時!

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こだま767号が、東京駅を発車する。制限は75なので
ゆっくり感じる。
車窓には、有楽町の町並み。
駅ホームに立ち並ぶ人々。早い帰宅の通勤客・・・。
映画館、ビルディング・・・・。壁に大きな看板。坊主頭の人のようなサイン。

「なんだろな、あれ」と、眺めながら・・・・。
列車は進む。


時折、車両の都合でチャイムが「いい日旅立ち」だったこともあり
そのメロディを聞くと、旅、を意識したものだった。

「九州も良く行ったなぁ」


バス・ドライバーをしている途中でも、秋になると
休みを取って旅行したものだった。


有給休暇が沢山あるから、困ることは無かったが
バスのダイアに穴が開いてしまうので
他の運転手が休日出勤したり、一日分の仕業を
分解して、幾つものバスの仕事の空き時間に分散したり。

余裕のあるバス会社なら、嘱託の人がそれを受け持つのだが
前の所長、岩市は
目先の損得しか考えないので、そうした余裕を削ってしまう。

そうすると、昼休みとか・・・休憩時間が無くなってしまって
昼食も取れず、バスの中でパンを食べたり。
おにぎりとか、そういうもので済ませたり。


そういった生活のせいで、病気になる運転手も多かった。


それも、岩市に経営能力が無いせいだった。
なぜ、そんな人が所長で居られるかは不明だったが・・・。


そんな事を思い出したりする深町。

「まあ、もう終わったんだから」と、片付けられる彼はいいけれど。

「日生くんたちに、そういう思いはさせたくないなぁ」などとも思う。


「所長が変わったから、まあ大丈夫かな」
所長は、あのゴジラである(笑)。





















♪ごはん、ごはん♪

と、ヘンな歌をまた歌っている友里絵。

由香が「がつがつ食うなよ」と。


「あーい、ママ」と、友里絵。


「あたしゃあんたのママじゃないー♪」と、由香も笑う。


「♪ばばんばばんばん・・・風ひくなよー。」と、友里絵はめげない子(^^)。




「さ、メシ食うか」と、菜由。


「石川さんみたい」と、愛紗。


菜由は、ちょっと恥かしげに「伝染るね、こういうの」と、笑う。


でも、悪い気はしない。




石川は、まともな人物である。



岩市が、深町をいじめようとしても
いつもやり込められてしまうので
バスにいたずらをしたりすることもあった。

クランクプーリを緩めて、走行中にオーバーヒートさせ
エンジンが壊れるように仕掛けたり。


石川は、そういう事はしなかった。

整備士の良心である。

それで、当時の工場長がそれを行った。



しかし、深町は自動車エンジニアでもあったので・・・・
それに気づき、走行中にオーバーヒートしないように走り
終点まで到着した。


結果、その故障は「工場の整備不良」と言う事になり

当時の工場長は左遷された。と言うか、事実上の解雇である。
悪いことはするものではない・・・・。





















「晩ごはんはどこかな?」と、友里絵。



愛紗は「1階の、ロビーの後ろが食堂ね」


菜由は「それだと、浴衣だとやっぱりちょっと」と、言って
部屋着に着替えた。


ジャージ、みたいなトレーナーの上下。グレーの。


「主婦だなぁ」と、由香。


「そう?」と菜由。「いつもこれだし」




「奥さんって感じ」と、愛紗。



「そのまんまゴミ出しに来たり。サンダル履いて、すっぴんで。ざんばら髪で」と、友里絵。

菜由は笑い「そこまではないけど。ゴミは石川が出してくれるし。」


愛紗は「いい旦那さん」と、にこにこ。



友里絵は「そーいえばさ、コンビニでバイトしてた時も
あたしは化粧しないで行くのがイヤで。それでいつも遅刻してたけど。
タマちゃんは『そんなのしなくてもいいよ』って言ってくれて。」


由香「ああ、そんなことあったね。ゴミ出しをあたしたちにさせる
パートのおばさん連中が居て。タマちゃんがそれを「当番でやるべきです」と
きっぱり言ってくれたんで。
元々、パートの仕事だったから、それ。」


菜由は「そんなことあったんだ。由香は、ずっと友里絵と一緒にバイトしてたの?」


由香は「そう。友里絵が高校辞めた後ね、バイトするって言うから。」


愛紗は「仲良しっていいね」


友里絵は「まあ、幼馴染だし」



「あ、ごはんごはん。冷めちゃうよ」と、友里絵。


愛紗は「大丈夫。バイキングだから。出来立てが食べられるの」

由香は「やったー。食べ放題か。」


友里絵は「がつがつ食うなよ」


由香は「さっき言ったっけね(^^)。」
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