タビスルムスメ

深町珠

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560A、進行!

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「じゃ、お弁当のつづきー。」と、友里絵は
楽しそう。
山側の7番と、6番を向かい合わせにして。
窓際ではなくて、通路側に座った。


「どして?」と、由香。

友里絵は「おばちゃんとお話したいもん」


銀髪の婦人は、にこにこ。

由香は「静かな車両が好きなんだからぁ」と。


友里絵は「あ、そっか。ご迷惑ですか?」


婦人は「いいえ、そんなことないのよ。」と、にこにこ。

幸いな事に、7Cは空いていたので
友里絵はちょっと、7Cにお邪魔さま。


「鹿児島のどこまでいくの?」と、友里絵。


婦人は「市内です。市電で少し行ったあたり。」

菜由は「私も鹿児島なんです」


婦人は「そうね、なんとなく・・・薩摩おごじょね。お里帰り?」


どちらかと言うと、西郷さんに近い骨格の人。
そんなイメージ。



「いいえ、友達と旅行で。たまたま、家の近くに来ただけです。」
と、菜由。



友里絵は、お弁当を開けて。

とり天の包み。


婦人に「とり天、好き?」と、言って、差し出した。


婦人は「ありがとう、好きよ。大分から来たの?」


つばめ560号は、その間に速度を上げて。
西側の海岸が見える。

さっきまで、東側が海岸だったのに

ちょっと不思議な感じ。


九州を、東から西に渡って来たのだった。



愛紗は、窓際に。
菜由が通路がわ。
その向かいに、由香。


婦人は「鹿児島から、どこを回るの?」

由香が「はい。指宿・・・だっけ?」

愛紗が頷く。


いまからだと、夕方までには着くわ、と婦人。

「鹿児島まで、一時間すこしね」と、婦人。

「早いですねー。」と、友里絵。

「そう。新幹線が出来るまでは、飛行機で行ってたの。」と、婦人。


由香は「アメリカみたいですね。」


菜由は「九州、広いもの。うちのお父さんとかも、よく乗ってたな。博多行くのに。」


九州新幹線「つばめ」は、高架の線路を風のように走り、南へ。

海岸が見える。


「一時間じゃ、お弁当食べてるとまた、着いちゃうね。」と、友里絵。


「ゆっくりだもんね、友里絵。学校に居た頃もそうだった。」と、由香。


「私達も、そうでしたね。桜島見ながら屋上で食べてると、灰が飛んできたり。」
と、婦人。




「市内ってそうですね。」と、菜由。



「噴火すると、町中灰だらけ」と、婦人。


「結構毛だらけ、猫灰だらけ」と、友里絵。


「その後は言うなよ」と、由香。



みんな、笑う。



♪~

メロディが流れて、優しいお姉さんの声で
車内アナウンス。




ーーーまもなく、熊本ですーーー。




~♪



「ほんと早いなぁ。」と、友里絵。




と、楽しい旅を過ごしている4人、と、ご婦人。




愛紗は、静かに旅を楽しんでいた。

「友達って、いいなぁ」と、思いながら。


大岡山を辞めてしまったら、もう会えなくなっちゃうな、なんて
ちょっと、思ったりして。


そんな事が進路に関わるのも、女の子にはよくある。


中学から高校へ行くのも、友達と同じところにしたり。

卒業するのが嫌で、泣いたり。


・・してもしょうがないのだけど(笑)。


割と、愛紗はそういうところが少なかった方だけど

でも、友里絵と由香は、なんとなく、そういう・・気持になるような子だな、と
愛紗は思った。



そうかと言って、大岡山に戻るのもちょっと難しいかもしれない。

ガイドに戻るのなら、別だけれども。



元はといえば、愛紗自身の希望で
ガイドからの転身をしたのだけど。


愛紗は、どうしていいかわからなくなった。



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