67 / 361
想い
しおりを挟む
「どしたの?」と、友里絵が心配そうに。
オトメちっくロマンではないと、表情で気づいて。
「ううん、なんでもないの。ちょっと。鉄道の制服を見てたらね。
わたしが、バスを運転してひとりだちした、そういう夢を見たの。」
と、愛紗。
「ひとりだちかぁ。ふつうは一ヶ月くらい掛かるけど。タマちゃんは
2週間掛からなかったんだってね。」と。友里絵。
「うん。その話は聞いた」と、愛紗。「わたしはとても・・・あの大岡山じゃ
無理だって思った。」
「でもさぁ、誰だって最初は怖いって。タマちゃんもそう言ってたよ。」と、由香。
「そう。それでかな、空想したの。なれっこないから。」と、愛紗。
友里絵は「でも、無理しなくていいってタマちゃんも言ってたし。
あたしたちは21歳だもん。タマちゃんはさーぁ、なんて言ったって
あの時43でしょ?」と。
「そりゃそーだよ、愛紗だってっさ、43になったらさ。」と、由香。
「おばさんね」と。愛紗。
「あたしらはババアだな」と、由香。
「一緒にスンナ!」と、友里絵。
その時、道路沿いを走っていた軽自動車、スバルR-2の親子が
窓を開けて。列車に手を振っていた。
友里絵も窓を開けて「おーい!」と、手を振って。
愛紗も微笑む。
由香も一緒に手を振って。
列車は高台、道路は川沿い。
同じように川に沿っている。時々、列車はトンネルに入って。
出てきたら、さっきのスバルR-2の親子が、また、手を振っていて。
友里絵も楽しそうに手を振る「どこいくのー。」
客車列車なので、レールの継ぎ目を乗り越える音がよく響く。
かたかたん、かたかたん・・・。
ゆっくり、ゆっくり。
道路を走っている車とそんなに変わらない。
窓を開けると、ディーゼル機関車の排気の匂いがする。
その匂いで、愛紗は、なんとなくバスを連想していたりした。
研修で乗った観光バスは、とても大きかったけど
そんなに怖いとは思わなかった。
リゾート地にある研修所なので、ヘンなクルマや人が居ない。
そのおかげだった。
列車は、川沿いの鬼瀬駅に止まる。
乗降する人はいないようだった。
それで、すぐに出発する。
客車列車なので、ちゃんと車掌が乗務している。
笛を吹いているのが遠く、後ろの車両から聞こえて。
ドアが閉じられる。
ピー、と
甲高いディーゼル機関車の笛の音。
前の方から、がちゃり、と引かれていく。
「なんか、のどかでいいね。」と、友里絵。
「うん」と由香。
愛紗はと言うと、ずっとこういう列車に乗っていたので
帰ってきたと言う気持だったり。
家には帰れないけど。
ゆっくり走っているように感じるけれど、結構早いらしく
さっきのスバルR-2に、また、追いついて、追い越した。
天神山駅は、裏が崖で
滝が流れているけれど
緑深いので、よくみないと判らない。
友里絵は目がいい。「あ!滝だ。すごいなぁ」と。
由香は「どこどこ?あー、あれかぁ」
白糸のように細い流れが、頭上から流れ落ちている。
愛紗は良く見て知っているので、にこにこしながら見ている。
崖の反対側は道路、と行っても細い道で
それも、少しの平地。
その下は、また崖で
栗の木が何本か生えていて。
「秋になるとね、あの木に栗がなるの」と、愛紗。
友里絵は「わー。栗ひろいしたいねー。」
由香も「うん、秋にまた来ようか」
愛紗は、まあ、栗は一杯なるので
拾わなくても100円で袋一杯だから
拾った記憶はない。
でも、拾うのも楽しいかな、なんて
友里絵を見ていると思う。
列車はごとごと、ゆっくり下る。
「いいねー、列車の旅って。」と、友里絵。
窓を開けていると、かたかたん、かたかたん、と
レールの響きが軽快だ。
オトメちっくロマンではないと、表情で気づいて。
「ううん、なんでもないの。ちょっと。鉄道の制服を見てたらね。
わたしが、バスを運転してひとりだちした、そういう夢を見たの。」
と、愛紗。
「ひとりだちかぁ。ふつうは一ヶ月くらい掛かるけど。タマちゃんは
2週間掛からなかったんだってね。」と。友里絵。
「うん。その話は聞いた」と、愛紗。「わたしはとても・・・あの大岡山じゃ
無理だって思った。」
「でもさぁ、誰だって最初は怖いって。タマちゃんもそう言ってたよ。」と、由香。
「そう。それでかな、空想したの。なれっこないから。」と、愛紗。
友里絵は「でも、無理しなくていいってタマちゃんも言ってたし。
あたしたちは21歳だもん。タマちゃんはさーぁ、なんて言ったって
あの時43でしょ?」と。
「そりゃそーだよ、愛紗だってっさ、43になったらさ。」と、由香。
「おばさんね」と。愛紗。
「あたしらはババアだな」と、由香。
「一緒にスンナ!」と、友里絵。
その時、道路沿いを走っていた軽自動車、スバルR-2の親子が
窓を開けて。列車に手を振っていた。
友里絵も窓を開けて「おーい!」と、手を振って。
愛紗も微笑む。
由香も一緒に手を振って。
列車は高台、道路は川沿い。
同じように川に沿っている。時々、列車はトンネルに入って。
出てきたら、さっきのスバルR-2の親子が、また、手を振っていて。
友里絵も楽しそうに手を振る「どこいくのー。」
客車列車なので、レールの継ぎ目を乗り越える音がよく響く。
かたかたん、かたかたん・・・。
ゆっくり、ゆっくり。
道路を走っている車とそんなに変わらない。
窓を開けると、ディーゼル機関車の排気の匂いがする。
その匂いで、愛紗は、なんとなくバスを連想していたりした。
研修で乗った観光バスは、とても大きかったけど
そんなに怖いとは思わなかった。
リゾート地にある研修所なので、ヘンなクルマや人が居ない。
そのおかげだった。
列車は、川沿いの鬼瀬駅に止まる。
乗降する人はいないようだった。
それで、すぐに出発する。
客車列車なので、ちゃんと車掌が乗務している。
笛を吹いているのが遠く、後ろの車両から聞こえて。
ドアが閉じられる。
ピー、と
甲高いディーゼル機関車の笛の音。
前の方から、がちゃり、と引かれていく。
「なんか、のどかでいいね。」と、友里絵。
「うん」と由香。
愛紗はと言うと、ずっとこういう列車に乗っていたので
帰ってきたと言う気持だったり。
家には帰れないけど。
ゆっくり走っているように感じるけれど、結構早いらしく
さっきのスバルR-2に、また、追いついて、追い越した。
天神山駅は、裏が崖で
滝が流れているけれど
緑深いので、よくみないと判らない。
友里絵は目がいい。「あ!滝だ。すごいなぁ」と。
由香は「どこどこ?あー、あれかぁ」
白糸のように細い流れが、頭上から流れ落ちている。
愛紗は良く見て知っているので、にこにこしながら見ている。
崖の反対側は道路、と行っても細い道で
それも、少しの平地。
その下は、また崖で
栗の木が何本か生えていて。
「秋になるとね、あの木に栗がなるの」と、愛紗。
友里絵は「わー。栗ひろいしたいねー。」
由香も「うん、秋にまた来ようか」
愛紗は、まあ、栗は一杯なるので
拾わなくても100円で袋一杯だから
拾った記憶はない。
でも、拾うのも楽しいかな、なんて
友里絵を見ていると思う。
列車はごとごと、ゆっくり下る。
「いいねー、列車の旅って。」と、友里絵。
窓を開けていると、かたかたん、かたかたん、と
レールの響きが軽快だ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】私が奏でる不協和音
かずきりり
青春
勉強、勉強、勉強。
テストで良い点を取り、模試で良い順位を取り、難関大学を目指して勉強する日々に何の意味があるというのだろうか。
感情は抜け落ち、生きているのか死んでいるのか分からないような毎日。
まるで人形のようで、生きるとは一体何なのか。
将来に不安しかなくて、自分で自分を傷つける。
そんな中で出会った「歌」
楽しい。
私は歌が好きだ。
歌い手という存在を知り
動画配信サイトやアプリといったネットの世界へと触れていく。
そして…………
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
晩夏光、忘却の日々
佐々森りろ
青春
【青春×ボカロPカップ】エントリー作品
夕空が、夜を連れて来るのが早くなった。
耳を塞ぎたくなるほどにうるさかった蝉の鳴く聲が、今はもう、しない。
夏休み直前、彼氏に別れを告げられた杉崎涼風は交通事故に遭う。
目が覚めると、学校の図書室に閉じ込められていた。
自分が生きているのか死んでいるのかも分からずにいると、クラスメイトの西澤大空が涼風の存在に気がついてくれた。
話をするうちにどうせ死んでいるならと、涼風は今まで誰にも見せてこなかった本音を吐き出す。
大空が涼風の事故のことを知ると、涼風は消えてしまった。
次に病院で目が覚めた涼風は、大空との図書室でのことを全く覚えていなかった……
孤独な涼風と諦めない大空の不思議で優しい、晩夏光に忘れた夏を取り戻す青春ラブストーリー☆*:.。.
坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】
S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。
物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる