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1列車 抑止!
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愛紗の乗っている寝台特急富士は、 雨が酷く
用宗駅で停車したままだ、
静岡県は山が海に迫っているので
よく川が氾濫する。
そのせいで、よく、興津川や
この先にある大井川などが警戒水域を越えて
橋が通行出来ない事もある。
それで抑止、となると
事によると、運転取りやめになる事もある。
その場合、新幹線に振替輸送になったりするから
損得で言えば、国鉄は割に合わないけれど
それでも、運行するのは
国民の為の鉄道で、採算が目的ではないから。
寝台特急富士の利用者が減っても、運行しているのはそれが理由であり
意外に保守的な静岡県の行政関係の
影響、で
あるらしい。
停まっている列車は、車内を見物するには
好都合だから
愛紗は、少し、個室から出て歩いてみる事にした。
個室、B寝台車から
A寝台車。そこには専務車掌がいつも乗っている。
「日野さん、いらっしゃるのかしら」と
愛紗は思ったが、そこは乗務員経験から
こういう時の繁忙さを解っているので
訪ねる事は控えた。
ロビーカーは、まだ、さっきの
社用のおじさん達が
お酒を呑んで騒いでた。
指令の野田が言うように。
路線バスの運転士なら、誰も助けてはくれない。
そうかもしれない、と自問し
ロビーカーの扉を開けずに引き返すと
山岡が、デッキの階段の所で雨を見ていた。
やあ、と山岡は笑顔になって。
愛紗も、なんとなく笑顔になれる。
ふと、「どうして働くんでしょうね」と
愛紗は、蟠ってたキモチを話した。
山岡は柔らかに「理由はないと思う。今はたまたまお金で食べ物を買える社会だから、と言うだけで。そうでなければ食べ物を探して歩いてて、考える時間なんてなかったろうし。」
愛紗は、ずっと、生まれる前から続いてた
社会の事まで考えていなかった。
「そうなんですね」と、返答。
山岡は、笑って「僕も実感はないのさ。ただ、生き物だから、食べないと死んでしまう。
生まれてしまったから考えるので、好きで生まれた訳でもない」
愛紗も、なんとなく理解できる。
山岡は「僕が生まれたのは、親が可愛がりたいからで、それは動物も持っている感覚でしょう。それで、親が老いて来て僕が支えるのは
それも動物の感覚。そういう必然で働くので
仕事はなんでもいい。でも、もし幸運にも
誰かが必要としてくれるなら、それも、動物、の群れのような感覚なんじゃないかな」
愛紗は、それで気づいた。
路線バスの運転士を志望したのは、自分の憧れだった。
必要とされていると思っての、事だった。
でも、現実は違ってた。
若い女の子がやっていけるほど、大岡山の
路線は甘くなかった。
愛紗は、まだまだ自分が甘えてたと気づき
有馬の言うように、田舎の長閑な
定期観光バスとか、コミュニティーバスくらいがいいのだろう。
そんな風に実感した。
用宗駅で停車したままだ、
静岡県は山が海に迫っているので
よく川が氾濫する。
そのせいで、よく、興津川や
この先にある大井川などが警戒水域を越えて
橋が通行出来ない事もある。
それで抑止、となると
事によると、運転取りやめになる事もある。
その場合、新幹線に振替輸送になったりするから
損得で言えば、国鉄は割に合わないけれど
それでも、運行するのは
国民の為の鉄道で、採算が目的ではないから。
寝台特急富士の利用者が減っても、運行しているのはそれが理由であり
意外に保守的な静岡県の行政関係の
影響、で
あるらしい。
停まっている列車は、車内を見物するには
好都合だから
愛紗は、少し、個室から出て歩いてみる事にした。
個室、B寝台車から
A寝台車。そこには専務車掌がいつも乗っている。
「日野さん、いらっしゃるのかしら」と
愛紗は思ったが、そこは乗務員経験から
こういう時の繁忙さを解っているので
訪ねる事は控えた。
ロビーカーは、まだ、さっきの
社用のおじさん達が
お酒を呑んで騒いでた。
指令の野田が言うように。
路線バスの運転士なら、誰も助けてはくれない。
そうかもしれない、と自問し
ロビーカーの扉を開けずに引き返すと
山岡が、デッキの階段の所で雨を見ていた。
やあ、と山岡は笑顔になって。
愛紗も、なんとなく笑顔になれる。
ふと、「どうして働くんでしょうね」と
愛紗は、蟠ってたキモチを話した。
山岡は柔らかに「理由はないと思う。今はたまたまお金で食べ物を買える社会だから、と言うだけで。そうでなければ食べ物を探して歩いてて、考える時間なんてなかったろうし。」
愛紗は、ずっと、生まれる前から続いてた
社会の事まで考えていなかった。
「そうなんですね」と、返答。
山岡は、笑って「僕も実感はないのさ。ただ、生き物だから、食べないと死んでしまう。
生まれてしまったから考えるので、好きで生まれた訳でもない」
愛紗も、なんとなく理解できる。
山岡は「僕が生まれたのは、親が可愛がりたいからで、それは動物も持っている感覚でしょう。それで、親が老いて来て僕が支えるのは
それも動物の感覚。そういう必然で働くので
仕事はなんでもいい。でも、もし幸運にも
誰かが必要としてくれるなら、それも、動物、の群れのような感覚なんじゃないかな」
愛紗は、それで気づいた。
路線バスの運転士を志望したのは、自分の憧れだった。
必要とされていると思っての、事だった。
でも、現実は違ってた。
若い女の子がやっていけるほど、大岡山の
路線は甘くなかった。
愛紗は、まだまだ自分が甘えてたと気づき
有馬の言うように、田舎の長閑な
定期観光バスとか、コミュニティーバスくらいがいいのだろう。
そんな風に実感した。
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