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旅鉄9 [山陽本線上り第2列車 寝台特急"富士" 〜漆黒の闇、山陽本線をEF66はゆく〜 ]
[夜の下関駅]
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[夜の下関駅]
ほぼ夜と言って良い雰囲気の下関駅。
ここが山陽路のターミナル駅だ、というムードを感じ取ることもこの雰囲気からは困難な
静寂なホームは緩やかに湾曲し、まだ宵の口だというのにホームの人影もまばら。
うどんスタンドのあたりだけが賑やか。
朝の下り列車ならば機関車交換を眺めにくる乗客も多いが、夜の上り列車のためか
見物人は筆者のみ。
連結作業の迷惑にならないよう、補助光なしで写真を撮る。
ホームの端とは言え、光源はあるから f2あたりなら手持ちでもなんとかなるだろう、と
シンプル・ニコンの露出針をのぞき、シャッターを切った。
EF66のブロワーの音が暗いホームのコンクリートに反響している。
さあ、がんばって走れよ、と、汚れたブルーのボディに無言で告げる。
---memo----
*EF66。
かつてマンモス電機なんて言われたが、マンモスは滅びる、と言う事から国鉄サイドは
あんまりこの表現を好まなかったそうで....「ジャンボジェット」の呼称をボーイング社が好まなかった
のと類似例か(笑)。
まあ、イメージを大切にすることも必要である。
マンモス、などと呼ばれた理由は出力が大きく、見た目も大きく立派に見えた
という辺りからだと思えるが、現在見てもこのEF66のデザインはなかなか立派だし
その後の電気機関車の意匠はEF66のデザインの影響がどこかに感じられるようにも思える。
ショート・ボンネットスタイル、ストレートなペイント、ブルーの塗装、特急マーク、
どこか電車特急151系にも似たライトデザインなど、グッド・デザインだと思える。
開発当時は貨物専用機だったが、デザインからしてブルー・トレイン牽引にぴったりムードだったから
当時の鉄道ファンたちは「いつかブルー・トレインを...」と夢想したものだった。
それが現実になったのは当初の計画には無かった事だと言うから、世の中分からないものだ。
デザイン面だけでなく、メカ二カルな部分もこのEF66は優れた機関車であり
3900Kwという高出力が安定して使用できるという点でもベター・エンジニアリングである。
如何にしてこの高出力が供給できるかと言うと、割と機構的にはオーソドックスで
従来のモーターの電極数を1.5倍にして出力を増やし、車軸への駆動も凝った方式ではなく
緩衝ゴムを介してつりかけ駆動、というシンプルなシステムであり
このあたりの設計が良かったのか、以来40年近くに渡り運用され
現在でも山陽・東海道本線のスター機関車である、
と言っても異論は出ないであろうと思う。
->モーターの電極数。
単純に言うとモーターは磁力の反発/誘引で回転するので、円周上に多数の磁極を配置すれば
1回転する時に発生する回転力は増加する事になるが、機構が複雑になるし、熱の拡散が困難になる
という問題もあるから無闇に多極化する事もできず、この場合の1.5倍と言う設定は適当である
と考えられる。現在ではインヴァータ制御などが実用になっているからより容易に高出力化
が実現できると思われるが、EF66の設計当時ではこれは最善策だったのだろう。
後になってJR貨物がEF66の新造を、経年を越えて行った事からも伺い知れる。
->つりかけ駆動。
モーターは車軸へと動力を伝えなくてはならないが、「つりかけ」というのは
モーターを車軸の歯車と直結してしまう方法で、簡素で最も原初的な方法であるが
路盤からの衝撃が直接モーターに伝わるからその点に配慮が必要であるし
EF66で採用された方式は可トウ式と言い、車軸側の歯車と車軸の間に
緩衝材を介するという方式で、シンプルだが確実な方式である。
貨物機としては現実的な設計であると思える。
*直流、交流。
山陽区間は直流1500V電化であるが、電化当初、交流となる可能性もあった、との事である。
運転士たちは交流電化を望んでいた、などとも聞くが、東海道本線との統一性を保つために
直流1500Vとなったのだろうと思う。
一般的に地方線向きの交流20000V,都市近郊向きの直流1500V、などと言われるが
その理由は単純に設備負担のコスト、である。
同じ輸送量を確保するならば、必要な電力は同じであるから、電圧を高くすれば
架線に流す電流を少なくする事が出来る(P=EI、電力=電圧×電流、というアレ)
から、変電所の設備を減らす事が出来、コスト削減になると言う訳だ。
架線電圧が高ければ、変電所から遠くなって電圧が少々低下してもあまり問題にならないから、
である。
鉄道車両はこの点割にアバウトだから、通勤時間帯の駅、同時発車、なんて場合は
電気の奪い合い(笑)になって大変だ、との事である。
電圧が下がったところで動かない訳ではないが、パワーが得られず、加速が悪くなって
列車遅延、なんて事になったりもする。
そのあたりに目をつぶればどうと言う事はなく、例えば私鉄ローカル線で600V定格の路線に
国鉄の1500V電車を入線させても動く事は動く。(が、能力をフルに使えば変電所が
ダウンしてしまうが。)
-----*----
ほぼ夜と言って良い雰囲気の下関駅。
ここが山陽路のターミナル駅だ、というムードを感じ取ることもこの雰囲気からは困難な
静寂なホームは緩やかに湾曲し、まだ宵の口だというのにホームの人影もまばら。
うどんスタンドのあたりだけが賑やか。
朝の下り列車ならば機関車交換を眺めにくる乗客も多いが、夜の上り列車のためか
見物人は筆者のみ。
連結作業の迷惑にならないよう、補助光なしで写真を撮る。
ホームの端とは言え、光源はあるから f2あたりなら手持ちでもなんとかなるだろう、と
シンプル・ニコンの露出針をのぞき、シャッターを切った。
EF66のブロワーの音が暗いホームのコンクリートに反響している。
さあ、がんばって走れよ、と、汚れたブルーのボディに無言で告げる。
---memo----
*EF66。
かつてマンモス電機なんて言われたが、マンモスは滅びる、と言う事から国鉄サイドは
あんまりこの表現を好まなかったそうで....「ジャンボジェット」の呼称をボーイング社が好まなかった
のと類似例か(笑)。
まあ、イメージを大切にすることも必要である。
マンモス、などと呼ばれた理由は出力が大きく、見た目も大きく立派に見えた
という辺りからだと思えるが、現在見てもこのEF66のデザインはなかなか立派だし
その後の電気機関車の意匠はEF66のデザインの影響がどこかに感じられるようにも思える。
ショート・ボンネットスタイル、ストレートなペイント、ブルーの塗装、特急マーク、
どこか電車特急151系にも似たライトデザインなど、グッド・デザインだと思える。
開発当時は貨物専用機だったが、デザインからしてブルー・トレイン牽引にぴったりムードだったから
当時の鉄道ファンたちは「いつかブルー・トレインを...」と夢想したものだった。
それが現実になったのは当初の計画には無かった事だと言うから、世の中分からないものだ。
デザイン面だけでなく、メカ二カルな部分もこのEF66は優れた機関車であり
3900Kwという高出力が安定して使用できるという点でもベター・エンジニアリングである。
如何にしてこの高出力が供給できるかと言うと、割と機構的にはオーソドックスで
従来のモーターの電極数を1.5倍にして出力を増やし、車軸への駆動も凝った方式ではなく
緩衝ゴムを介してつりかけ駆動、というシンプルなシステムであり
このあたりの設計が良かったのか、以来40年近くに渡り運用され
現在でも山陽・東海道本線のスター機関車である、
と言っても異論は出ないであろうと思う。
->モーターの電極数。
単純に言うとモーターは磁力の反発/誘引で回転するので、円周上に多数の磁極を配置すれば
1回転する時に発生する回転力は増加する事になるが、機構が複雑になるし、熱の拡散が困難になる
という問題もあるから無闇に多極化する事もできず、この場合の1.5倍と言う設定は適当である
と考えられる。現在ではインヴァータ制御などが実用になっているからより容易に高出力化
が実現できると思われるが、EF66の設計当時ではこれは最善策だったのだろう。
後になってJR貨物がEF66の新造を、経年を越えて行った事からも伺い知れる。
->つりかけ駆動。
モーターは車軸へと動力を伝えなくてはならないが、「つりかけ」というのは
モーターを車軸の歯車と直結してしまう方法で、簡素で最も原初的な方法であるが
路盤からの衝撃が直接モーターに伝わるからその点に配慮が必要であるし
EF66で採用された方式は可トウ式と言い、車軸側の歯車と車軸の間に
緩衝材を介するという方式で、シンプルだが確実な方式である。
貨物機としては現実的な設計であると思える。
*直流、交流。
山陽区間は直流1500V電化であるが、電化当初、交流となる可能性もあった、との事である。
運転士たちは交流電化を望んでいた、などとも聞くが、東海道本線との統一性を保つために
直流1500Vとなったのだろうと思う。
一般的に地方線向きの交流20000V,都市近郊向きの直流1500V、などと言われるが
その理由は単純に設備負担のコスト、である。
同じ輸送量を確保するならば、必要な電力は同じであるから、電圧を高くすれば
架線に流す電流を少なくする事が出来る(P=EI、電力=電圧×電流、というアレ)
から、変電所の設備を減らす事が出来、コスト削減になると言う訳だ。
架線電圧が高ければ、変電所から遠くなって電圧が少々低下してもあまり問題にならないから、
である。
鉄道車両はこの点割にアバウトだから、通勤時間帯の駅、同時発車、なんて場合は
電気の奪い合い(笑)になって大変だ、との事である。
電圧が下がったところで動かない訳ではないが、パワーが得られず、加速が悪くなって
列車遅延、なんて事になったりもする。
そのあたりに目をつぶればどうと言う事はなく、例えば私鉄ローカル線で600V定格の路線に
国鉄の1500V電車を入線させても動く事は動く。(が、能力をフルに使えば変電所が
ダウンしてしまうが。)
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