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[日豊本線上り第2列車 寝台特急"富士" 〜豊後水道をゆくEF81〜 ]
[発車待ち]
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--------*--------------
[発車待ち]
EF81の先端には「富士」のヘッドマークが取り付けられていた。
このヘッドマーク、現在は富士山の形の物が使用されているが
以前は円盤状のよく見かけるタイプの物に白く富士山を象った
ヘッドマークが使用されていた事を思い出す。
その頃はEF65だったようで、富士山型になったのはEF66牽引になってから
だったように思うが、朧気な記憶の果ての事だ。
それほど長い歴史を持つ富士号であるが、さて、いつまで走り続けてくれる事だろう...
------memo---------
この、富士山型のヘッド・マークはもともとは東海道・山陽本線の客車特急(1列車、2列車)
だった頃に使用されていたタイプの物を復元したと聞くが
遙かに過去の昭和4年、日本初の愛称つき列車であったとされているから
この列車名称はとても輝かしい経歴を持つトレイン・ネームだと言える。
当時の写真を見ると、展望車先端に「富士」と、現在、復元のヘッド・マークの原型が
設置されているが、よく見ると「FUJI」ではなく「HUZI」になっているところなどご愛敬であろう。
戦時中断の後に電車化された事はご承知の通りであるが、20系ブルー・トレイン編成で
大分行き特急として現在のスタイルに近い運転経路となったのは昭和39年のことだから
それから数えても30年余の期間、毎日往復を続けていた事になるから
総延長距離としたら記録ものではないか、と思えるのだが..
-------------*----------
運転士は機器の最終点検を行っている様子。
先頭車両で専務車掌氏は、携行品で一杯になった鞄を置いて
ドア扱いを待っている。
直にジャンパ結合が終了し、付属編成に電灯が点り、空気解放音と共に
折り戸がばたり、と開いた。
バネの慣性を感じるようなこの開き加減がいかにも機械っぽくて楽しい。
プラットホームを歩いてゆく。
先頭が14号車、オハネフ25、序で13号車がA寝台個室車、オロネ25。
12号車がオハネ25型B寝台個室「ソロ」...と、編成は「はやぶさ」と同じ。
8号車が食堂車、9号車がロビーカーで、他はB寝台車。最後尾が電源/荷物車カニ24型。
「はやぶさ」と共通運用のために編成はまったく同じとなっている。
発車は17:02分だから、16:49分の到着から13分の余裕がある事になる。
これだけ余裕があれば改札を抜けて駅弁を買い、駅のスタンプを押して
入場券をかって帰ってこれるだろう(笑)と思うが
まあそれは駅のどこにどんな設備があるか分かっていないと難しいだろう。
買い物を筆者たちに頼んだK君は正しい...(笑)。と思いながら編成を見ていると
9号車、ロビー・カーにK君とS君の姿が見えたので、隣の7号車から乗り込む。
お互いの無事を喜び(とはいってもたった1日の別れだったが^^;)再会を笑顔で迎える。
今夜はS君はBソロの上段、K君はB寝台、筆者はA寝台個室に泊まる事になっている。
何故かBソロが取れずにA個室が空いていたので、まあいいか、とA個室を取った。
こうなると集会所は筆者のA個室になってしまうのだろう(笑)。
車内放送が入る。
「ご利用ありがとうございます。この列車は寝台特急富士号、東京行きです。
乗車券の他に特急券、寝台券が必要です。定期券、回数券ではご乗車になれません
ので御注意下さい....まもなく発車になりますので、お見送りの方はホームからお願い致します...。」
柔らかで落ち着いた物腰は特急に似合いだが、このテンポも練習する、と聞くから
なかなかキメの細かいサービスだ、と思う。
しばらくロビーカーで談笑しながら、しばし名残を惜しむ。
短い旅、トンボ帰りながら楽しい経験だったと思う。
次は、のんびりと気動車に揺られて乗ったり降りたりを繰り返してみたいと思い
ふたりにそう話すと、いいですね、いつにしましょうか、と...
こんな感じで次の旅程が始まる。
寂しい筈の帰路の夜行、次の旅へのはじまりにも思えてきて
楽しい帰り道となりそうだ。
ホームには女性アナウンスがのどかに「おーいたぁ~、おーいたぁ~」と
その声だけで和んでしまうが、発車時刻が迫って来、この2列車の発車を告げはじめると
筆者はそれを記録しようとふと思い、VTRを回した。
17:02分、ホームに国鉄時代を思わせる電子ベルが響き、駅係員の声で
「寝台特急富士号東京行き発車です、ドアが閉まります。」
エアが解放されてドアが閉じられた。
さあ、出発だ。
EF81はスムーズに15両編成を引き出す。交流専用機とは違い、交直流機のEF81は
直流機同様に微妙な制御が難しいと聞くが、至ってスムーズな発進だった。
K君、S君もこの瞬間は黙って、ホームが流れてゆくのを車窓越しに眺めていた..
否、S君は久大本線ホームの女子高生を眺めていた(笑)。
先ほどの踏切をゆっくりと通過、夕暮れの町並みと人影、鄙びた街並みが見え
機関士がグイ、とノッチを進めて2列車は、力強く加速を始めた。
セレナーデのチャイムが流れ、車掌の車内放送が始まり
進行方向右手に大分湾、豊後水道を行き交う船が見えると西大分駅を通過、
次の停車駅は別府、と車掌は告げた。
EF81は豊後水道を背に、着実に歩みを始める。
夕暮れの海は波もおだやか、暖かだ。
[発車待ち]
EF81の先端には「富士」のヘッドマークが取り付けられていた。
このヘッドマーク、現在は富士山の形の物が使用されているが
以前は円盤状のよく見かけるタイプの物に白く富士山を象った
ヘッドマークが使用されていた事を思い出す。
その頃はEF65だったようで、富士山型になったのはEF66牽引になってから
だったように思うが、朧気な記憶の果ての事だ。
それほど長い歴史を持つ富士号であるが、さて、いつまで走り続けてくれる事だろう...
------memo---------
この、富士山型のヘッド・マークはもともとは東海道・山陽本線の客車特急(1列車、2列車)
だった頃に使用されていたタイプの物を復元したと聞くが
遙かに過去の昭和4年、日本初の愛称つき列車であったとされているから
この列車名称はとても輝かしい経歴を持つトレイン・ネームだと言える。
当時の写真を見ると、展望車先端に「富士」と、現在、復元のヘッド・マークの原型が
設置されているが、よく見ると「FUJI」ではなく「HUZI」になっているところなどご愛敬であろう。
戦時中断の後に電車化された事はご承知の通りであるが、20系ブルー・トレイン編成で
大分行き特急として現在のスタイルに近い運転経路となったのは昭和39年のことだから
それから数えても30年余の期間、毎日往復を続けていた事になるから
総延長距離としたら記録ものではないか、と思えるのだが..
-------------*----------
運転士は機器の最終点検を行っている様子。
先頭車両で専務車掌氏は、携行品で一杯になった鞄を置いて
ドア扱いを待っている。
直にジャンパ結合が終了し、付属編成に電灯が点り、空気解放音と共に
折り戸がばたり、と開いた。
バネの慣性を感じるようなこの開き加減がいかにも機械っぽくて楽しい。
プラットホームを歩いてゆく。
先頭が14号車、オハネフ25、序で13号車がA寝台個室車、オロネ25。
12号車がオハネ25型B寝台個室「ソロ」...と、編成は「はやぶさ」と同じ。
8号車が食堂車、9号車がロビーカーで、他はB寝台車。最後尾が電源/荷物車カニ24型。
「はやぶさ」と共通運用のために編成はまったく同じとなっている。
発車は17:02分だから、16:49分の到着から13分の余裕がある事になる。
これだけ余裕があれば改札を抜けて駅弁を買い、駅のスタンプを押して
入場券をかって帰ってこれるだろう(笑)と思うが
まあそれは駅のどこにどんな設備があるか分かっていないと難しいだろう。
買い物を筆者たちに頼んだK君は正しい...(笑)。と思いながら編成を見ていると
9号車、ロビー・カーにK君とS君の姿が見えたので、隣の7号車から乗り込む。
お互いの無事を喜び(とはいってもたった1日の別れだったが^^;)再会を笑顔で迎える。
今夜はS君はBソロの上段、K君はB寝台、筆者はA寝台個室に泊まる事になっている。
何故かBソロが取れずにA個室が空いていたので、まあいいか、とA個室を取った。
こうなると集会所は筆者のA個室になってしまうのだろう(笑)。
車内放送が入る。
「ご利用ありがとうございます。この列車は寝台特急富士号、東京行きです。
乗車券の他に特急券、寝台券が必要です。定期券、回数券ではご乗車になれません
ので御注意下さい....まもなく発車になりますので、お見送りの方はホームからお願い致します...。」
柔らかで落ち着いた物腰は特急に似合いだが、このテンポも練習する、と聞くから
なかなかキメの細かいサービスだ、と思う。
しばらくロビーカーで談笑しながら、しばし名残を惜しむ。
短い旅、トンボ帰りながら楽しい経験だったと思う。
次は、のんびりと気動車に揺られて乗ったり降りたりを繰り返してみたいと思い
ふたりにそう話すと、いいですね、いつにしましょうか、と...
こんな感じで次の旅程が始まる。
寂しい筈の帰路の夜行、次の旅へのはじまりにも思えてきて
楽しい帰り道となりそうだ。
ホームには女性アナウンスがのどかに「おーいたぁ~、おーいたぁ~」と
その声だけで和んでしまうが、発車時刻が迫って来、この2列車の発車を告げはじめると
筆者はそれを記録しようとふと思い、VTRを回した。
17:02分、ホームに国鉄時代を思わせる電子ベルが響き、駅係員の声で
「寝台特急富士号東京行き発車です、ドアが閉まります。」
エアが解放されてドアが閉じられた。
さあ、出発だ。
EF81はスムーズに15両編成を引き出す。交流専用機とは違い、交直流機のEF81は
直流機同様に微妙な制御が難しいと聞くが、至ってスムーズな発進だった。
K君、S君もこの瞬間は黙って、ホームが流れてゆくのを車窓越しに眺めていた..
否、S君は久大本線ホームの女子高生を眺めていた(笑)。
先ほどの踏切をゆっくりと通過、夕暮れの町並みと人影、鄙びた街並みが見え
機関士がグイ、とノッチを進めて2列車は、力強く加速を始めた。
セレナーデのチャイムが流れ、車掌の車内放送が始まり
進行方向右手に大分湾、豊後水道を行き交う船が見えると西大分駅を通過、
次の停車駅は別府、と車掌は告げた。
EF81は豊後水道を背に、着実に歩みを始める。
夕暮れの海は波もおだやか、暖かだ。
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