旅と鉄路

深町珠

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[東京-西鹿児島1500kmロング・ラン〜寝台特急"はやぶさ"5列車〜(後編)]

[熊本出発]

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[熊本出発]

11時53分に熊本駅のホームから出発したはやぶさ号は
この先、午後3時過ぎまでの3時間のラストランに旅立った。

B寝台、カーテン仕切りだから空いていたらのんびりと出来る。
でも、本気で昼寝すると車掌に注意されるけれど。
ここでBソロとの居住性を比較してみよう。

たぶん、閉所恐怖症でなければソロの方がいいという方が多いと思うけれど
僕の趣味からすると、はやぶさ号のような列車ならB寝台も悪くないと思う。
車両の重さの関係かな、Bソロよりも乗り心地がいいような気もするし
それに、いろいろな人と出会えるし。
のんびりとした九州のひと、この車両に乗り合わせた方々は穏やかに
お国言葉で話すひとばかりで、乗った時から九州みたいだし...
出会いは旅の面白さのひとつだし。
個室がいいって言うひとはたぶん都会人なんだろうな。
僕のような田舎者には広いB寝台もいいかな、
まあ、乗り合わせたお客さんによるけれど。

もともと、はやぶさ号はお国列車、秋田の「あけぼの」みたいな列車だ、
そんなフウに聞いてた通りの感じだった。

熊本を過ぎて、ゆっくりスピードを落として走ってる客車の
下段寝台、空いているから長椅子で足投げだして海を見ていると
本当にきれいな海、イルカウォッチングができる海だな、と思う。

昼過ぎたから、さっき仕入れておいたシュウマイ弁当で腹こしらえ。
昨日の夜の焼きたてパンはもうとっくにない。
「山男は最後の食料は残すんじゃないんか」なんてS君にからかわれそうだけど
いいんだよ、山じゃないんだから、ここは。
海だから遭難の心配もないし。

海岸沿いをゆっくり走るはやぶさ号に乗っていると、この線路がいつか新幹線に変わる
のかな、なんて事が信じられない。
ずっと、いつまでもこのまま走っていてくれたらな、と考えた。

八代を過ぎて、水俣に着いたのは午後1時を少し過ぎた頃だった。
結構な都会みたいだけど
走り始めるとすぐにまた海辺のローカル線の旅みたいだ。

まだあと2時間かなとごろりと横になった。
この車両にはお客さんは10人くらいで
僕のボックスは誰もいなくて、だからとってものびのびできる。

いつも空いてるのかな?


次の駅は出水だけど、これはいずみ、と読むらしいと
昨日の夜の車内放送で知った。

先頭はどうなってるのだろと、1号車へ歩いていったけれど
立ち入り禁止で中には入れなかったからちょっとがっかり。
先頭は発電器を積んでいるので、危険だからと車掌さんは言っていた。
展望車でもあると楽しいんだけど。

次の駅は阿久根、ニキビを作るバイキンみたいな名前(w)
おっと、そういう事は言ってはいけないそうだから訂正訂正。
1時45分、そろそろみんな飽きてきたのか、廊下で遊んでる子供、
絨毯の床で猫みたいにじゃれてる小さい子、「これ!」と叱るお母さん、
通路の補助椅子でタバコ吸ってるおじさん、
上段で寝てるおばさん(いいのかな)と、ちょっとダレ気味。
僕は、リュックにテニスボールが入っていた事を思いだして
廊下で遊んでいた子供のひょい、と投げてみた。
子供はびっくりして床に転がったボールを拾って僕に投げ返そうとしたが
母親が「だめよ」と静かに窘めたので...
ちょっかいには乗らないで(残念)僕のところへ歩いて返しに来た(笑)
おばさん、ごめんね。

もう午後2時を過ぎてちょっと疲れてきた。
僕は富士から乗ったけれどそれでも昨日の夜8時からだからもう18時間で
東京から乗っている人(いるのかな)だったら20時間以上だから
退屈なんじゃないかな、とも思う。でも、僕は鉄道旅行が好きだから
こんな時間の過ごし方は大好きだ。
次の駅は川内、(センダイ)とは言っても仙台じゃあない。
牛タン弁当は売ってない(笑)。
ちょっと山あいという雰囲気の駅。途中下車してみたくなるが、まあいいか。
あとで戻ろう。
串木野からまた海岸沿いをちょっと走り、また山手へ入ると伊集院。
光、と続けたくなるけれど(笑)TVの見過ぎかな。


谷間の抜ける、という感じで海と町並みが見えてくるともう終点。
最後はあっという間という感じで西鹿児島には3時すこし過ぎたあたり。
ほんと、南国...で、蘇鉄(かな)が長い葉っぱを揺らしている。
目の前の大きな桜島、きれいな花が咲き乱れ...
女のコもカワイイ(笑)
鹿児島はとってもいいところ。
さて、3時だからオヤツかな...と、僕は旨いものを探しに行くとしよう。
別ルートの二人と落ち合うのはまだ先の話、だ。

(1997年10月)


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