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[東京-西鹿児島1500kmロング・ラン〜寝台特急"はやぶさ"5列車〜(後編)]
食堂車
しおりを挟むさて、食堂車に行って見ると、放送を聞きつけたのか乗客、多数。
椅子に座って徳山到着を待っている。
ランニング・ノッチからノッチオフ、特急らしくスムーズにブレーキングをし、
徳山駅に場内進行した5列車、車窓から見えるホームには台車に載せた弁当の山。
やはり車内販売は便利である。
食堂車に搬入された駅弁の山が食堂車のカウンターに出されると
次々に売れてゆく。
普通の幕の内タイプのほうが若干売れ行きが良い様子。
徳山というとあなご飯弁当が名物だが、朝食だからという事か。
徳山駅弁当、というごく普通の幕の内を求め、S君とふたり、食堂車で頂く事にする。
テーブルクロスもカーテンも無い食堂車はどこか学生食堂のように簡素に見え
それでも旅客たちの表情は明るく、楽しげに暖かい駅弁を食している
その情景に過日の食堂車の雰囲気をふと、思いだして見たりもした。
私が駅弁の写真などを撮っていると、向かい側のテーブルでは高級アマチュア用
ビデオカメラで同じく、ビデオ撮影しているグループが居る。
機材の感じからプロではないだろうと思ったので声を掛けて見ると
彼らは趣味で映像作品を作っているグループで、今回は鉄道の旅をテーマにしている、
との事であった。
S君の持つ旧式なニコンのカメラに彼らは興味を惹かれた様子なので、ちょっと触らせると
金属の感触が良いですね、との感想であった。
鉄道好きとカメラ趣味はどこかで似たような趣向になるのであろうか。
それから、互いにカメラと機材の話、鉄道旅行の話題などで盛り上がる。
と、そこにK君、眠そうに現れて、僕らの様子に目を白黒(笑)
どこの取材チーム?と寝惚けていた(笑)。
いや、あまり立派なTVカメラだったから、と...
皆で笑い合う。
和やかな雰囲気の中、レールの響きも軽やかに「はやぶさ」は
瀬戸内の海を横目に快走を続けている。
食堂車に集まった旅客はというと、個人旅行風の老夫婦から中高年、
子連れ40代夫婦、鉄道ファン風ひとり旅...
個室B寝台の乗客は若者が多かったが。
グループ旅行だとB寝台開放車両は楽しいと思うが、ひとりだけのK君に
居心地はどう?と聞くと、割と静かでよく眠れました、との談。
個室B寝台よりも空間が広いから開放的で良かった、ただ、20系の頃と違い
カーテンがマジック・テープでしっかりと止まるので盗難の心配も減ったのはいいが
密封されるのでしっかり留めると暑い、との事(笑)。
それなら583系や開放A寝台のようなスタイルの方がいいか?と聞くと
あれも最近はベルクロでしっかり留めるので、夏は暑い、冬はいいけど、
との事。
それ故、きちんとカーテンを留めない乗客が多くて結局防犯効果も半減だ
とK君。
まあ、用心深いに越した事は無いが...
というと頷くK君。
山男らしく無いな、と言うと、いいえ、それは見た目のイメージです、登山をするには
用心深く無いと駄目です、とK君。
なるほど、そういうものか、と可笑しかった。
確かに、里山歩きなら兎も角、険しい岩肌に張り付いて縦走、なんて時は
そういう性格でないと危険だろう。
人は見かけによらないものだな(笑)と言うと、それはお互いですよ(笑)と..
彼は笑う。
----memo-----
その話題の主のB寝台カーテンだが、かつては普通の家庭用カーテンよろしく
吊りフックと留め金で空間を仕切っていたが、現在のそれは外周が全て
マジックテープで留められるようになっているから、すべて留めれば
完全に空間は仕切られるし、仮に隙間から手を入れようとしても
マジックテープがバリバリと音を出すから、これが防犯効果としては有効だろうと思う。
実際に寝台に横になって、カーテンの合わせ目、寝台との接合部をすべて留めると
これが意外にしっかりと仕切りとして機能し、夜間など寝台の外に出るのが面倒になる
ほどである。
静粛な深夜の寝台車に、マジックテープの剥がれるバリバリバリ...という音を響かせて
出入りするのは気が引けるので、筆者などは寝台の仕切を開けたまま寝ていたりした。
その代わりウェストバッグを胴巻きにして寝たが(笑)。
------*---
さて、話込んでいるうちに列車は宇部に着く。
7:57分、もうそろそろ朝ラッシュの時間、とはいえ、食堂車でのんびりメシ食っている人間は
通勤客には目障りだろう...と思いきや、それほどの人出でも無い。
よく考えると連休である(笑)。
ホームに立つ人たちの表情もどこかにこやか。
宇部、というとセメントで有名な土地であるから、お約束のように貨車が
構内に多数、留置されている。
近年では貨物列車の殆どがコンテナ貨車なので、黒い貨車が居並ぶ風景は
少々懐かしく思える。
車窓からの風景もどこか、のどかになってきて旅行らしい雰囲気。
中国地方とはいってもchinaではなく(小学生の頃は本当にそうだと思っていたが)
サンヨウといっても電気屋さんでもサッポロ一番でもなく(笑)
山陽本線をひた走るEF66、さて、下関はもうすぐ。
あと30分ほど。
定時運行ならば8:34着、8:39発。
東京よりおよそ1100km、本州を走破....
日本の鉄道ダイアの正確さは世界一と言うが、実感する。
これほどの長距離を走ればいろいろと障害もあるとは思うが..
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