旅と鉄路

深町珠

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〜24系25形"はくつる"11列車〜 2002/11

[trouble again]

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[trouble again]

さて、運転士の苦労の甲斐あってか、11列車は盛岡までにはほぼ定刻で運行となった。
上野発車時の30分遅れを回復したのは見上げた努力だが、ご婦人の希望が叶えられて
車掌氏もやれやれ、といったところであろう。
だが....
不運にもこの日、東北地方に地震が発生して11列車は抑止、再び遅れが発生する。
車内放送で地震の発生が告げられ、一瞬ざわめきが走る。
ほとんどの乗客が帰省客とあって、緊張感は感じられないが
乗り継ぎ列車の運行を気にしている方少数あり。
ローカル気動車で本数が少ないために、乗り遅れたら大変だと車掌に状況を聞いていたが
接続列車も運行停止、との返答に、複雑な表情をされていたようだ。
信号停止、駅停止、徐行...と、
回復運転をしようにも徐行指示ではままならぬ。
どうやら、路盤の安定を確認しているようであるが....
さすがに地震では、車掌に苦情を言う乗客はいないが
駅、指令よりの連絡などに鉄道無線は忙しそうだ。
食堂車も車内販売もないこの11列車では無卿の慰めもままならず..
上野発が22時過ぎ、青森着が8時そこそこという時間帯では不要、と見たか。
列車の中で食事をするのは割と楽しいものなのだが、駅弁の味すら
最近ではほとんどデパートの催事場の味、と思っている子供も多いのではないか
と思う。筆者などは、蒸気機関車の煙の匂いが混じった風味?の駅弁は
「汽車弁」と古くからの鉄道ファンが言うように、特別の味わいだったし
今の子供たちにあの味わいを体験させてあげたいと考えたりもする。
蒸気でなくとも、食堂車の朝食、夜行寝台特急で過ごした特別な朝
という情景に空気の澱んだ寝台車での持ち込み弁当では少々味気ないか、とも思ったりもする。
もっとも、母親の手作り弁当ならばそれは別の意味を以て想い出となるだろう。
この11列車でも、車内を巡回して見るとそのような家族連れの微笑ましい光景
に出会ったりしたが、信号抑止もまた楽し、という雰囲気であったりもし
家族というのは良いものだ、と感じる。


運転再開後もしばらくは徐行指示が続き
運転打ち切りも危ぶまれたが、辛うじて運行再開。
岩手県から青森県へと入るあたりは山間部となるが、ひと山越えるという線区であり
かつてのディーゼル特急「はつかり」のキハ80系などはこの峠で排気管の過熱に起因する故障
が多発したと聞く。
それほどの急勾配には今は思えぬが、当時この「はつかり」に乗務していた車掌の談では
この「はつかり」乗務は大変だったそうだからすぐに改良型が投入されたのも頷ける話だ。
非電化の時代にはこの「はくつる」もディーゼル機関車の重連であったそうだし、
無煙化以前の時代にはエネルギー効率の低い蒸気機関車では相当のご苦労があった
だろう。
....そんな山岳区間をいとも容易く駆け登るEF81は、本当に赤鬼のような存在に思えてくるが
頼もしい"鬼"である。


東北本線全線電化が完成したのは昭和43年10月の事であるが
その立役者といえる583系電車は、電化以降の東北線のもう一人のスターである。
しかし、もとは山陽本線特急仕様だった581系の改良型であるためか、この東北路では
寒冷地に起因するトラブルが多く、ディーゼル特急の頃の「はつかり」と同じ列車名のため
不運なイメージの「はつかり」であった。
電動電源の故障、床下機器への雪詰まりに起因するトラブルなどが多かったそうで
不動となった583系を機関車が牽引して青森運転所に運び、夜を徹した改修、補修..
その為にはまず床下に凍り付いた雪を溶かさなければならず、日夜オイルヒーターの
炎が絶える事のない初年度で、検修掛が列車に同乗して上野に向かい
尾久区で修理であるとか、とかく雪に弱い電車というイメージが当時の583系には
つきまとっていた。
山陽路でも降雪はするのだから不思議なものではあるが寒冷地故に
山陽本線で散見された熱に起因するトラブルが見られなかった事はもっけの幸いであったと
当時を知る方はそう述懐する。
山陽本線運用で一番問題になったのは発電ブレーキの放熱風がブレーキエアタンク
に当たるためにエア圧が上昇、ブレーキが緩まなくなるというもので
東北本線運用ではこの現象は発生しなかったようであるが、どうやら寒冷地の為、
それと線形の違いが理由かと思われる。
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