Lotus7&I

深町珠

文字の大きさ
上 下
53 / 56

テストコース

しおりを挟む
リカルドの主張は、的外れなもので
僕ら、研究者チームは理解に苦しんだ。

燃料+空気=>混合気=>爆発=>排気。

爆発エネルギー=>クランク=>回転力変換

回転力+モータアシストトルク=>駆動


この、結果の駆動力が
シミュレーションと、実物エンジンの誤差が大きいので

誤差を空気モデル・パラメータで誤魔化して似せる、と言う・・・・。



そうではなく、部分・部分で誤差を減らすのだと言っても
面倒がって行わない。


MILS、環境変数の物理的妥当性が無ければ
誤差が減るわけはない。


好きで研究をしていれば、それは楽しくて仕方ない作業だから
リカルドの連中は、研究者と言うよりはメカ系技術者なのだろう。

「それなら、全部をこちらに任せ、口を出さないでほしい」と、僕が言うと
不満顔。


エンジン・コンストラクターはこっちである。


リカルドのひとりが、携帯電話でどこかに掛けて、指示を仰いでいる。



バラバラバラ・・・と、ヘリコプターの音がする。


なるほど・・・・仮に、ここに居なくても
ヘリでどこからか飛んできて、何れかに去ることも出来る。





ふと、ヘリの音が止むと・・・。

リカルドのひとりの、話し声が
建物のどこかに反響しているような・・・そういう響きが感じられた。



この建物のどこかに、電話の相手がいるのだろうか?


そういえば・・・・内線8-21-4219と言う
不吉な番号は、所在不明であった。



噂では、その部屋は
事故死したドライバーの一時的霊安室、だとか

スパイを拷問し、死んだものの行き先・・・だとか。

実際、この研究所には
ストレッチ・ワゴンのエスティマ霊柩車があり
時折、隣接する火葬場に出入りする事がある。



僕は、その辺りを空想しながら、お座なりに打ち合わせを過ごした。

F1エンジンの加速性能を向上するために、モータ|ジェネレータを
クラッチで断続するべきだ、と言う僕の主張は無視されたままだったから、もあるが

この建物のどこかにあるのだろうか、その・・・・4219の部屋は。

そのことが気になっていて。


この会議室の電話番号は、4322である。


会議が物別れに終わり、僕は部屋を出て
ちょっと、3階に上がってみた。

同じような部屋が連なっている。


あまり不審な動きをすると、警備にマークされるので
すぐに2階に戻る。

真知子は、ふわ、と微笑み「なにしてるの?」


柔らかい表情をするようになったな、と
僕は思った。


階段を下り、1階に行った。

長い廊下があり、左右に小部屋が幾つかあるが・・・・。
その奥に、なんとなく洞窟音がする空間があるような・・・そんな気がした。

プレハブ小屋のような、この建物に
地下通路?

かもしれない。


テストコースなら有り得るな、と思った。


真知子は、そんな僕を不思議そうに見て「何、考えてるの?」と・・・
親しげな言い方をした。

若い女の子らしいな、と思った。


わたしのものなのよ、と・・・言っているかのようだ。


そう言う事を言わない夏名は、いい子だなと思った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ほのぼの高校11HR-24HR

深町珠
青春
1977年、田舎の高校であった出来事を基にしたお話です。オートバイと、音楽、オーディオ、友達、恋愛、楽しい、優しい時間でした。 主人公は貧乏人高校生。 バイト先や、学校でいろんな人と触れ合いながら、生きていきます。 けど、昭和なので のどかでした。 オートバイ、恋愛、バンド。いろいろです。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

僕は 彼女の彼氏のはずなんだ

すんのはじめ
青春
昔、つぶれていった父のレストランを復活させるために その娘は 僕等4人の仲好しグループは同じ小学校を出て、中学校も同じで、地域では有名な進学高校を目指していた。中でも、中道美鈴には特別な想いがあったが、中学を卒業する時、彼女の消息が突然消えてしまった。僕は、彼女のことを忘れることが出来なくて、大学3年になって、ようやく探し出せた。それからの彼女は、高校進学を犠牲にしてまでも、昔、つぶされた様な形になった父のレストランを復活させるため、その思いを秘め、色々と奮闘してゆく

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...