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熊
しおりを挟む「そうだろ、お笑いもんだよな。」
S12は、仲間に会えた安堵からか、相好を崩して。
「で、どうする...?」
「そうだな、とりあえず家にこいつを置いてきて、これ、捨てちまうから手伝ってくれよ。」
「オーケ。!」
クマは、運転席によじ登り、スターターを入れた。
オイル煙と共に、力強く5.7litter V8unit は目覚めた。
その、力強さを何よりも頼もしく感じる、S12の彼、だった。
街道筋をゆっくりと走り、彼は友人の“熊”の後について。
高校時代の友人というのは、どうして長い付き合いになるのだろう。
などど、彼は当時の自分を顧みて、思うのであった。
急成長した昭和の時代。
彼の家の周辺も、今や近代的なバイパスが通過し、
すっかり地方中核都市の様子。
...俺が生まれた頃は、この辺も田舎だった。
田んぼに水が入ると、蛙が鳴いて賑やかだったっけ。
飼っていたでかい秋田犬の背中に乗って、庭で遊んだよな....。
庭、そのものは今もその頃の面影を伝えてはいる。
犬のいたあたりの地面を見ると、硬い毛の感触を
思い出し、ふと郷愁に駆られたりもした。
しかし、今では周囲はコンクリートの構造物が立ち並ぶ
暑苦しい商工業地域、になってしまっている...。
彼の故郷は、もうどこにもないのだ。
バビロン、悪徳都市。
ボブ・マーレィは、近代都市のことをこう呼んだ。
これは、宗教的な概念からの発想だが、
本当に、そうかもしれないなどと、彼は柄にもなく
そんなことを思うのである。
壊し続け、作り続けなくてはならない自分の仕事を鑑み
それが正しいことなのかどうか、とか。
しかし、彼もまた普通の人間であり
工業製品であるマシーンに魅せられ、化石燃料を無駄に
消費し続けなくては生きていけないという「病気」にかかっている。
そのふたつの事柄に矛盾をかんじることはない。
もともと、人間などというものは論理的な生物ではないのだ。
いや、論理的生物などというものこの世には存在しないのだ.....。
破壊しつづけ、戦いあうのが男の性である。
兵器としてのマシーンは、美しく、危険に満ちておりあり
それ故、妖しく魅了する存在なのだ....。
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