バス・ドライバー日記

深町珠

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いつしか、雨も止んでいた。

立野駅の豊肥本線ホームの端っこは、屋根がないので

友里絵は、空を見上げて。「雨止んだね」と、にっこり。

雲が、真っ白。


ケータイで、メールを打とうとした友里絵。


放屁ほんせん、と出てしまって。「臭いじゃん」と、ひとり怒る(笑)。

変換しなおし。

包皮本線、と出るので「皮かむりかい」(^^)。


ケタケタ笑っている。


由香「ひとり上手なやつ」(^^)。

友里絵「ひとり遊びと言わないでー♪」(^^)。

由香「いつもひとりで指アソビ」

友里絵「それはあたしのセリフ」


菜由は「まあ、誰も居ないからいいか」と、思っていたら
崖の上が道路で、バスが停まってて。

タクシーのおじさんたちが聞いていた(笑)。

「おもしろいお嬢ちゃんじゃのー。」



そのうちに、坂を登ってくる列車。

ゆっくり、ゆっくり。

煙を吐いて。

しゅっ、しゅっ。


友里絵は「あ、来た!」

黒い機関車は、ゆっくり、ゆっくり。

しゅ、しゅ、しゅー・・・・。
煙を吐き出しながら。


58654、と書いてある。


友里絵は「従業員番号みたい」と、仕事を思い出した。


由香「何番だっけ?」朝、アルコール検査するとき打ち込むのだ。

友里絵は「201254」

由香は「そう。あたしは201253」


友里絵「一緒だね、愛紗は?」

愛紗は「201185」

友里絵は「それだけしか違わないんだねー。一年違うのに」


菜由は「ああ、いろいろあるからじゃない?ガイドってその頃から契約になったから」


友里絵「なるほど。タマちゃんは因みに509037だった」


由香「覚えてるのもすごいなー。算数はダメなのにな」


友里絵「ダメじゃないよー。九九くらいは出来る」

菜由「そりゃできるよ。小学校でやるもん。でも使わないね」


由香「ほんと。電卓があるもんね」


愛紗「なんで、深町さんだけ50---なのかな」


友里絵「知らなーい。契約だからじゃない?」


菜由「なるほど」


由香「正社員にならない、ってあたりがあの人だね」


友里絵「でも最初は、3年たったら正社員になるつもりだったんだと」


菜由「でもアレでしょ。ゴジラが迫ってきたから」

友里絵「そうそう」

由香「他にもいたしな。」


菜由「ゴジラvsキングギドラか」


いっぱいいたもんなぁ、そういえば。と
みんな笑いながら


「タマちゃんはあたしのもんだもーん」と、友里絵。


由香「そうだよね」

列車は、1番線に停まる。島式ホームの山側。

これから、スイッチバックを登って。
阿蘇山へと向かうのだ。









真由美ちゃんは、折り返しの吉松駅。

なんにもないので(^^;

制服で、駅前にいると
仕事になっちゃうし

事務室にひっこんだ。



「こんにちはー」と。


駅長さんは「ごくろうさーん」と、のんびり。
かわいい女の子には優しい(^^)。


事務室の端っこにある椅子で、バッグの中のケータイを見ると

友里絵の返信。

「この人をコイビトにしちゃえ!」って(笑)。


真由美ちゃんは「愛紗さん」と。


そういえば、オスカルの写真、みてないなー。
そう思って。

お兄ちゃんの写真を添えて


「愛紗さんのオスカル姿、作れますか?」


と、お茶目な真由美ちゃん。


「あ、そろそろ列車」


折り返し20分なのだ。











お兄ちゃんは、その頃・・・・。
福岡貨物ターミナルで、のーんびり。

貨物のダイアは余裕がある。遅れるからだ。

台風なんかがあると、その代わりにせせこましくなるけど
今は平気。

のんびり休める。

帰りも、おまけに客車回送だから、荷が軽い。


ごはんを食べて。


休憩室に行った。


休憩室は、仮眠も出来るようになっているので
静かだ。

「その代わり、寝過さないようにしないとな」と。

ベッドのタイマーを掛けた。


これは、有名な仕掛けだけど
ベッドが、時間になると起き上がる。

セットし忘れたら終わりだが(^^;


何しろ朝4時に起きると・・・・10時だと
そろそろ、眠くなる。

自然の摂理である。



「少し寝るかな」

細切れに寝るのが上手になる、この仕事。



(因みに、路線バスもほんとはこういうダイヤだったが・・・・
近年は、その昼休憩を45分しか取らないところも多い)。









恵は、どうやら人吉駅に着いたものの。
裏側だったので
ぐるーっと回って、結局踏み切りまで回ることになった。
柵を乗り越えちゃえ!と思ったが

さすがに職員である。そういう事はしたくても、できない。



「やれやれ・・・・。」



楽しい休日である。

酔っ払って、人の家に転がり込んで。
縁談を持ち掛けられて、逃げて(笑)。
崖で遭難しかけて。熊に食われそうになって(?)
犬に救われた。

「寅さんかいな」(^^)。



明け番ー公休ではないので
明日はまた、乗務である。


「こんな生活じゃ、恋愛どこじゃないね」と・・・・いいながら。

てくてく歩いて。


「あー!なんでこの駅、裏口ないのー!」と、叫びたくなる(笑)。

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