バス・ドライバー日記

深町珠

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奪っちゃう!

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すると・・・
発車時刻の少し前になって、彼方に停まっていたのか
マイクロバスより、ちょっと大きい、一応路線バスっぽい車体の
バスが、停留所に来た。

町営バスである。

愛紗は「なーゆー、ゆりえー、ゆかー」と。呼んで。

みんな、駅から出てきて。

友里絵は、また、お菓子の袋を抱えて(^^)。
由香は「もーすぐメシだってば」と、お菓子の袋の中身を見る。
カレーせんべ、ジェリービーンズ、まめ。さっきの黒糖麩菓子。
パンもある。
友里絵は「いいの。お菓子は別バラ」と、にこにこ。

「パンがいっぱいあるじゃん」と、由香。
友里絵は「いーの!食べるんだから!」
「パンデミックだろ」と、由香。

友里絵「なにそれ?」

由香「さあ・・。」

友里絵「わからんで言っとるんかい!」と。逆張り扇ちょーっぷ(^^)。
菜由は「太るぞー」

友里絵は「いーんだもん。タマちゃんは
女の子は太ってるくらいで健康なんだ、って。」
声マネ。(^^)。


菜由は「まあ、そうだけどさ。いつまでも女の子じゃないよー。すぐ
オバサン」

愛紗は「もうオバサン」

菜由は「あたしのこと?」

愛紗は「そんなこと言ってないって」


と、バスに乗り込んで。前払い100円。


友里絵は「あー懐かしい、100円バス」
由香は「団地のとこ走ってたね」
愛紗は「そうそう。市民病院のところを回ってて。」
菜由は「メルヘンみたいな絵でね」

愛紗は思う。もう、遠い思い出のようだ。
旅してると、忘れるって本当かもしれない。

バスは、すぐに発車。
駅前の狭い道を、ゆっくり登って。結構な坂道だ。
公民館のようなところに寄って。夕方だから誰も乗らない。

それもいいけれど、駅からも誰も乗らなかった。
おそらく、列車で通勤・通学している人が少ないのだろう。

駅前通りは三叉路に当たって、左に行くと温泉館とか、ゴルフ場、KKRがある方なのだけ



今日は遅くなってしまったので、逆回り、役場先回りの最終バスである。

終バスが17:30と言うのは、楽だな、と愛紗も思う。

一番後ろのシートに4人乗ったので「バス運転士募集」の広告が見える。

友里絵は「いいねー。愛紗、ここにしなよ」

由香は「さっき国鉄にしなっていったじゃん」


友里絵は「じゃ、国鉄が落ちたら」


菜由は「それじゃ滑り止めみたい」と、笑った。

友里絵は「悪いじゃん、運転手さんが滑った先みたいで」

由香は「アホ。でっかい声で言うな」


運転手さんはにこにこ「滑っちゃった」


菜由は笑って「ノリのいい人だぁ」




愛紗は「由布院営業所なら東山だから。転属願いでいいの」


と、ひとりマジメ。



ちょっと、旅している気分から、出発前の気分を思い出した。
けど、暗鬱にはならなかった。

考えても仕方ないもの。出来る事をすればいい。
そういう気持になっていた。


バスは、ゆっくりゆっくり。
高森町役場のところに。閉庁後だから、中には入らずに前を通る。
柱に当てそうで怖いな、と愛紗は思った(^^)。








熊本駅の地下道を、おばあちゃんと一緒に、ゆっくりゆっくり歩くお兄ちゃん。

駅員さんが「あれ?なに、日光君?駅員になったの?」

お兄ちゃんは、違う違う、と手を振って、にこにこ。


おばあちゃんは、おミミが遠いらしい「すまないねー」と、にこにこ。

お兄ちゃんは「はいはい。」と、にこにこ。

ゆっくりゆっくり。歩いて・・・エレベータに乗って。


地下道は、割と広い。
大きな階段と、エスカレータが改札の方面に向かってあって。
右手の奥に、エレベータ。

お兄ちゃんは、ふと思う。


・・・真由美のやつ、何しに来たんだ?(笑)。


元々は、お別れが淋しいところを
友里絵が連れて来ちゃった真由美ちゃんでした(^^)。


かっこいいお兄ちゃんに会わせてー、って。

お兄ちゃんは、さて、どの子が気になったのか(?)。







その頃ーーー。
急行「球磨川7号」は、快適に進んでいる。
夕方になって混むと、疲れるし。

恵と、真由美ちゃんは
ボックス席の対面に掛けて。

ネクターを飲んでいる。


かたたん・・・かたたん・・・・軽快に走るディーゼル・カー。

恵は「リクライニングだといいなー。」なんて、口調が柔らかくなる。
ちょっと、可愛らしい。凛々しい雰囲気との違いが、とても。
そう、真由美ちゃんは思う。微笑んで。

恵は「年かな」と、笑うので。
真由美ちゃんは、微笑む。「一日立ってますから」

恵は「そうよね?って、言うあたりがもう・・・お・ば・さ・ん」と、いたずらっぽく笑う。

ネクターの缶を、弄びながら。窓際のアルミサッシ枠に置いた。
小さいテーブルが、付いていて。
その下に栓抜きがある。

元々灰皿があった場所は、外されてネジ穴を丸ネジで埋めてある。

真由美ちゃんは「私も・・来年は21ですから・・お・ば・さ・ん(^^)。」
と、笑う。

恵は、かぶりを振って「真由美ちゃんは、ずーっと。かわいい妹でしょ。」

真由美ちゃんは「そうですか?」

恵は「お兄ちゃんがね、可愛がってくれるから、可愛くなるの」

真由美ちゃんは、ちょっと考えて「お兄ちゃん、あんまり帰ってこないの」

恵は「いいなー。わたしもお兄ちゃんほしかった。」

真由美ちゃんは「貸してあげます」と、いたずらっぽく。

恵は「いや、奪っちゃう!」と、少女みたいに。
真由美ちゃんは「怖い怖い」
ふたり、笑顔。

そろそろ、暗くなってきた鹿児島本線を、列車は南へ向かうーーー。
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