バス・ドライバー日記

深町珠

文字の大きさ
上 下
287 / 328

たーま、たまたま?

しおりを挟む
ゆっくりゆっくり、高森線ディーゼル・カーは走る。

♪おてもやーん♪の、オルゴールが、なんか、和める。

「おてもやんってさ、この辺りの歌だっけ?」と、由香。

「さあ」と、友里絵。

由香は「友里絵には聞いてないって」と、にこにこ。(^^)。

友里絵は「あーサベツだー。悪いヤツだー。帰れ!帰れ!かーえーれ!」

菜由は「帰ってるじゃん、あたしら。みんなで」と、にこにこ。

友里絵「そーなんだよね。それ考えると悲しくなるなぁ」と、ちょっとしょんぼり。

愛紗が「おてもやんって、かわいい女の子のことでしょ?ほっぺが赤くて、にこにこの」

友里絵は「あたしのこと?」と、ほっぺたに両指、にっこにこ。

由香が「女の子って年かいな。ちっちゃい子だよ。3つか4つか。」

菜由は「かわいいよねー、そのくらいって。」
と、思い浮かべるのは・・・。


友里絵が描いた、石川の顔に菜由の髪の女の子だった。

菜由は「・・・・なんか、思い出したら気分悪くなってきた」(^^;


友里絵「なんか、酸っぱいもの食べたいとか?」


由香「アホ」


愛紗は「まあ・・・ありえなくはないけど」


友里絵は、とととと・・・と、歩いて、さっきのニャンコのところへ。

トラトラのニャンコ。
けっこう太ってて、まんまる。

友里絵が撫でても、平気。「なーご」と。頭をすりすり。


さっきの「らら」ちゃんが、とことこと。。。と来て。

白い夏服。ブラウスみたいなものに縁取りが、紺色の。
中学校の制服みたいな感じ。

「たま、たまー」と、ノラちゃんの名前を呼んで。

たま、は、ららちゃんの方を見て。起き上がった。

伸びをして、「なーご・・・。」

友里絵は「ららちゃんの猫?」

ららは、「ううん、ノラちゃん」と、にこにこ。たまを撫でている。

友里絵も「たーま、たまたま?」

ららちゃんは口をおさえて「うふ。たまたまじゃないよ」と、笑った。

白いソックス。紺のスカート。
さっぱりした短い髪。


友里絵は「一年生?」


ららは「はい。この春から」と、にこにこ。制服もそういえば、新しい。

ららは「ゆりえさんは何年生ですか?」

友里絵は「えー、あたし?と、自分の顔に指をさして。」

ららは、首をこっくり。「はい。あたし」


友里絵は「もう卒業したの。20才」と、にこにこ。


ららは「びっくりだー。3年生かと思った」

友里絵は「高校生にみえたか」と、にこにこ。


由香は遠くから「まあ、頭の中身は・・・そんなもんかな。」と。右手で髪を。
菜由は「ははは。そうかも」と、ひとさし指で頬をかりかり。
愛紗は「かわいいもんね。私達は、高校生には見えないでしょうね」と、にこにこ。


由香は「愛紗はさー、体は高校生で通るよね」と、にっこり。

菜由「なんかいやらしいなぁ、その言い方」と、訝しげな顔。

愛紗は「心が、アレね」と、にっか。



由香「そんなことないって。体が綺麗だって言っただけ。」と、マジメに。


菜由は「あたしは汚れてるわよ、どーせ」と、ふざけて。


愛紗は「それも考えすぎ」


菜由は「そっか」と、笑う。


単行ディーゼル・カーは、白川鉄橋を渡る。

昼間だったら峡谷が見えるけど、今は夕方なので薄暗くて何も見えない。


がこーん、がこーん・・・と、鉄橋を渡るディーゼルカーの音が響くだけ。

「昼間見たいね」と由香。

菜由は「明日、下ってくるから」

愛紗は、ふと思う。

・・・・何しに来たんだっけ?(笑)。
今日、水曜日。


運転席の隣では、ららちゃんとゆりえちゃん(^^)が
楽しくお話をしながら。
にゃんこと遊んでいる。

ららちゃんは「お家にも、にゃんこが居るの」と、にこにこ。「まだ子猫なの」と。
にっこり。

友里絵は「子猫、かわいーよねー。」と、にこにこ。

ららちゃん「うん!」と、にこにこ。




駅を、いくつか過ぎて。

ららちゃんは、友達ふたりと降りていった。
「ばいばーい」。

友里絵も「ばいばーい」と、手を振って。


由香が「可愛い子だったね」

友里絵は「うん。熊本の方の高校に通ってるんだって」

由香は「ふーん。大変だなぁ」と、ちょっと気にして。

菜由は「そーかぁ、そういう事も考えないと・・・。」と、マジメな顔。

愛紗は「子育ての話?」と、聞く。

菜由は「そう。」と、当たり前な顔で。



友里絵は「まあ、石川さんが九州に来るって言えばの話よね」

由香は「鋭い」と、はた、と。


菜由は「そうなんだけど、石川は整備士だし。東山のコッチの工場だって転勤出来るでし

ょ?」


愛紗は「結構現実的に考えてたんだ」と、ちょっとびっくり。



単行ディーゼル・カーは、かたこん、かたこん・・・と、駅に着く毎に人を降ろして行って。

阿蘇下田あたりまで来ると、愛紗たちのほかには数人、位になった。


にゃんこは、まだ乗っている。運転士さん、通路、その隣の窓で

寝んころりん。


足を舐めて、毛づくろい。




由香が「あれ、逆立てると怒るんだよね」(^^)。


友里絵が「そうそう、でもかわいそうだからやらない」


菜由は「優しいなあ」





友里絵が「あの猫ね、たまちゃんなんだって」


愛紗は、もう、その名前を聞いてもドッキリしなくなった。
そのことに、愛紗自身が少し、変化を感じていた。

ひとりでいると、ヘンなことばかり考えるのかな。









一方の熊本駅3番線。急行「球磨川7号」湯前行きが
出発時刻。

夕方、平日。なので、人吉方面に行く人はほとんど居ない。

熊本まで通勤する人は、この辺りには居ない。
熊本付近、例えば豊肥本線沿線とかに引っ越してしまった方が楽だから。

そんな理由で、空いている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ふわ・ふわ

深町珠
現代文学
やさしい、かわいい、たのしい、あかるい、うれしい、ふんわり、のんびり 「わたし」の日常を、ふんわり、毎日書いていました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

タビスルムスメ

深町珠
青春
乗務員の手記を元にした、楽しい作品です。 現在、九州の旅をしています。現地取材を元にしている、ドキュメントふうのところもあります。 旅先で、いろんな人と出会います。 職業柄、鉄道乗務員ともお友達になります。 出会って、別れます。旅ですね。 日生愛紗:21歳。飫肥出身。バスガイド=>運転士。 石川菜由:21歳。鹿児島出身。元バスガイド。 青島由香:20歳。神奈川出身。バスガイド。 藤野友里恵:20歳。神奈川出身。バスガイド。 日光真由美:19歳。人吉在住。国鉄人吉車掌区、車掌補。 荻恵:21歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。 坂倉真由美:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。 三芳らら:15歳。立野在住。熊本高校の学生、猫が好き。 鈴木朋恵:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。 板倉裕子:20歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。 日高パトリシアかずみ:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区、客室乗務員。 坂倉奈緒美:16歳。熊本在住。熊本高校の学生、三芳ららの友達・坂倉真由美の妹。 橋本理沙:25歳。大分在住。国鉄大分機関区、機関士。 三井洋子:21歳。大分在住。国鉄大分車掌区。車掌。 松井文子:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区。客室乗務員。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...