バス・ドライバー日記

深町珠

文字の大きさ
上 下
230 / 328

帰着点呼

しおりを挟む
ディーゼル・エンジンが少し、回転を上げて
排気ブレーキ。

車体が、ぐっ、と引き戻されるような感覚。

このあたりは、バスに似ている。


速度が20くらいで、機械ブレーキ。

ディスク・ブレーキなのは、電車よりも進んでいる。

摩擦式なので、結構金属的な音がして
スレートの屋根に響く。


運転士がブレーキ・ハンドルを戻し
停止寸前で、ちょっと、進める。


停止位置、よし!


「あー、着いちゃった」と、友里絵。


「まだのっていたい?」と、愛紗。


「うん。でも、お昼だし」と、友里絵。


由香は「真由美ちゃんは、これからどこへ行くのかな?」


菜由は「お昼休みじゃない?それか折り返し休憩」


愛紗は「朝早いもんね、たぶん」


友里絵は「なーるほど・・・。眠くなるもんなー。」


その辺りは経験もある。


乗務員だと、今時分はだいたいお昼の休み時間だろう。

まあ、特急の乗務が同じかどうかは解らない。


「真由美ちゃん、いるかなー」と、友里絵は
列車の最後部、車掌室へ。

真由美ちゃんは、乗降を確認していて。

友里絵に気づいて「あ、友里絵さーん!」と、手を振る。


にこにこ。


友里絵もにこにこ。「お仕事、終わり?」


真由美はこくり、とうなづき「はい。きょうは早番で調整勤務なんです」

由香「ああ、残業調整」


真由美はにっこり「そうです」






実働6時間でも、余ったり、足りなかったり。
列車ダイヤの都合で、次の行路が決められない時とか
それまでの稼動時間の関係で、少ない時間でも終わる事もある。

夜行列車の車掌などは、終夜勤務なので・・・
帰ってきてから2日か3日、休みになったりする。


バスの場合も同じだが、人手不足の為に

実働は7時間だったとしても、拘束時間が最大で16時間まで。
おおむね、残業が最初からついてくるわけだ。

また、稼動時間と言うのは
折り返しは含まれないので

路線バスなどは、結構損な行路もある。







「よかったね、おつかれさま」と、友里絵。


「はい。終わりましたー」と、真由美はにこにこ。
凛々しい黒いスーツも、どこかかわいらしく見える。


「みなさんは、どちらからいらしたのですか?」と、真由美は笑顔で。


由香は「箱根の麓のね。」


真由美は、びっくり「遠いですねー。ご旅行ですか?」


そのうちに、乗降時間が済んだので、真由美は
「乗降、終了!」と、指差し確認して
ドア・スイッチを下げた。


菜由は「うん。ちょっと、休暇が取れて。みんなで」


愛紗も自然に笑顔で「わたしは、ちょっと見物がてら」


真由美は「ちょっと、帰着点呼受けてきます」と、それだけ言って。

黒いバッグを持って。

制帽を被って。駅の事務室の方へ。



由香は「人吉の子かなぁ」


菜由は「そうみたいね」


友里絵は「ひと、よさそうだもん」


愛紗も「ほんと。かわいい」




4人は、肥薩線ホームの予備線に停まっている蒸気機関車を見ていた。

蒸気が上がって。熱い。

煙はそれほど出てはいない。

時折、機関助士が石炭をくべていたり。

「割と小型みたい」と、愛紗。

子供の頃、日豊本線で見たものは
圧倒されるくらいの大きさだったような・・・気がする。


菜由「それでも大きいね。生き物みたい」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ライオン転校生

散々人
青春
ライオン頭の転校生がやって来た! 力も頭の中身もライオンのトンデモ高校生が、学園で大暴れ。 ライオン転校生のハチャメチャぶりに周りもてんやわんやのギャグ小説!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

メモリーズ 〜遠い遠い昔、広島の遥か彼方で〜

MIKAN🍊
青春
1970年代後半、舞台は広島県のとある田舎町。高校3年の主人公高杉孝一は父と妹の3人でのんびりと暮らしていた。彼の悩みは自分が落ちこぼれ生徒だという現実。でも勉強は嫌いだし、なんだかつまらない。何か楽しいことはないのかな?とテレビと空を見つめる毎日だった。そんなある日、退屈さを紛らわせるため悪友と出かけたツーリングで憧れの女子と急接近する羽目に…。大学受験への焦りや不安。女子の出現によって変化していく友情。いつの間にか不良へのレールを加速し始める高杉。大人になった主人公が回想する形で描く古き良き時代の青春グラフィティ。笑いの後には涙が、涙の後には虹が出るかも?

青空の色

小鳥遊 雛人
青春
 高校の屋上、どこまでも広がる空。雨上がりの夏空は青く、太陽がキラキラと光る。  僕は青空を見るのが好きだ。傷ついた時も、1人の寂しい時も、青空はいつもそこにあった。そんな青は自分の悩みなんて、ちっぽけだと思わせてくれる。  どこまでも広がる澄んだ青空。もくもくと膨らむ白い雲。屋上に敷かれた緑の人工芝。そのどれもが僕の目には鮮やかで美しく見えた。  そんな青空の下、突然可愛らしい声が降ってくる 「ねぇ、君!」 彼女がかけている茶色のサングラスに陽光が反射する。 「今日の空は何色に見える?」 僕は、この日から──

土俵の華〜女子相撲譚〜

葉月空
青春
土俵の華は女子相撲を題材にした青春群像劇です。 相撲が好きな美月が女子大相撲の横綱になるまでの物語 でも美月は体が弱く母親には相撲を辞める様に言われるが美月は母の反対を押し切ってまで相撲を続けてる。何故、彼女は母親の意見を押し切ってまで相撲も続けるのか そして、美月は横綱になれるのか? ご意見や感想もお待ちしております。

例えば、こんな学校生活。

ARuTo/あると
青春
 ※学校が一回変わります。  ※底辺学校から成り上がります。  東京の地、『豊洲』を舞台に繰り広げられる斜め上の青春群像劇。  自意識過剰な高校一年生、夜崎辰巳(やざきたつみ)は底辺学校で退屈な青春を迎えようとしていた。  しかし、入学式に出会った男子生徒、壱琉(いちる)に誘われた『妙なテスト』により、彼の運命は180度変わる事となる。  ひょんな出来事で第二の高校生活を始める事になった主人公。『特別候補生』という一般生徒とは違う肩書きを付けられながらも、新たな地で次第に馴染んでいく。  目先の問題に対して反論する主人公。青春格差目次録が始まる。

美少女にフラれたらなぜかダウジング伊達メガネ女子が彼女になりました!?〜冴えない俺と彼女と俺をフった美少女の謎の三角な関係〜

かねさわ巧
青春
まてまてまて! 身体が入れ替わっているってどういうことだよ!? 告白した美少女は俺の好きになった子じゃなかったってこと? それじゃあ俺の好きになった子ってどっち?? 謎のダウジングから始まった恋愛コメディ。

処理中です...