バス・ドライバー日記

深町珠

文字の大きさ
上 下
215 / 328

たまて箱

しおりを挟む
フロントに、お礼を言って。
愛紗たちは、KKR指宿に、最後のお別れ。」


「名残惜しいなぁ」と、友里絵。

「ほんと」と、由香。

「また来ようね」と、菜由。

「麻里恵さんは、この町にずーっと住んでるのね」と、愛紗。



駅までのマイクロ・バスが、エントランスに着いて。


ツー、と機械音のブザーが鳴って
横の扉が、がば、と開く。


何回見ても不思議に見える、愛紗。

空気ばねでもないのに・・・?と、思う。



「ね、愛紗、支払いは?」と、菜由が小声で。


愛紗は「ああ、おばさんのツケなの。後で払えば。その方が安いから。」

職員扱い=3000円。
一般=7000円。


と言うワケ(笑)。




フロントの人たちが、エントランスまで出て来てくれて
お別れのご挨拶。


「ありがとうございましたー。」と、にこにこ。


友里絵は「なんか、淋しくなっちゃう。」と、はらはら。泣く。


由香「ほれほれ、すぐ泣くなぁ、オマエ」と、友里絵の頭を抱き寄せて。にこにこ。
よしよし。


「かわいいのね」と、菜由。

愛紗も、にこにこ。

・・・・友里絵ちゃんみたいに、素直に泣けたら、いいのにな・・・・。
みんなに可愛がられるんだろうな・・・・。


なんて、思っていたりもした。



マイクロ・バスに乗り込んで、
いろいろ思い出す。


まだ、旅ははじまったばかりなのに、想い出がいっぱい。
そんな、4人だった。



「出発しまーす」運転手さんは、若い人。
KKRの人みたい。

マイクロくらいなら、割と楽に乗れるので。


この車はATなので、尚更楽。


機械式ブザーが、ツー、と
鳴って。

ドアがばたりと閉じる。


友里絵も、落涙しながら笑顔で「さよーならー」と、手を振った。

由香が、友里絵の涙を拭いてあげて。


「いい友達ね」と、菜由。

愛紗も「うん」


フェニックスが立ち並ぶ、KKR指宿のクリーム色の建物が
遠ざかっていくと、愛紗も淋しくなった。

・・・なんだか、いろいろあったな・・・・。

国鉄のこと。

路線バスの緊急避難のこと。

池田湖でのこと。

麻里恵さんのこと。



「これからの旅で、なにがあるんだろう」そんな風に思いながらも
バスは、ゆっくり、指宿駅を目指し
海岸通りをまっすぐ。


T字路を右折して、駅へと一路・・・・。



がらがらがら・・・と言う、ディーゼルエンジンの響きが
前から来るのは、大型バスと違って乗用車っぽい。

そのほかは、路線バスにも似ているな。

そんなふうに思いながら・・・・駅に着く。

大きな足湯に、人影はまばら。
でも、火曜日だと言うのに誰かが居る。

「お湯がもったいないね」と、菜由。

由香「源泉なんじゃない?」

友里絵「かけながしー。」(^^)。


掛け流しって面白い言葉だな、なんて愛紗も思った。



菜由が「列車は、9時だっけ」

愛紗「そう。赤いのね。こんどは特急」

車両はもう、手前のホームに待機している。
向こう側の、普通列車ホームではなく。

単線なので、優等列車は
のんびり。長い時間ホームに置くと
普通列車が出られなくなってしまうから、と言う感じ。


頻繁に発着する普通列車が、中央側の島になっているホームを使う。
そんな仕組み。




改札は、昨日のおじさんではなくて
若い人。

かえってよかったな、と愛紗は思ったりする(^^)。

切符忘れて、友里絵ちゃんに助けてもらったこと、ちょっと恥ずかしいし。


周遊の、「かえり券」なので
これを失くすと、もう帰れない(笑)。

まあ、もう一度買うしかない訳で・・・・。





友里絵は、なんかお菓子をめっけてきて(^^)

「汽車のなかでたーべよ」と。
チョコバナナとか、チップとか。マカロンとか。


「太るぞ」と、由香。


「いーもーん、太ったって。」と、友里絵。


菜由は「まあ、かわいいうちはいいけど」



友里絵「可愛くなくなったら終わりだー。」と。にこにこ。


愛紗は「ずっとかわいいといいね」


友里絵「ほんと」



列車であったおばあちゃんとか・・・かわいいよね、と
そんな風にも愛紗は思った。




「発車まで少しあるね」と、由香。


「ドア開くの、面白いよ」と、愛紗。


「どんな?」と、友里絵。


「煙が出るの」と、愛紗。


由香「へー。玉手箱だから?」



列車名が、たまて箱、と言う面白い名前。



ドアが開く。


しゅー。


と、ドアの上から煙が出て。



「面白いねぇ」と、列車を待っていたおばあちゃんが、にこにこ。



友里絵は「おばあちゃんになっちゃうのかな」


おばあちゃんたちも、にこにこ。




「空いてるね」
「火曜だし」
「平日がいいね、旅は」


めいめいに、いろいろ感じながら・・・旅は続く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...