バス・ドライバー日記

深町珠

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ひょうたん島

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同じ頃。宴会をお開きにした局長は、
区長と、廊下を歩きながら。

「はて・・・・あの子。どこかで見たような・・・・。」


区長は「愛紗ちゃんですか?」


局長は、思案顔。

「洒落た名前だなって、そう思った事があるんだ。かなり前」


区長「かなり前なら、まだ幼い子だったんでしょうね。」


局長「そうかな・・・人違いかな、それじゃ」



区長「そうかもしれませんね」と、にこにこ。


局長「ボケたかな」

区長「ははは」



静かな廊下を、スリッパ、すたすた。











愛紗は、複雑である。

親切にされたのだけど。
なーんとなく。素直に厚意に甘えられないような。


・・・・わたしって。可愛くない・・・・。


そう思う。



上手く、仕切られているような気がして。
それは妄想なのだろう、と自身、気づいているのだけれども。


家の両親のことを連想したりするのだ。無意識に。




のんびり、リビングのTVを見ながら
お茶を飲んでいたりしても
そんなことを思ったり。



自分の進路を、決められない。

何が好き、って言えない。



それも、なんとなく・・・・怖れがある。

いつも、母が細かい事まで干渉するから
それで、いつも・・・逃げる事ばかりを考えていた。


幼い頃からそうだったので、好き嫌いも言えなかった。
それで、ずっと来た。


本当は、おとなしくしているのも嫌いだったのかもしれない。
それで、テニス部に入ったりもしたのだった。



菜由が「愛紗、よかったね。ほんと」


と、言われて。「うん。」と、返事するんだけれど

何が良かったのか、よく解らないけど
そう答えれば、まるくおさまる。

そんな感じで、ずっと生きてきたような・・・気がする。


「バスと鉄道、どっちが好き?」と、菜由が言う。けど

「解らない」と、答える。

それが本音だった。本当にわからない。

ただ、バスを運転すると、大きな車体を制御する面白さのような
ものは実感として判る。

そのくらい。

バス・ドライバーを志願したのも
本当は、「健気ないい子」で居なくてはならないと
思い込まされていた、だけかもしれない。


友里絵と由香を見ていると、そう思うのだった。



・・・・あんなふうに、思いのままに居られたらいいな・・・。


その「思い」が、そもそも感じられないのだった。









お風呂場の友里絵は
ぬーどで。

「全裸新体操ー。」なんて、開脚。

「バカ」と、由香は笑って。「週刊ポストかよ」


「良く知ってるね」と、友里絵。

「だって、置いてくじゃん、バスのお客」と、由香。


友里絵は、プラスチックの桶にお湯をいれて「あ!ケロリンって書いてあるー。」


由香「なつかしいね。」


友里絵「ケロリン♪ケロリン♪ケロケロリン♪」と、ヘンな歌(^^)。

歌いながら、お湯をかぶった。


温泉に入って。うつぶせ。お尻だけだして「ひょっこりひょうたん島」


由香「ストリップでもやるか、売れなくなったら」


友里絵は仰向けになって「わかめ島ー♪」


由香「上が筒抜けなんだってば、アホ」と。(^^)。



友里絵は「だいじょぶだいじょぶ。めーないから。」


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