バス・ドライバー日記

深町珠

文字の大きさ
上 下
183 / 328

おくらぱん

しおりを挟む
「わたしはまだ、ドライバーになれていないけど。」と、愛紗。


菜由は「研修中は、誰でもそうだって。それに、愛紗の場合はさ。
運転が出来ない訳じゃなくって。
かわいい子だからって、悪い事するような人から守る為だもの。
会社だってその方が楽だもの。」


愛紗は「女って損だなぁ」



菜由は「そうかもね。でも・・・得する事もあるんだから。わざと
損な立場で働くことないよ。ホントに。
いい仕事もあるじゃない。ドライバーだって、定期観光バスとか
だったら。」


愛紗は「ドライバーだけが仕事じゃないって、なんとなく解ったような気がするな。」


友里絵は「あたしらがドライバー志願しても、野田さんも何にも言わなかったけど」


由香「そりゃー、元不良だし。ははは」


友里絵は「笑っていいのか?」

由香「いいともー!」


菜由は「さ、寝よっか。明日は・・・・どこ行くんだっけ。西大山かな。
列車本数ないから、早起きしないと」


友里絵は「あーい。寝よ、寝よ。」


由香「おやすみ」


愛紗は「おやすみなさい」


菜由「おやすみなさい」


楽しい、指宿の夜は更けていく。













翌朝、4人が起きたのは・・・
お日さまが高く昇った時間だった。


愛紗は「あ!大変」

遅刻、と思ったのだけれども「そっか。今は旅行だった」


日勤ならいざしらず、実際の勤務になると
毎朝、起きる時間が異なるし、寝る時間も違う。


毎日、時差ボケのような状態で
さすがに、それは堪えた。

ガイドの仕事でも、そんなに大きくは違わなかったし
第一、運転はしない。

鉄道員でも似たようなものであるが、バスの運転は
路線だと、混雑した市街も走るし
道路を横断する人や、自転車、バイクも居る。


緊張の度合いは、だいぶ違うので
路線研修程度でも、かなり・・・緊張した。


それだけに、解放されている今は
安心だった。

楽だった。




「やっぱり、辞めようかな、ドライバー」なんて
こんな朝は思ったりもする。





菜由もめざめ「おはよ、愛紗・・・何時?」

愛紗は、部屋の時計を見て「8時」


菜由は「それだと、西大山は列車で行くのは無理ね。」



愛紗は、まあ、どうでもいいのだけど・・・。


友里絵が起きて来て「ふぁ・・・おはょー。」と、眠そうに。
髪の毛も、もしゃもしゃ。


由香は「朝かー。」と、起きて来て。時計見て「8時過ぎ・・・だと、9時の列車は無理」


バスガイドの仕事柄、無理な日程は嫌いである。
危険だし。

わがままを言う客を見ていると「ああはなりたくない」と思うのかもしれない。






愛紗は時刻表を見て「じゃ、11時の列車で西大山へ行って、そこから
バスで回れば?池田湖とか。長崎鼻とか。」



友里絵は「あたしはそれでいい。この辺りって、どこでも楽しいもん。
そこにいるだけで」


のどかなところに居ると、そういうものなのかもしれない。
人の集まる観光スポットに行きたい、と思うより
のんびりと過ごしたい。

そういう気持になる、そういう旅もある。



由香も「それでいーよ。今晩もここに泊まるなら、手ぶらでいいし。楽だね。」




友里絵は「よし!、じゃ、ごはんごはん!」


由香は「食うことになると元気だなぁ・・・・朝ごはんって何時まで?」


愛紗は「9時。」



由香は「大変だ。それじゃ一時間ないよ。」


友里絵は「そんなに食べないよ。朝なんて。」






・・・・とは言ったものの。



朝のバイキングも豪華だった。


サラダバー、ミルク、コーヒー。フレッシュジュース。

みんな、新鮮なもので。それだけでも美味しい。


卵料理あれこれ。スクランブルド・エッグ。サニー・サイドは、自分で焼けるように
鉄板が温められていて、好みに作れる。
ターン・オーバーにも出来る。

ゆで卵。半熟もあるし、固ゆでもある。


麺類は、焼きビーフン、サラダスパゲティ、お蕎麦、うどん。


ごはん。高菜ごはん、豆ごはん。


お味噌汁は、豆味噌、麦味噌。おすまし。

コンソメ、ポタージュ。これは昨夜と同じ。


ロールパン、フランスパン、イギリスパン。


「おくらロールだって」と、友里絵。「めずらしーね。」


トースターで、好みに焼けるようになっている。
ベルトコンベアみたいに、パンを乗せると
ぐるりと一回り、その間に焼けてくる。



香ばしく焼けたおくらロールを食べた友里絵は「ふつうのパンかな?ちょっと粘っこいかも」




「紫芋パンもある」と、由香。



こちらは、ほんとに紫色で。なぜか、表面はふつうのロールパンだけど
ふたつに割ると紫いろ。
仄かに甘い香りがする。




その他、クロワッサンもある。



コーヒー、カプチーノ、アメリカン、カフェオレ、ラテ。




「こりゃ食べきれないなぁ」と、菜由。


「持って帰れば」と、友里絵。


「ダメダメ」と、由香。


「じょーだんだってば」と、友里絵。


朝日が差し込む窓際は、海がよく見える。



「清々しい」と、愛紗。


和食がお好み。

ごはんと、納豆、お味噌汁は麦が好き。


生卵も、新鮮で美味しい。


なぜか、ハムエッグだけが洋風だけれども。

マカロニサラダと、サニーレタス。



「旅っていいな」

そう思う瞬間。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

礼儀と決意:坊主少女の学び【シリーズ】

S.H.L
青春
男まさりでマナーを知らない女子高生の優花が成長する物語

兄が変態すぎたので家出して逃げ込んだ先はまたしても変態比率が高かったようでどうやら僕の救いはお嬢様だけなようです。

アララギ
青春
何時から間違えてしまったのだろうか。 大切なモノのはずだった。大切な約束のはずだった。 だからこそ、なによりも、だれよりも、自分のことが許せなかった。 僕の世界に二度目の雪が降った、12歳の冬の日。 僕はピアニストであることをやめた。    ※) 基本はコメディですが、後半に行くにしたがってシリアスになっていきます。よかったら感想お待ちしてますっ!!

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

平衡ゴーストジュブナイル――この手紙を君が読むとき、私はこの世界にいないけれど

クナリ
青春
生きていたいと願うべきだと分かっている。 でも心からそう思える瞬間が、生きているうちに、何度あるだろう。 五月女奏は、不登校の高校生。 彼はある日、幽体離脱のように、自分の「幽霊」を体の外に出せるようになった。 ただし、幽霊がいけるのは自分のいる世界ではなく、それとよく似た並行世界。 そして並行世界では、彼の幽霊は、けが人や病人に触れることで、そのけがや病気を吸い取ることができた。 自分の世界ではなくても、人を癒すことには意味があると信じて「治療」を続ける奏だったが、ある雨の日、彼は自分の世界で、誰かの「幽霊」らしきものを見る。 その「幽霊」の本体は、奏の幽霊がいける並行世界に暮らす、ある女子高生だった。 名前は、水葉由良。 彼らは幽霊を「ゴースト」と呼ぶことにして、お互いの世界の病院で人々を治し続ける。 いくつかの共通点と、いくつかの違いを感じながら。 次第に交流を深めていく奏と由良だったが、それによって奏は、由良の身に何が起きていたのかを知る。 二つの世界に住む二人の交流と決断を描いた、現代ファンタジーです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

Bグループの少年

櫻井春輝
青春
 クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?

処理中です...