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いい子、悪い子、ふつーの子
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愛紗は思う。友里絵ちゃんはとてもかわいい。
天衣無縫なところは、深町とよく似ているな、とも。
「友里絵ちゃん、かわいいわ」と、愛紗は心から、そう言った。
友里絵は「えー。あたしみたいな不良が?」
由香が「自分で言うな、って。タマちゃんも言ってたじゃん」
菜由は「深町さんが?」
友里絵は「そう。不良なんかじゃない、キミは。世の中がヘンなんだ」
愛紗も、その気持は判る。友里絵ちゃんはまっすぐに生きて行きたいと
思っているだけだ。
自分は、なんて不純なんだろう。
友里絵ちゃんを見ると、そう思う。
上手く立ち回って、いい子でいようとする癖がついているし
いい子でいないと、回りが規制する。
だから・・そうなってしまった。
それがイヤだったのではないのか。
そんなふうに、気づく。
バス・ドライバーになろうとしたのも、反発だったのかもしれない。
「どうしたら、友里絵ちゃんみたいになれるのかな」と、愛紗は思わず。
友里絵は「あたしは、前からこんなだもん。ずっと。
あたしは、愛紗みたいにかわいいお嬢さんになりたいな」
由香は「こじきと王子、みたいね」
友里絵は「あたしはこじきかい」
「そーじゃないの。ほんっとに学がないね、あんた。
そういうお話があるの!」と、由香。
笑って。
菜由は「なんかあったね、小学校で習ったっけ。
お互いに相手が良く見えるけど・・・立場を変えて見ると
それなりに、いろいろある。そんな感じの」
みんな、それぞれにいいトコがあるよね。
ほんと。
「明日は、どうするの?」と、友里絵。
愛紗は「隣の駅が、日本で一番南にある駅、だったかな。
お山が綺麗に見えて、あの辺りにでも行ってみようか。
湖もあるし。行ってみたいところある?」
菜由は「わたしは地元だから、一杯見てるし。普段来れない人が
決めたら?」
由香は「そうだね。2泊だったら一泊はそんな感じで」
友里絵は「うん。そだね。のんびりした方が楽しいかも」
「湖は恐竜がいるって」と、菜由。
友里絵は「本当にあった怖い話」の愛読者なので・・・
「それ、行ってみよう!」
由香は「まあ、ネッシーと一緒じゃない?」
菜由は「イッシーだって」
由香「ほらね」
友里絵「イッシー緒方」
由香「字が違うってば」
友里絵「いっしっし」
由香「ケンケンかい」
友里絵「なにそれ?」
由香「ブラック魔王の」
友里絵「あんたがブラック魔王じゃ!とりゃ」と、空手チョップ(^^)。
由香「やったな、このぉ」と、枕を投げる。
「やーめーろって。修学旅行じゃないんだから」と、菜由。
楽しく、指宿の夜は更ける。
・
・
・
同じ頃、深町は新幹線から在来に乗り換えて
片野駅で下車。
「やれやれ、今日も終わった」
駅前を歩いて、バスロータリーの前を通ると
東山のバスが見えた。
「誰かなー。」と、ちょっと覗いてみると
古参のドライバー、伊郷が
時代小説を、運転席で読んでいた。
大柄、短髪、白髪交じり。
ちょっと中尾彬に似ているけど、温かみのあるいい人。
入ったばかりの頃、深町をいろいろ、助けてくれた。
まだ、担当車が持てない頃、人のバスをぶつけてしまい
そういう時、担当が怒らないように話をしてくれたり。
過酷な貸切業務の時、新人が楽をできるように
早く、帰宅させてくれたり。
家来にするのではなく、育ててくれた。
とてもいい人。
それだけに、バスを辞めてしまった今では
ちょっと、申し訳ない気持が一杯。
でも、会うと笑顔で「やあ、タマちゃん、元気ー。」なんて
変わらない笑顔で接してくれる。
そんな、いい人。
この日も・・・・「やあ」と、運転席の横の窓を開けて
「時代劇、書いてるー。」
深町がお話を書けるので、時代小説をリクエストしたのだった。
「こんばんは。書いてるけど人気でないね」
と、いうと伊郷は、笑顔で
「まあ、そのうち売れるかもね」
元、何かの会社を経営していた、と言う人で
確かにそういう、きっぷのいい、親分肌のところがあった。
「あ、そっか。今はなんか、すごい仕事してるんですね」
と、言葉まで丁寧になるので、深町は
「すごくないですよ。誰でもできます」
と、言って笑う。
「そっちで頑張って。戻ってこないでいいよ」と、野田と同じ事を言う。
「はい」と、深町も素直になれる。この人の前だと。
でも、気持の上では・・・・また、あの頃に戻りたい。
そんな気持だったりもする。
勤務はきつかったけど、温かい思い遣りのある人たちに囲まれていた
あの頃に。
天衣無縫なところは、深町とよく似ているな、とも。
「友里絵ちゃん、かわいいわ」と、愛紗は心から、そう言った。
友里絵は「えー。あたしみたいな不良が?」
由香が「自分で言うな、って。タマちゃんも言ってたじゃん」
菜由は「深町さんが?」
友里絵は「そう。不良なんかじゃない、キミは。世の中がヘンなんだ」
愛紗も、その気持は判る。友里絵ちゃんはまっすぐに生きて行きたいと
思っているだけだ。
自分は、なんて不純なんだろう。
友里絵ちゃんを見ると、そう思う。
上手く立ち回って、いい子でいようとする癖がついているし
いい子でいないと、回りが規制する。
だから・・そうなってしまった。
それがイヤだったのではないのか。
そんなふうに、気づく。
バス・ドライバーになろうとしたのも、反発だったのかもしれない。
「どうしたら、友里絵ちゃんみたいになれるのかな」と、愛紗は思わず。
友里絵は「あたしは、前からこんなだもん。ずっと。
あたしは、愛紗みたいにかわいいお嬢さんになりたいな」
由香は「こじきと王子、みたいね」
友里絵は「あたしはこじきかい」
「そーじゃないの。ほんっとに学がないね、あんた。
そういうお話があるの!」と、由香。
笑って。
菜由は「なんかあったね、小学校で習ったっけ。
お互いに相手が良く見えるけど・・・立場を変えて見ると
それなりに、いろいろある。そんな感じの」
みんな、それぞれにいいトコがあるよね。
ほんと。
「明日は、どうするの?」と、友里絵。
愛紗は「隣の駅が、日本で一番南にある駅、だったかな。
お山が綺麗に見えて、あの辺りにでも行ってみようか。
湖もあるし。行ってみたいところある?」
菜由は「わたしは地元だから、一杯見てるし。普段来れない人が
決めたら?」
由香は「そうだね。2泊だったら一泊はそんな感じで」
友里絵は「うん。そだね。のんびりした方が楽しいかも」
「湖は恐竜がいるって」と、菜由。
友里絵は「本当にあった怖い話」の愛読者なので・・・
「それ、行ってみよう!」
由香は「まあ、ネッシーと一緒じゃない?」
菜由は「イッシーだって」
由香「ほらね」
友里絵「イッシー緒方」
由香「字が違うってば」
友里絵「いっしっし」
由香「ケンケンかい」
友里絵「なにそれ?」
由香「ブラック魔王の」
友里絵「あんたがブラック魔王じゃ!とりゃ」と、空手チョップ(^^)。
由香「やったな、このぉ」と、枕を投げる。
「やーめーろって。修学旅行じゃないんだから」と、菜由。
楽しく、指宿の夜は更ける。
・
・
・
同じ頃、深町は新幹線から在来に乗り換えて
片野駅で下車。
「やれやれ、今日も終わった」
駅前を歩いて、バスロータリーの前を通ると
東山のバスが見えた。
「誰かなー。」と、ちょっと覗いてみると
古参のドライバー、伊郷が
時代小説を、運転席で読んでいた。
大柄、短髪、白髪交じり。
ちょっと中尾彬に似ているけど、温かみのあるいい人。
入ったばかりの頃、深町をいろいろ、助けてくれた。
まだ、担当車が持てない頃、人のバスをぶつけてしまい
そういう時、担当が怒らないように話をしてくれたり。
過酷な貸切業務の時、新人が楽をできるように
早く、帰宅させてくれたり。
家来にするのではなく、育ててくれた。
とてもいい人。
それだけに、バスを辞めてしまった今では
ちょっと、申し訳ない気持が一杯。
でも、会うと笑顔で「やあ、タマちゃん、元気ー。」なんて
変わらない笑顔で接してくれる。
そんな、いい人。
この日も・・・・「やあ」と、運転席の横の窓を開けて
「時代劇、書いてるー。」
深町がお話を書けるので、時代小説をリクエストしたのだった。
「こんばんは。書いてるけど人気でないね」
と、いうと伊郷は、笑顔で
「まあ、そのうち売れるかもね」
元、何かの会社を経営していた、と言う人で
確かにそういう、きっぷのいい、親分肌のところがあった。
「あ、そっか。今はなんか、すごい仕事してるんですね」
と、言葉まで丁寧になるので、深町は
「すごくないですよ。誰でもできます」
と、言って笑う。
「そっちで頑張って。戻ってこないでいいよ」と、野田と同じ事を言う。
「はい」と、深町も素直になれる。この人の前だと。
でも、気持の上では・・・・また、あの頃に戻りたい。
そんな気持だったりもする。
勤務はきつかったけど、温かい思い遣りのある人たちに囲まれていた
あの頃に。
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