バス・ドライバー日記

深町珠

文字の大きさ
上 下
170 / 328

9767A、品川、定時!

しおりを挟む
同じ頃・・・・深町は東京駅、丸の内口改札から入り
北通路を、新幹線ホームに向かって歩いていた。
慣れると5分くらいだが、中央や、南通路を通ると
観光客が居るので、時間が掛かる。

そこで、旅慣れた人はこの北通路を使う。
八重洲口まで行ってしまえば、ドトール珈琲もあるし
日本食堂にも行ける。

「あの、オムライスは美味しかったなぁ。シチューも。」と
かつて、東京大学の面接試験の時、帰りに買って
母へのお土産に、とした洋食のことを思い出した。

思い出したらお腹が空いてきたが、少し控えて。

新幹線ホームへの改札へ。

北通路からの改札はないので、中央通路への連絡線を歩く。
狭い通路だけれども、東京ばななのお店があったりする。

乗換え連絡改札は、中央通路まで行かなくてもあるので
そこが、メリット。

帰りの新幹線は、18:35分だけれども
入線するのは18時頃。

品川基地で清掃したままの列車が来るので、ホームで清掃待ちをしなくて済むのが
気に入っている。

こだま767号、名古屋行き。
次が三島行きなので、そちらの方が空いてはいるが
時間が、ちょっと惜しい。

これで帰っても、帰宅できるのは19時半くらいだから。

「もう、慣れたけどな」
それでも、路線バスの乗務よりは楽だ。


前日の乗務終了20時
本日の乗務開始5時

なんてのは、普通だった。

乗務終了とは言っても、その後に料金箱を格納し
乗務日報を出すのに30分は掛かる。

自分のバスでなければ、清掃もしなくてはならない。


朝は朝で、開始前30分には来ていないと点呼が受けられない。
その前に、点検をしなくてはならない。
自分のバスならば、前日に点検を済ます事も出来るが。


まだ、家が近い深町は良かった。
その為に、会社を選んだのもあるが。




「眠れないのは本当に辛かったなぁ」
夜8時くらいになると、眠くなって目が霞んできたりすることもあった。
運転手の中には、眠気覚ましに珈琲を飲んで
胃が悪くなったり。
糖尿病になって、網膜症になったり。


古参の運転手に多かった。彼らの多くは、定年後も嘱託で残り
ダイアの穴埋め乗務をしていた。
元指令で「組長」と呼ばれていた
凄みのある人でさえ、そうしていた。
それは、一重に「使命感」なのだろう。


自分たちのダイア、だから。



いつだったか、深町が大学線で待機していた時・・・・

和田が乗務する筈の下り急行が、来なかった。

「どうしたんだろう」と、深町は気になって無線で尋ねてみた。


「本社、こちら658」


「658、どうぞ」



「大学線、下り急行は13:00ですね。まだ車両が見当たりません。」

時間は12:57である。


せいぜい3分前には来ていないと、まずい。


バスロータリーにはしかし、学生の姿は無かった。

午前で帰る人がいないのだろう。


それで深町は「誰も乗らないから、休みですか?」と言うと

「組長」は

「ダメだー。それじゃ欠便になるぞ。途中で待ってる人もいるだろう!」
と、結構な剣幕で怒鳴られてしまった。



そのくらい大切なものなのである。ダイアは。

「公共の」

それを意識する一瞬、だった。










回想しながら、中央エスカレータを登る。
ちょうど6号車で、18時前に来れば
まあ、一番で座れる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ふわ・ふわ

深町珠
現代文学
やさしい、かわいい、たのしい、あかるい、うれしい、ふんわり、のんびり 「わたし」の日常を、ふんわり、毎日書いていました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

タビスルムスメ

深町珠
青春
乗務員の手記を元にした、楽しい作品です。 現在、九州の旅をしています。現地取材を元にしている、ドキュメントふうのところもあります。 旅先で、いろんな人と出会います。 職業柄、鉄道乗務員ともお友達になります。 出会って、別れます。旅ですね。 日生愛紗:21歳。飫肥出身。バスガイド=>運転士。 石川菜由:21歳。鹿児島出身。元バスガイド。 青島由香:20歳。神奈川出身。バスガイド。 藤野友里恵:20歳。神奈川出身。バスガイド。 日光真由美:19歳。人吉在住。国鉄人吉車掌区、車掌補。 荻恵:21歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。 坂倉真由美:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。 三芳らら:15歳。立野在住。熊本高校の学生、猫が好き。 鈴木朋恵:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。 板倉裕子:20歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。 日高パトリシアかずみ:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区、客室乗務員。 坂倉奈緒美:16歳。熊本在住。熊本高校の学生、三芳ららの友達・坂倉真由美の妹。 橋本理沙:25歳。大分在住。国鉄大分機関区、機関士。 三井洋子:21歳。大分在住。国鉄大分車掌区。車掌。 松井文子:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区。客室乗務員。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...