バス・ドライバー日記

深町珠

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大分ゆき532列車

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「なれたらの話しね」と、愛紗は笑う。

「それはそう」と、伯母さんも。


「そうだよー。あたしらなんてさ、バスガイドだってやっと、だったんだもの。」
と、由香。

「あたしはそうでもないけど」と、友里絵。

「裏切り者!」と、由香は笑う。


「そう、友里絵ちゃんは資格あるものね。それでもバスガイドになった。」と、愛紗。


「だって、あの時はタマちゃんが居たんだもん。でも、すぐに居なくなって。
裏切り者!」と、友里絵も笑う。


「東大に付いて行けばいいじゃん」と、由香。

「そんなの無理に決まってるじゃん」と、友里絵。


「だからさ、東大の中のお店とか。バーガーキングとかさ、カフェとかあるじゃん。」と、
由香。


「そんなのあるの?」と、愛紗。


「うん、あるんだって。あたしも友里絵から聞いたんだけど。
最近の東大ってそうなってるんだって。」と、由香。


「変わったねぇ」と、伯母さん。



「行った事あるの?」と、愛紗。


「ないけど、なんとなく。国立ってどこも硬いもの」と、伯母さん。


「国鉄もそうか」と、友里絵。


「そーだよぉ。あたしらみたいの雇わないよ、きっと。国鉄さん」と、由香。



伯母さんは笑って「大丈夫よ。国鉄ってね。元々は雇用を作る為に出来たから。
田舎の人が、農業だけ。っていうんじゃないように。って。郵便もそう」



「それ、聞いた事あるな」と、由香。



「おー。頭いい。」と、友里絵。



伯母さんは笑いながら「だから、割と誰でも入れたの。昔はね。」と。


「なーんだ、今はダメか」と、友里絵。



「そうでもないと思うよ。人をちゃんと見るから。見掛けとかじゃなくて。
信用できる、そういう人は大丈夫。あなたたちは大丈夫」。と、伯母さん。


「ただ、求人があるか」と、愛紗。


「それは欠員待ちね。昔と違うから」と、伯母さん。



「それだよなー。」と、友里絵。





ご飯を食べて、伯母さんと、友里絵たちは

駅に向かって歩く。


友里絵は振り返って「一晩、ありがとうございました」と、お家に礼をした。



「なんか、いいね、それ。あたしも」と、由香も礼をした。



「いい子ね、ふたりとも」と、伯母さん。



「だって、もう逢えないでしょ?」と、友里絵。


「そうか・・・」と、愛紗。


旅してると、出会うと別れ。そんなことも多い。
もう会えない。

その言葉は、なんとなく淋しい響きだと
愛紗は思う。




駅に着く。

日曜だけど、それでも乗る人もいる。
大抵は、大分方面への通勤・通学客だ。



「ちょっと、まだ早いね。」と、愛紗。


「大分行ってさ、靴買いたーい。」と、友里絵。

「ああ、仕事の靴だもの」と、由香。


「家に送っちゃえばいいものね。」と、愛紗。



旅行荷物も、帰りはそうする事もある。

最後の日、お土産とか、着替えとか。
今使わないものは送ってしまったり。



伯母さんは、出札の鍵を開けて。
綺麗な木目のある引き戸を開いて。
これも誂えだ。



「じゃね。また一週間後。寄って?」と、伯母さん。

「ありがとうございましたー。」
「ありがとうございます。」
「ありがと」

三者三様。


大分方面への登り列車は、跨線橋を渡って反対側のホーム。
2番線。


伯母さんに手を振って、3人はバッグを担いで
コンクリートの階段を昇る。

「まださ、蒸気機関車が走ってきそう」と、友里絵。


「雰囲気あるね。」と、由香。
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