バス・ドライバー日記

深町珠

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three coin in the fountain

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三者三様。
しばらく眠った。

まだ、21時にもならなかったが、自然に眠くなるのは
辺りが静かだし、TVも無かったりしたから。

夜行列車の走り出した1956年の生活は、そういうものだったのかもしれない。

愛紗は、夢を見た。


「ただいまー」と、庄内の伯母の所へ行って。

伯母と、再会を喜び合っていて。

ふと、愛紗、と言う名前の命名者の事に話が及び

その人を訪ねていく。


すると・・・その人は、深町だった。

そんな夢だったーーー。



「・・・。」
夢現。


B寝台個室「ソロ」の10号室、二階で
ふと、気づくと

列車は、ゆっくりした速度で、しかし走り続けていた。

「・・・今、どの辺りかしら?」

カーテンを上げて、外を見たが
暗く、何も見えない。街の灯りが見えないから
山陽本線に入ったのだろうか。

壁のEL管クロックを見ると、1:30だった。

列車は運転打ち切りにはなっておらず、遅れは2時間弱と
少し縮まったようだった。


「2時間遅れで着いても、14時前くらいね。」と、愛紗は思う。

そのくらいなら、由香と友里恵は宮崎まで着けるだろう。

大分からは電車特急が多数出ていて、2時間は掛からずに
宮崎空港まで行けるから

そこから、シャトルバスに乗ればいい。


「前泊が出来れば、ね。」
それを確かめていなかったが、万一列車が大幅に遅れると
予約をするとキャンセル料が掛かってしまう。

この辺りは、バスガイドの時の経験から、そんな風に思う。



まあ、由香も友里恵もその辺りは心得ているだろう。
なにせ同僚なのだ。




「寝よ」と、愛紗は
白いシーツの掛かった毛布を引き上げて、眠った。

列車に備え付けの浴衣を着るのも、久しぶりで嬉しかった。

ちょっと丈が短いので、部屋から出るのは恥かしいけど。



もう一度眠った愛紗は、また夢を見た。

「ただいまー。」と、伯母の家ではなく
自宅に帰ると。

愛紗の縁談が決まっていて。
父が「おめでとう」と。笑顔で。

愛紗は驚いて「誰?相手は?」と叫ぶ。

母も「あなたの好きなひとよ」と笑顔で。


「もうすぐ、迎えにいらしてくれるわ」と。


そんな話はきいてない!と叫びたい。
そこで目が覚めた。



気づくと、列車は揺れていた。

速度を上げているようだった。

雨は止み、遅れを回復する為だろうか。

遠く、EF66-54号機のホイッスルが聞こえた。

悲鳴のような、高い音だった。


「ヘンな夢」と、愛紗は微笑む。


壁の時計は3:00。

個室に備え付けのBGMを付けて見ると
ジャズchではギターの演奏で
ジョージ・ベンソン、リー・リトナーの
ウェス・モンゴメリー風のクラシカルな4ビート・ジャズが
演奏されていた。

いいセンスね、と
愛紗は思う。

FMラジオに切り替えてみると、天気予報。

九州の方では、まだ雨が降っていて
でも、明け方には止むだろう、との予報。

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