62 / 328
1列車、横浜定発
しおりを挟む
レモンとスパークリングって
なんて合うんだろうと
思いながら、車窓に心を馳せる。
「いいなぁ」
そろそろ、午後の陽射しは傾きかけて。
旅立ちに相応しいムード。
ふと、車内に視線を戻すと
見覚えのある人。
山岡だ。
母親と一緒に、なにか
優しげに話ながら
コーヒーかなにかのカップを傾けていた。
「親孝行なんだなぁ」と愛紗は思い
自分は親不孝なのかなぁ、あんなに
してあげたことないなぁ。
「まあ、おばあちゃんにはあるけど」
両親は、だいたい
まだ元気で
どちらかというと、人に世話になるような
タイプじゃない。
仕切って、指示するのが好き、みたいな
感じで
だから、愛紗も
親元にいると、子供の延長だと
思われるのが嫌で
逃げてきたのもあった。
いつか、あんな風になれるかな。
そんな風に思うのだけど。
そんな自信もない。
ぼんやりと車窓を眺めて。
「せっかく楽しい旅なんだから、普段の事は
思い出さないようにしないと。」
そんな風に、旅の始めは誰もと同じで
雑事が浮かんでは消える、そんなものだ。
やがて、旅の時間が
全てを忘れさせてくれる。
だから、旅はいい。
列車の先頭では、電気機関車EF66ー54が
唸りを上げて快調に走っている。
狼の叫び、と
機関車乗りに比喩された、ギアの音だ。
110km/h、東海道貨物線を
軽やかに。
元々貨物機関車なので、客車牽引は
軽い仕事だが
元々の担当機のEF65の老朽化と
この編成が長くなって、重くなった。
個室、ロビーなどの
アメニティーというか、楽しみの部分が
重要になったあたりが
豊かな時代の反映でもある。
元々は、乗れるだけで
有り難いくらいの列車だったのだけど。
今は、豊かな時代。
移動そのものを楽しむ事が
趣味、なのである。
模型作りのように、出来たものを
買うのではなくて
工程、その時間を楽しむものだ。
人の暮らしは、果たして
その工程を楽しめるものになっているのだろうか?
「熱海まで止まらないのは、随分早いね」
と、愛紗は思う。
貨物の線路を走っているせいで、駅がない(笑)
のが、実情。
小田原までは止めようがない。
「他の車内はどうなってたっけ」と、
愛紗は思う。
ふと気づくと、山岡親子は
いなくなっていた。
愛紗が、ぼんやりしていたせいか
通り過ぎて行ったの気づかなかったらしい。
「疲れてたのかな」と、思うけど
実感はない。
ドライバー研修が終わったばかり
だったのだけど
旅立ちで、とても遠い出来事のように
思えて。
どちらかと言うと、もう、思い出したくない
3年間だったような気もして。
「何をしたくて就職したんだろう?」と
振り返る時間だったりもする。
レモンスカッシュを飲み終えたし、
お風呂も東京駅で入ってきて
まだ5時。
後は寝るだけかな、と
のんびりした時間に、解放される思いの
愛紗である。
レモンスカッシュを飲み終え、ああ
片付けなくていいのか、と(笑)
習慣に気づく愛紗であった。
なんて合うんだろうと
思いながら、車窓に心を馳せる。
「いいなぁ」
そろそろ、午後の陽射しは傾きかけて。
旅立ちに相応しいムード。
ふと、車内に視線を戻すと
見覚えのある人。
山岡だ。
母親と一緒に、なにか
優しげに話ながら
コーヒーかなにかのカップを傾けていた。
「親孝行なんだなぁ」と愛紗は思い
自分は親不孝なのかなぁ、あんなに
してあげたことないなぁ。
「まあ、おばあちゃんにはあるけど」
両親は、だいたい
まだ元気で
どちらかというと、人に世話になるような
タイプじゃない。
仕切って、指示するのが好き、みたいな
感じで
だから、愛紗も
親元にいると、子供の延長だと
思われるのが嫌で
逃げてきたのもあった。
いつか、あんな風になれるかな。
そんな風に思うのだけど。
そんな自信もない。
ぼんやりと車窓を眺めて。
「せっかく楽しい旅なんだから、普段の事は
思い出さないようにしないと。」
そんな風に、旅の始めは誰もと同じで
雑事が浮かんでは消える、そんなものだ。
やがて、旅の時間が
全てを忘れさせてくれる。
だから、旅はいい。
列車の先頭では、電気機関車EF66ー54が
唸りを上げて快調に走っている。
狼の叫び、と
機関車乗りに比喩された、ギアの音だ。
110km/h、東海道貨物線を
軽やかに。
元々貨物機関車なので、客車牽引は
軽い仕事だが
元々の担当機のEF65の老朽化と
この編成が長くなって、重くなった。
個室、ロビーなどの
アメニティーというか、楽しみの部分が
重要になったあたりが
豊かな時代の反映でもある。
元々は、乗れるだけで
有り難いくらいの列車だったのだけど。
今は、豊かな時代。
移動そのものを楽しむ事が
趣味、なのである。
模型作りのように、出来たものを
買うのではなくて
工程、その時間を楽しむものだ。
人の暮らしは、果たして
その工程を楽しめるものになっているのだろうか?
「熱海まで止まらないのは、随分早いね」
と、愛紗は思う。
貨物の線路を走っているせいで、駅がない(笑)
のが、実情。
小田原までは止めようがない。
「他の車内はどうなってたっけ」と、
愛紗は思う。
ふと気づくと、山岡親子は
いなくなっていた。
愛紗が、ぼんやりしていたせいか
通り過ぎて行ったの気づかなかったらしい。
「疲れてたのかな」と、思うけど
実感はない。
ドライバー研修が終わったばかり
だったのだけど
旅立ちで、とても遠い出来事のように
思えて。
どちらかと言うと、もう、思い出したくない
3年間だったような気もして。
「何をしたくて就職したんだろう?」と
振り返る時間だったりもする。
レモンスカッシュを飲み終えたし、
お風呂も東京駅で入ってきて
まだ5時。
後は寝るだけかな、と
のんびりした時間に、解放される思いの
愛紗である。
レモンスカッシュを飲み終え、ああ
片付けなくていいのか、と(笑)
習慣に気づく愛紗であった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
初恋旅行に出かけます
松丹子
青春
いたって普通の女子学生の、家族と進路と部活と友情と、そしてちょっとだけ恋の話。
(番外編にしようか悩みましたが、単体で公開します)
エセ福岡弁が出てきます。
*関連作品『モテ男とデキ女の奥手な恋』

産賀良助の普変なる日常
ちゃんきぃ
青春
高校へ入学したことをきっかけに産賀良助(うぶかりょうすけ)は日々の出来事を日記に付け始める。
彼の日々は変わらない人と変わろうとする人と変わっている人が出てくる至って普通の日常だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

気になる夢の夫
nia
青春
不思議な夢を見たゆかりという高校生のお話。
実は、このお話は現在進行系で作者の日常を元に作っています。ですが、お話を面白くするため、少々脚色しています。ご了承ください。
主人公…私(ゆかり)
夢の夫…海くん(クラスメート)
友達
まゆ…別の高校に行った親友
ほの花…同じクラス
花菜…部活とクラスが一緒
先生
足立先生…担任兼顧問
クラスメート
玉木くん…部活も一緒

汐留一家は私以外腐ってる!
折原さゆみ
青春
私、汐留喜咲(しおどめきさき)はいたって普通の高校生である。
それなのに、どうして家族はこうもおかしいのだろうか。
腐女子の母、母の影響で腐男子に目覚めた父、百合ものに目覚めた妹。
今時、LGBTが広まる中で、偏見などはしたくはないが、それでもそれ抜きに、私の家族はおかしいのだ。

頬に触れた風の行く先に
Namuku
青春
高校2年生の羽那(はな)は、クラスでは影にいる静かなタイプで。中心にいる明るく人付き合いの上手い悠秋はそんな羽那にも分け隔てなく接する人気者で。
そんな二人の不器用な恋をお届けします!
※初投稿です。
【ショートショート】乗り物のおはなし
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
車、電車、バスなどの乗り物が出てくる作品をまとめてみました。
声劇用だと1分〜5分ほど、黙読だと1分〜3分ほどで読みきれる作品が多めです。500文字を越える作品もいくつかございます。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる