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連帯保証人
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「深町さんは、なぜ希望されたのですか?」愛紗。
有馬は「んー、あー。なんだったか。ああ、国鉄に入りたかったけど。歳が行ってしまって」
木滑は「ああ、なんかおじいちゃんが国鉄で、早くに死んじゃって。おじさんが
後継いだんだけどね。大学行けって
おじさんが言うんで。ちょっと、言葉に行き違いがあって、とか。」
「行き違い....」
木滑は「よくあるじゃない。17の少年だから。反抗期って言うか。レールに敷かれたくないとか。それで、おじさんが失望してね。
その後、おじさんが死んじゃって。」
「かわいそう。」と、愛紗。
野田は「この手の仕事、珍しくないね。
55くらいで死ぬのは。時間不規則だし。
睡眠不足だし。お肌に悪いでしょ」と
野田は明るい。
ははは、と。笑う。
愛紗も、つい笑う。それが野田の魅力だろうか。
「あの、かずよしさんね。あの人も
定年後にすぐ死んじゃって。たまちゃん、悲しんでたな。ああいう時は感情が出るんだね。」
と、木滑。
「あの位でないと、持たないね。運転は。」と、細川。
「まー、真似できないね。俺だって怒るもの。スクールバスとかで騒いでると。うるせー、静かにしろい!下ろすぞ!」って。
野田らしい。
「それでクレーム来るんよ」と、有馬。
「そうそう。ま、今はメールとかで
本社にね。陰険だよな、最近のガキ」と、細川。
愛紗「そうですか..。」
有馬は「だからね、ドライバーなんて
そういう人間がやるものなんだよ。コミュニティーバスとかね。観光でも上品な、ほら、はとバスみたいなの。ああいうのなら
女の子でもいいと思うけど。路線はね、本当に低俗だから。それこそ、ホームレスだって
乗るんだよ」
愛紗は、なんとなく
ふんわかしてた自分が、恥ずかしいと思った。
なんとなく、イメージがカッコイイとか
そんな感じでドライバーになりたかったのかな、
なんて、
野田は「だからね、もっと上等な仕事が出来るなら、そっちに行った方がいい。
たまもね、今大学に行ってるとかだから
俺達も呼ばないな。普通なら戻って来い!って
言うけどね」
愛紗「それで...。」
時々、深町が遊びに来ると
野田は決まって「お前はエンジニアでやれ」と
言う。
それは、本音だったんだ。
「まあ、たまはなんとなく、イメージで制服着たかったとか、そう言う感じで」と、細川。
愛紗は、自分に似てると思った。
でも、深町さんは
死んじゃったおじさんに申し訳ないと
思ったんだから。
それで、頑張れたのかな。
野田は「だから、会社はね、ドライバー歓迎って金のことを気にするけどね。俺達は
お前の事を考えてるんだよ。ドライバーは
大岡山じゃやらない方がいいって。もっと
ババアになってからでいいよ」わはは、って
笑う野田。
明るいので、怒る気にならない。
疲労で、緊張感のある明るい、だけど。
「今は?」愛紗。
有馬は「うん、君だっていつまで
かわいいお嬢さんじゃないでしょう。
歳取れば、慣れて来るし。」
細川は「ふてぶてしいばばあになるし」
木滑は「奥さんですか?」と
言って、みんな笑った。
「そうなってからでも出来るから、こんな仕事、無理しなくていいよ。」と、野田。
有馬は「それとね、これは契約の問題でね。
ドライバーの場合だと、収入のある連帯保証人が二人必要なんだな。まあ、形だけだけど。
」
愛紗「それって」
野田「うん、万一大事故を起こして、保険で
賄えない事になったら、財産が取られちゃうって事。」
愛紗は思う。
死亡事故を起こすと、それで自殺するドライバーが。
でも、本人がそうなっても、保証人が払う事になる。
細川は「まあ、人を轢いたくらいじゃならないね。沢山被害があれば別だけど」
木滑は「俺だってバス一台壊したけど」
野田は「あれは大変だったなーははは」と。
明るい。
でも、愛紗は、現実を思い知る。
「わかりました。少し考えたいと思います。
とりあえず。」
有馬が、簡単に休暇をくれた理由は
こんな辺りだった。
何も考えていないようで、そうでもない
有馬は、さすが課長だと
愛紗は思う。
有馬は「んー、あー。なんだったか。ああ、国鉄に入りたかったけど。歳が行ってしまって」
木滑は「ああ、なんかおじいちゃんが国鉄で、早くに死んじゃって。おじさんが
後継いだんだけどね。大学行けって
おじさんが言うんで。ちょっと、言葉に行き違いがあって、とか。」
「行き違い....」
木滑は「よくあるじゃない。17の少年だから。反抗期って言うか。レールに敷かれたくないとか。それで、おじさんが失望してね。
その後、おじさんが死んじゃって。」
「かわいそう。」と、愛紗。
野田は「この手の仕事、珍しくないね。
55くらいで死ぬのは。時間不規則だし。
睡眠不足だし。お肌に悪いでしょ」と
野田は明るい。
ははは、と。笑う。
愛紗も、つい笑う。それが野田の魅力だろうか。
「あの、かずよしさんね。あの人も
定年後にすぐ死んじゃって。たまちゃん、悲しんでたな。ああいう時は感情が出るんだね。」
と、木滑。
「あの位でないと、持たないね。運転は。」と、細川。
「まー、真似できないね。俺だって怒るもの。スクールバスとかで騒いでると。うるせー、静かにしろい!下ろすぞ!」って。
野田らしい。
「それでクレーム来るんよ」と、有馬。
「そうそう。ま、今はメールとかで
本社にね。陰険だよな、最近のガキ」と、細川。
愛紗「そうですか..。」
有馬は「だからね、ドライバーなんて
そういう人間がやるものなんだよ。コミュニティーバスとかね。観光でも上品な、ほら、はとバスみたいなの。ああいうのなら
女の子でもいいと思うけど。路線はね、本当に低俗だから。それこそ、ホームレスだって
乗るんだよ」
愛紗は、なんとなく
ふんわかしてた自分が、恥ずかしいと思った。
なんとなく、イメージがカッコイイとか
そんな感じでドライバーになりたかったのかな、
なんて、
野田は「だからね、もっと上等な仕事が出来るなら、そっちに行った方がいい。
たまもね、今大学に行ってるとかだから
俺達も呼ばないな。普通なら戻って来い!って
言うけどね」
愛紗「それで...。」
時々、深町が遊びに来ると
野田は決まって「お前はエンジニアでやれ」と
言う。
それは、本音だったんだ。
「まあ、たまはなんとなく、イメージで制服着たかったとか、そう言う感じで」と、細川。
愛紗は、自分に似てると思った。
でも、深町さんは
死んじゃったおじさんに申し訳ないと
思ったんだから。
それで、頑張れたのかな。
野田は「だから、会社はね、ドライバー歓迎って金のことを気にするけどね。俺達は
お前の事を考えてるんだよ。ドライバーは
大岡山じゃやらない方がいいって。もっと
ババアになってからでいいよ」わはは、って
笑う野田。
明るいので、怒る気にならない。
疲労で、緊張感のある明るい、だけど。
「今は?」愛紗。
有馬は「うん、君だっていつまで
かわいいお嬢さんじゃないでしょう。
歳取れば、慣れて来るし。」
細川は「ふてぶてしいばばあになるし」
木滑は「奥さんですか?」と
言って、みんな笑った。
「そうなってからでも出来るから、こんな仕事、無理しなくていいよ。」と、野田。
有馬は「それとね、これは契約の問題でね。
ドライバーの場合だと、収入のある連帯保証人が二人必要なんだな。まあ、形だけだけど。
」
愛紗「それって」
野田「うん、万一大事故を起こして、保険で
賄えない事になったら、財産が取られちゃうって事。」
愛紗は思う。
死亡事故を起こすと、それで自殺するドライバーが。
でも、本人がそうなっても、保証人が払う事になる。
細川は「まあ、人を轢いたくらいじゃならないね。沢山被害があれば別だけど」
木滑は「俺だってバス一台壊したけど」
野田は「あれは大変だったなーははは」と。
明るい。
でも、愛紗は、現実を思い知る。
「わかりました。少し考えたいと思います。
とりあえず。」
有馬が、簡単に休暇をくれた理由は
こんな辺りだった。
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有馬は、さすが課長だと
愛紗は思う。
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