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深町珠

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科学的推論

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「それでね、山中先生のお話だと・・・

『ipsを作った方法と同じ手法で、老化をする細胞にする事は可能だが、
部位を特定して行う必要があり、老化を今から進めても、10年遅れたままになる
でしょう。』

」と、詩織はその晩、神流にそう電話した。

神流は「・・・そうですね。それは可能だ。と。」

「ただ、『その必要があるのかどうか?』と、山中先生は仰っていらして。
もし、失敗すると、脳細胞のような所にも老化が起こってしまうでしょうね。きっと。」と
詩織。


「神隠しのお話は、どうなってる?」と、詩織。


神流は「理論上は説明がつきますね。ただ、何のために、誰が行ったかは
不明です。偶然、あのアーケードで起こるとも考えられます。
あそこには、若い女性が居ない事からしても、有り得ますね。」


詩織は思う。
そういえば・・・町内の若い女性は、大抵は外へ出てしまう。
お風呂やさんも、後継ぎにならずに他所の町へ。

碧も、おじいちゃんとなぜか別居、アーケードの外に引っ越した。


「なぜか、珠子の家だけが、そうしないんですね。」と、神流。



詩織は「回避する方法は見つかった?」と聞く。

神流は「あのアーケードに近づかなければ安全ですね。まあ、お嫁に行けばそうなりますから」と、長閑な答えだ。


その、長閑さ加減に詩織も和む「そうね。私達もそういう年代になっているのね。ふふ」

と、眼鏡の奥で微笑んだ。

まだ、大学の研究室に居る午後7時。

神流も同様に、物理シミュレーション・モデルの計算を流しながら。
コンピュータ・ルームにひとり。

「他の人が居なくなる可能性はありますけど」と、神流。

「それは私も調べたの。史実では結構、あの町の周辺で神隠しは多いの。
他の町と比べても。」と、詩織。



「何か、あるのかもしれませんね。天体の位置、地形・・とか。あの町は盆地だから」


と、神流。


「世界中にあるものね。不思議な場所。船が消えるとか。」と、詩織。

「はい、多次元空間だと仮定すれば、有り得る事ではありますね。
その空間の歪みが、偶々、あの町で起こるのか、珠子の周辺で起こるのかは
まだ分かりません。もし、珠子の周辺で起こるなら・・・いずれ起こる事になるでしょう」

と、神流は言う。


・・・・その可能性はありますね。とは言わずに。


それは、詩織を心配させないためであった。


新幹線に乗ろうと、アーケードを離れた時にも
珠子の周辺で空間の歪み?が発生したから
そう思うのだった。
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