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深町珠

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東京

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神流と珠子が感じた、なんとなく禍々しい感じは
生まれ育った環境の違いと解されている。

古都のような、長閑な所では
あまり、追われる事もない。
元々あった土地に、古くから住んでいる人は
のびのびと暮している。

そういう所では、例えば赤ちゃんを身ごもると
お母さんは親元でのんびりと過ごすか

珠乃家のように、家族や、近所の人が
優しくしてくれて、お母さんが穏やかに過ごせるように気を使うから
おなかの赤ちゃんものびのびと過ごせる。

赤ちゃんの脳は、お母さんと一体であるから
お母さんの声、聞いている音、動き。更には食べ物や、飲み物。
それが嫌でも逃れられないから、嫌にならないように配慮する訳だ。

昔からの知恵であるし、それはサルの時代からそうであった。
群れで過ごすサルは、雌同士で労わりあって過ごすのだ。
発情期が来ると。

そういう事が難しいのが、都会である。
親しい近隣は居なかったりすると、若いお母さんは不安になるから
不安のストレスが、おなかの赤ちゃんに掛かる。

生まれる前からストレスが脳に入ってくるので、解離的になる。
「ここにいるぞ!」と叫びたいような、そういう気持が
根底にある子になる。

なので、周囲に配慮しない。解離的だからであるし
叫びたい気持があるから、目立とうとする。排他的になる。

禍々しい感じになる訳だ。


実際、首都でも昔から住んでいる人々は、穏やかに暮しており
禍々しい人々は、他の所から来た人であるから

好戦的な人々が、首都を舞台に戦いをしているような、そういう感じである。



神流も、双葉も。
そこに住んではいるものの、戦ってはいない。
そういう人もいるのだが。

進化生物学では、そのようにして戦っていた種が生存したとは考えられておらず、
偶々環境の変化に合っていた種が生き延びたと考えられている。

不要な戦いはエネルギの無駄なので、そうした種は
体を傷つけた状態になるから、どうしても寿命が縮むという訳である。


それは、日本が弥生時代に移った頃、狩猟採集生活だった日本人を
農耕を以って支配した渡来人、と言う図式にも似ている。
「帝」と庶民、のような関係も、その時に持ち込まれたりする。
つまり、「神隠し」がそのような制度に起因するものならば
その時に興ったとも言える。

対比的には、首都に多い禍々しい人々は。渡来人のような
境界を欲しがる人々
(=大陸系。島国の日本には境界は海だけであるから
人々の間に境界は必要なかった。豊かな国土なので、食べ物は
探せば得られる。従って、境界を用いてテリトリーを維持しなくて良い)。

古都のような人々は、日本の先住民のような境界を持たない人々である。
それは、珠子の住むアーケードの住民のように、家族などという境界すら
ないような人々である。


・・・故に、「神隠し」では、浚われる側になる、と言う訳だが。


神流は、そのような人為的な原因ではなく、神秘的現象でもなく。
物理的な現象として、珠子の身に起きた現象を捉えていた。


目前で見れば、そういう風に思うのが自然である。


もうすぐ、首都の駅である。

----Ladies and gentlmen , we are arrived at syuto terminal soon.

と、アナウンスが入り、列車は速度を落としてゆっくりと進行した。
すこしカーブしながら。
左手の窓に見えるのは、ラジオ局のビルだったり。
空港へゆくモノレールの駅だったり。
大きなカメラ店のビル。


坊主頭のイラスト看板を見て、珠子は父のことを思い出して
くすっ、と笑った。

・・・・お父さん、ひとりで大丈夫かな?お店。

とは思ったが、もうどうしようもない。

「珠ちゃん、ぼちぼち降りるよ。」と、神流。
「うん。」と珠子。元々、荷物もバッグひとつだ。


双葉も、上京した時はこんなだったのかな、なんて思いながら。



まだ夕方にもなっていない。
「新幹線って早いねー。」と、珠子は実感。
2時間くらいである。
300km/hで東へ進むと、 300/1700なので
数分、時間がずれる事になるが
それは相対的なもので(相対性理論もこのようなものである)。
新幹線に乗っている乗客の生物的な時間が変化する訳ではない。
寿命が変化する訳でもない。 (笑)。
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