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深町珠

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いわゆるヒッグス場

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碧は「でもさ、珠子も辛いよね。お父さんもお母さんもなんか
真っ直ぐで。なんか神様みたいだよね。」と。

それは、今ふうのセンスである。
どこか破綻した所があるのが人間だと言う感覚。

そういうところを見せないようにするためにするのが
その前の日本人だったから
伝統を重んじる職人には、「その前」の日本風、が必要なのだろう。

それ以前に、珠子の両親は、お互いに好き、と言う気持があったから
相手に好かれようと、その期待に応えたいとして頑張る気持ちが。
それは、邦の東西を問わず、そういう物だろう。

碧は、家族ではないから。
珠子の一家の外面しか見ていないのもあるだろうけれど


詩織は、碧の話を聞いていて
確かに、珠子の一家はすこし、上品だ、と言うか
高貴な感じもすると思った。

「・・・宮家かしら、やっぱり。」と、心の中でつぶやく。
微笑みながら。

詩織の家も、食べ物を作る仕事ではないから
それほど求道的な両親と言う事もない。
ふつう、そんなものだ。



そういうところが、和菓子の味だけではなく
顧客に愛される理由なのかもしれない。

「あの人の作るものなら」と言う信頼。
それは、破綻している人には得られないものだ。

仕事に厳しく、自戒する。

それ故、崩れた人とは交われない。そういう所も
確かに父にはあったと珠子は思う。


神流の父は職人なので、珠子の父の感じはよく判る。
男ってそういうほうが好ましいとも思う。
そんな姿勢が、娘の神流を科学技術のような
厳密なものに向かわせるのかもしれない。



「さ、支度はこんなもんか」と、碧は手早い。
実務的である。


「家、離れるって初めてでしょ?珠子」と、詩織。


うん、と。珠子。
意外に淋しそうでもない。
みんなが一緒なのもあるだろうけど。


手荷物ひとつ。
そのくらいで間に合う。

「後は送ってもらえば、誰かに。」と、碧。


「・・・そうですね。」と、神流。

どのくらいの期間になるか判らないけれど
本当は、そのまま戻らない方がいいのかもしれない、などと
思ったりもした。


実際、珠子の周辺だけ
超高速粒子が減速される、ヒッグス場のような空間が
何故起こるのか(それも、単一方向に向かわせるような)。は
現状ではよく判らない。

ある方向に進ませようと言う意思があるようにしか見えないのが
正直な印象だった。
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