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深町珠

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もうひとつの友達思い

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「ううん、なんでもないの。ちょっと気になっただけ。」と

少し焦った詩織は、なんとか取り繕って電話を切った。

生物社会学資料室は、1階にあって

電話をしていた詩織は、そこから外に出て
大きな銀杏の木の下に居る。

青々と茂った木の葉が、さわやか。



碧は、その詩織の様子が少し変なので
珠子に電話を掛けた。

「珠子!あたし。」


いつものように、名前を言わない。
珠子は、いつも話している碧だから。


「なに?碧ちゃん。」


と。

友達の声を聞くと、なんとなく和める。
幼馴染だもの。




碧は、そのまま詩織の聞いた事を言おうと思ったけれど

ふと、思う。



・・・・今まで、聞かなかったのは、珠子が思い出して
悲しむと困るから。



だった。



高校生の頃、似たような事があって
その時は神流が慰めてあげたりしたのだった。



それを咄嗟に思い出し「あ、ごめん!また掛けるね、じゃねー。」



と、唐突なのはいつもの碧らしい。



珠子は微笑んで「変な碧ちゃん。」








碧は「うーん、どうしよう。そうだ!神流に相談するか。」



神流は、首都の理系大学に進学して
エンジニアをしている。

科学には明るいから、何か分かるかもしれない。




・・・一応、大人だから。

話す時間を考えて。


仕事してる時間を避けよう。



そういう事が気にならない珠子とはちょっと違うけれど
それが、幼馴染とのちょっとした差異だ。





一応、ショートメールで「電話していい?」と聞く。


直ぐに電話が掛かってきて「碧ちゃん、なに?」と。
長閑な声。

なんとなく和んでしまう。


碧は笑顔になったけど「うん。あのね。詩織から電話があったんだけど・・・。」と


いきさつを話した。




神流は、しばらく無言。



碧は、電話が壊れたのかなと思い「神流?」と聞くと


神流は「あーいやいや。ごめんなさい。それは、珠ちゃんが何か・・・
お母さんの事と、それと生態学研究をしてる詩織ちゃんと。
何か、関係があるのかな。私たちに言えないような。
もしかしたら、体の悩みかと。」


神流は、いつも冷静。
それは高校生の頃から同じだった。


いつも俯瞰していて、上手くみんなを誘導してくれる
不思議な存在。



碧は「そっかぁ。でも、私たちに言えない事ってなんだろう。」




神流は「そこまではわかりませんけど・・・お母さんの事を
詩織ちゃんが気にしていたのなら、行方の事かと。」



うーん。碧は考えてしまった。



そういえば、珠子のお母さんが天国に行ったと言う
言葉を聞いた事はなかった。


その件は、珠乃家で触れないようにしているし
アーケードのご近所さんも触れていない。



アーケード?



碧は気づく。「そうだ!おじいちゃんに聞いてみよう!。
何か知っているかも。神流、ありがと!」



神流は長閑に「いえいえ。私は何も。」と、電話を切り


また、コンピュータのディスプレイに向かった。
研究好きな神流である。

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