関東電力殺人事件

深町珠

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270 かわいそう

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「そっか。でも...かわいそう。」友里恵は
そういって、淋しそうに空を仰いだ。


ここは、東森自動車教習所。
深町のバス会社の隣だ。


「かわいそうって?」輝彦は
意図を尋ねた。


「だって...それじゃ、前のね、オーナーと
その、おじいさんは
別に、悪くないのに。死ぬ事は無かったのに。
道路や鉄道が来なければ、何も無かったんでしょう?」


そういう考え方もあるな、と
輝彦は驚いた。


そう、確かに。
自分の家が、道路になるからどいてくれ、と
言うのも随分無理な話だ。


鉄道は来たけど、事故があるまで
踏切はできなかったり。


そういえば、あの西森交差点も
最近まで信号が無かったっけ。


「友里恵ちゃん、優しいな」と、輝彦は思わず
そう言い、淋しげな彼女の
肩を引き寄せた。


「おー、おふたりさん。熱いねぇ。」

声の主は、深町。

今日は出勤らしく、バスドライバーの制服なので
妙に、大人びて見える。

と言っても十分大人なんだけど(笑)41歳だ。


「おお、深町か」と、輝彦。


「ああ、バスはしんどいなぁ。音楽界に戻りたいよ」と
深町。

「戻ればいいだろう」と、輝彦が言うと


「まあ、いろいろあってさ。好きなことして
食えればいいんだけどな」と、深町。

深町の父と兄が早くに亡くなったので
彼が、母親のそばに住んであげているのだと言う。
それで、音楽なんて不安定な仕事は
家計が難しいので、家で
作詞をしたり、小説を書いていたりするのだ、とか。


「深町さんって、やっぱりステキ」と
友里恵は、瞳を輝かせて。


「そかー、いやぁ、可愛い子にそう言われると
うれしいなー、わはは。あ、じゃあ、出発だから」と
深町は慌ただしく駆けて行った。


あいつが、ステキ?
輝彦は、よくわからない。
友里恵ちゃんって、面白いものの
見方をするな。

そんな風に思って
「なんで、深町はステキなの?」と


「だって、誰かの為に頑張れる人って
なんかいーな。って思うもん。
そういう人って、男らしいなって。」


なるほど。友里恵ちゃんらしい心の言葉だな。
輝彦はそう思った。

そういえば、あまり見かけないタイプだよな
深町も。


そうは言っても、輝彦本人は
たまたま、兄も健在だから
母のために、仕事を変えたりしないで済むだけ。

でも、恵まれている事に
感謝しなくちゃな。

内心そう思っても、なかなか
声に出してはいいづらいのは
輝彦33歳、まだ、ちょっと
子供っぽい思考も残っている(笑)


「でも、アートの道を諦めないで
お家でシンガー・ソングライターしてたりとか
諦めないところ、も
かっこいいな。」と、友里恵は続ける。


輝彦は、友人を誉められて
それは嬉しいけれど、なんとなく....

友里恵と年が離れてるので
いつか、若い男に浚われるんじゃないかと
ちょっと不安だったりもした。

それは、輝彦自身の愛を意味してもいるんだけれども。
本人は、それにちょっと気付かなかったりする(笑)。


「それで、免許取れそう?」と、輝彦は
思考を切り替えるように、話題を変えた。


「だめだー!実地はいいけど、学科がねー。
頭悪いもん」と、友里恵。

「スクーターの免許もってんじゃん」と
輝彦は、わざと軽く言った。


「でも~~。100問なんて、飽きちゃうー」(笑)。


明るい子、友里恵(笑)

「深町に教われば」と、輝彦。


「どーしてぇ?あなたが教えてよ」と、おねだり
友里恵ちゃん、かわいく。(笑)


「深町はね、先生の免許もってんの。」
いろんな職を転々としたけど、ミュージシャンを
するような性格なので、窮屈なのは
合わないらしい、と輝彦。


「あなたと、なんか似てる」と、友里恵はにこにこ。


「そーかなぁ、あんなに無骨かな」と、優男自慢、輝彦は
まだまだ若い。


「見た目は違うけど、なんか、自由なとこ。」
言葉少なに、的確な友里恵ちゃん。鋭い。



「ま、それはともかく。運転はプロだしね。」と
輝彦。

あいつなら、安心して任せられる。

そんな思いもあった。


実際、最近は見境がない人が多くて
友里恵のようなかよわい子を
任せられる人、は見あたらなかった。

「でもぉ、やっぱりあなたがいいの。」と
友里恵。


そっか。まあ、警察関係者ではあるし。
と言う事はまだ、友里恵は知らない(笑)。

学科は得意だけどね、とのモノローグも
控えた(笑)


「きょうは、スクーター?じゃないよね」と、輝彦。
ちょっと、エクザンティアにスクーター乗せるのは
無理(笑)。

「違うー。深町さんが、バスで。」と、友里恵。
回送バスに乗っけてくれたとか。

親切だなぁ、かわいい女の子には、あいつ(笑)
と、思ったけど
奴は、おばあちゃんにも優しかったっけ。

荷物を持って、バスに上れないおばあちゃんを
停留所で、見かけて。

運転席から降りて
おばあちゃんの荷物持って、手を引いてあげて。
バスに乗せてあげたんだっけ。


そういう奴さ、あいつ。

たまたま乗ってたお客さんが、
その事を新聞に投書して。

会社が、表彰するって事になったんだけど
あいつの名前を知らなかったんだね、
記事を書いた人。


それで、名乗りでなかったんだ、深町は。


仕方なく、会社は
別の奴を表彰したんだっけ。




それを、友里恵に話す輝彦。


「どーして、名乗り出なかったのかなぁ」と、友里恵。


「俺は、おばあちゃんが困ってたから
助けた。けど、賞なんていいよ。
ほしい奴が貰えばいいさ」

だって、と、輝彦は深町の真似をして(笑)。


それで、音楽業界でも
随分損してるのさ、あいつ。
でも、そういう奴だから友達になれるんだと
輝彦は言った。


「かっこいーなぁ、深町さん。憧れちゃうー」と、友里恵。


「じゃ、深町の奥さんになる?」と、輝彦は
半分冗談、半分不安(笑)


「それは別。好きなひと、って
もう、生まれるまえから決まってるの、きっと。」
と、夢見る少女友里恵ちゃん(笑)

かわいいなぁ、と輝彦もにこにこ。

ずっと、大事にしてあげなきゃ。

と、思ったり
(笑)




-----------------
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変え玉、と言うのは
ラーメンの麺だけをおかわりする事で
博多あたりでは、ふつうに行われてたりするけど

あんまり、若い女の子がすることじゃないと
思っている人は、たぶん、実態を知らない(笑)

大抵は、ひと目を気にして食わないだけ、で
友里恵や由香のように、ちょっとばかり元気すぎる子は
よく食べる(笑)

それでいい、と思う。
良く食べて、運動すると思考も健康になる。


自転車ですっ飛ばしていく由香に、とうとう追いつかずに
シトローエン・エクザンティアは
西の森コンビニに着いた。

いらっしゃいませ、と静かな挨拶をする子は、舞ちゃんだ。

由香や友里恵とひとつ違いの年齢、の割には
ずいぶん大人っぽい。

輝彦の感覚だと、舞ちゃんあたりが
ふつうの年齢なり、と言う感じ、かな(笑)。


それは環境のせいもある。

舞のように、静かに大人しくしていても
怖い目にあわない環境で生きてきた、と言う事で

由香や友里恵は、不幸にも
自衛せざるを得なかったから、それでパワフル(笑)なのもある。


中学一年で、教師にセクハラされそうになると言う学校は
尋常ではないと輝彦も思い、いつか、是正しなくては、と思うが
すでに、過去の事であり
友里恵や由香と関係ない形で、告発しようと思っている。


それはともかく、この舞ちゃんは
深町の友人の子、と言うのだけれど...
なんとなく、深町に似ている(笑)。そして、その友人と言うのは
かつてGF、だったりもして。

ミュージシャンっぽいなぁ、と思う輝彦だけれども
まあ、そういうところは外からは分からない。

輝彦だって、外から見れば
少女を遊び相手にする不良中年(笑)である。


「いらっしゃいませ」と、にっこりする舞ちゃんに
輝彦も、ちょっと、いいな、と思ってしまう。

本当は、しとやかな女性が好みの輝彦だが
なぜか、友里恵にひっぱられてしまったので(笑)
まあ、縁はそんなものだろう。

それでいい、と思う。


由香が、店長と何か話していたけれど
ふりむいて、おおきな丸、をジェスチャーした。

どうやら、店が暇なので帰っていい、と言う事らしい。

由香は、きょうはふつうの格好、ジーンズとシャツ、って
男の子みたいなスタイルだけれども

かえって、そっけない分魅力的な感じがする。

「よかったー、あがっていい、って」由香。
時計を見ると4時。まだ1時間ある。


「給料日に泣くってば」と、友里恵は案外冷静だ。




「自転車、どうしよっか」と、由香が言う。

「バンだったら、乗せていけるのにな」、と
友里恵。

それで、大きい車がいいのか。と
輝彦は、意外に堅実な感覚に
ちょっとびっくり。

そういうところは、女だねぇ(笑)、と言うか
主婦っぽい。

「早く結婚したいと思ってるの」と言った
いつかの夜を思い出して
懐かしくなった輝彦だった。


「じゃ、団地まで競争ー!」って、由香は
立ち漕ぎして、自転車を飛ばしていった。

「あー、これ、まて、ゆかーっ」と、友里恵は駆けだしていったので(笑)

輝彦は、シトロエンに乗って、ふたりを追った(笑)。


元気だなぁ(笑)と、思いながら。






結局、団地までは
シトロエンの方が遅かった(笑)



「遅いぞー」、と、友里恵。

結構な距離を走った割に、息穏やか。

「途中で後ろ、乗っけたの。ステップ乗り、ひさしぶりー」
と、由香も清々しい。

運動はいいなぁ(笑)と、車から見る
輝彦はおじさんっぽい(笑)。


3人で、ラーメンを食べに行っても
別に怪しまれる事もない(笑)。


温泉はちょっと、気をつかったけど
それは、後ろめたい訳じゃなくて
いかがわしい想像をする方が悪い(笑)。



ラーメン屋さんは、混んでいた。
替え玉セールだから、当然だけど。

いかにもラーメン屋、と言う感じじゃなくて
カフェのような、おしゃれな感じがいいのだろうか。

意外に、若い女性も多く訪れていたりする。


ラーメンを選びながら、JK探偵団(笑)は
捜査の行方に興味が移る。


「汚職があったとすると、ダンナさんは
困るね。」と、由香。

「それを調べるには、どうするの?」と、友里恵。


「うん、前の土地の持ち主に聞くか...。
役所の資料を調べるか。」
と、輝彦。

「養子縁組の理由ね、家庭裁判所にはあるし
戸籍には書いてあるけど、他人には見せてくれないよ。
警察なら別、だけど」

でも、それと自殺か事故か、とは
関係ないし。状況証拠にしかならない、と
輝彦はまとめた。



輝彦の勘では、汚職ぎりぎりだけれども
証拠は出ないだろう、そんなイメージだった。


公務員、そういう清濁あわせ飲むのが
一流である。

様々な人の利害調整は、建前では無理。
そういう事情も、よく理解している。


でも、それならどうして奥さんが駅で
わざわざ死ぬ必要があったのかは
謎だ。

それは、警察も解明していない。


輝彦は、ふつうの醤油ラーメン、喜多方ふう。
友里恵は、とんこつらーめん、ミネストローネふう(笑)
由香は、ミルクらーめん、フォンドヴォーふう(笑)


面白いメニューだ。

いろいろなスープを作るのは大変か、と
思っていたら、そうでもないらしい。

旨味の感覚は、世界共通と言う事らしい。

そういえば、カップラーメンは

外国でも人気らしいし。


「ゆう子ちゃん、何か知らないかなぁ」友里恵。

「本部の事は知らないみたい」と、由香。




それぞれに、替え玉、とは言いながら
意外にボリュームがあり
ひと玉、でおなかいっぱいになった。


...でも、ラーメン2はい食えば十分だろう(笑)と
輝彦は思った。

変え玉無料で、儲かるのかなと思ったけれど
それでお客さんが来てくれれば、損はしないのだろう。


「そういえばさ、お店でやったっけね。
ソフトクリーム増量とか、ポテト2倍とか」

友里恵は、そういうキッチンものが得意だった。
おままごとの延長感覚みたいに
楽しそうに仕事してたっけ。

「うんうん、おいしかったね、パフェとか」と、由香。

試作、と言って
新しいメニューを練習するときは、
自分で食べてもいいのだ(笑)


「あ。舞ちゃん。そういえば、介護福祉士の
講習の時に、なんか言ってなかったっけ。
ホームのお年寄りで、なんか、店のとこに
住んでたとか、なんとか」由香。


「そーだ、そんな事言ってた」と、友里恵。


もし。
成年後見、と言って
年を取って、認知症になった人とかの
財産管理を、ほかの人がする制度がある。

それを家庭裁判所が認めれば
養子縁組などは可能である。

違法ではない。家庭裁判所が認めれば。

でも....もし、土地目当てだったら。
それは好ましい事ではない。


そして、行政、つまり
道路を作る側に居る、オーナーの
ダンナさんがそれを画策したら.....。


由香は、ケータイで舞に確認した。

だいぶ前の話で、忘れかけていたけれど
確かにそうらしい。


あの、昨日行った
休暇村の近くに、公営の
介護施設があり、そこに入所していたらしい。


「やったね!」と、友里恵。

これで、事実関係はわかる-----。。

かもしれない。



「でも、あたしたちが入れるかなぁ、その施設」
と友里恵が心配すると、由香は

「入る分には誰でも入れるみたい。病院と一緒で
面会する人もいるから。

あたしたちは、養子になったオーナーの
お店の人なんだし。」と、由香。


それで、翌日にでも行ってみようと言う事になった。



その日は、流れ解散のつもりだった輝彦だったけど

いやー。
つまんないー。


と、ふたりが怪獣のように騒ぐので(笑)

カラオケに行ったりした。

田舎町は意外に便利だ。

狭い範囲にいろいろな施設がある。

それも、都市計画と言って
行政が、町作りを上手く区分けするので
いろいろな施設が、棲み分けるように
作れる訳、だ。

例えば、住宅地にカラオケがあったり
工場があったりしたらうるさくて困るが

そういう事がないように配慮するのが
行政、市役所なんか、である。


悪い事ばかりでもないのだ。

「舞ちゃんも呼ぼうかぁ」由香は、即座に電話したけど
おとなしい舞は、ちょっと遠慮した(笑)らしい。

それはそうだろうな、と輝彦は思う。

慎重な感じだし。輝彦が居るんだと
ちょっと危険な感じ(笑)もある。

「別に、怖い事無いのにね」と、友里恵。

「うん。でも、舞ちゃん歌、苦手なのかも....。」由香。


「まあ、ああいうお嬢さんは、カラオケは
似合わないかな。」と輝彦が言うと

「あたしたちはおじょうさんじゃないのかよー。」と
由香が、いつもの調子で。(笑)

「ごめんごめん、そういう事じゃなくてさ。
キミたちは勇敢なお嬢さん、舞ちゃんはそうじゃない
お嬢さん、だけど、介護とか、そういう事が出来て。
ひとそれぞれ、得手不得手があるもん」と
輝彦は上手く(笑)。

「エテってなーに?」と、友里恵。

「おさるさん。」と、由香。

「じゃ、ゆかじゃーん、ほれ、反省しろ、ゆかキー。」
と、友里恵と由香は漫才コンビのようだ(笑)


カラオケは、輝彦は結構ひさしぶりで
あんまり、歌は得意じゃないけど、それなりに歌った。

最近お気に入りのperfumeとかを、ダンス真似して
歌うと、ギャグだと思われて
とっても受けた。

自虐ギャグかなぁ(笑)真面目だったんだけどと
輝彦ひとりごと。


友里恵と由香は、海岸沿いの
同じ団地に住んでいるので

すんなりと、流れ解散。

ばいばーい、と
手を振るふたりは愛らしい。





翌日。
輝彦は、相変わらずのんびりと朝寝をして
それから、今日は
友里恵が店に出る日、だけど
朝番だから、6時から9時まで。

あの頃もそうだったけど、早起きして6時出勤って
女の子は大変だろうな、支度が。


..いつも寝坊して来るんだけど(笑)。





あの、休暇村の隣の介護施設に
捜査(笑)に行くのだった。


まともに受付に行っても、会わせてくれないだろうから
顔を知っている舞ちゃんに、一緒に行って貰う事にした。


足取りも軽く、シトロエン・エクザンティアに乗り込む。
猫足、と言われる
ストロークの長いサスペンションは
フランスの田舎でも軽快に走れるように
設計されたもので
日本の道では、性能が生かされるのは
人を沢山乗せた時、くらいだろうか。


多少スポーティに走っても
サルーンな乗り心地を保つ。
意外に困難な事だが。


店に行くと、友里恵は
バイトを上がって、家に戻ったらしく
姿が見えなかったので

カフェコーナーにいた由香と、舞ちゃんを
エクザンティアのリアシートに納めて
曲がりくねった山道を昇った。

「飛行機みたいですね」と、舞ちゃんは言う。
そういえば、水平を保って静かに飛んでいる
航空機に似ているかもしれない。


「ひこーき、いいな。どこ行ったの?」と、由香。

「北海道くらいかな」と、舞ちゃんは
ちょっと恥ずかしそうに。

海外くらい、今は当たり前だとか。

でも、慎重な舞ちゃんは
海外旅行は怖いそうだ。


「あたしも、海外は無いなー」と、由香。
おかねナイし、と、笑った。

舞ちゃんも、そうそう、と微笑み合った。


コンビニでバイトするくらいだから、
お金の有り難みがわかってるんだろうな。
なんたって、時給850円じゃなぁ(笑)



舞の家は、結構名の通った
電気店、公共工事などを請け負っているような
大きな店だから

お金の方は結構あるんだろうけれど。
それでも、自分でバイトすると言う舞を
輝彦は好ましく思った。


みんな、いい連中だった、あの店。
無くなるのは本当に惜しいけど。


そんな気持ちもあって、捜査しているんだったっけ。







「あの人ですね。」舞は、中庭で
のんびりとひざしを浴びている老人の事を示した。

小柄で白髪、やせては居るが
からだはがっちりとして。

でも、介護福祉士の人がエスコートしないと、歩けない。
顔つきを見ると、認知症は重度のようだ。

それでないと、ここに入所はしないだろうけれど。


・・・・・話は無理っぽいな。と
輝彦はちょっと、残念に思った。


振り返ると、舞ちゃんは
施設の人と、何か話をしていた。

研修で来たので、思い出話でもしてるのかな。
輝彦はそう思って、和やかに待っていた。


舞は、話を終えて
挨拶をしながら、ゆっくりと
こちらに戻ってきた。

「ご想像の通りですね。認知症になられて
後見人がいらっしゃらないので
行政が、成年後見人を選択した、との事です」


「どーいう事?」と、由香が聞くので(笑)


「つまり、やっぱりダンナさんの手筈だったって事」
と、輝彦が言うと

「やっぱりかー。」と、由香はちょっと悔しそう。

不正にはならないだろうけれど。

でも。それが、道路拡幅計画を知っての事
だったら。

それに、他人の、おじいさんへの
扶養義務も生じる訳だが

国立のこの施設、費用が掛からないので
入所待ちになっている筈。
そこに、どうして簡単に入れた?


それも、公務員のコネ、だろうか。

不正とは言えない。しかし.....。

そういう事が、重圧になっていたんだろうな。
少なくとも、ダンナさんからの
愛、は
あまり感じられない。

損得勘定で妻を動かした、そんな印象だ。


「つまり、認知症になってしまったおじいちゃんの
身よりが無かったから...」と、輝彦は言って、気付いた。


「そうだ、あの、片野駅のそばの
赤道。あそこに親戚が居たはずなのに。
どうして、後見人になれたんだろう?」


「そういう例はあるみたいですね」と、舞。

おじいちゃんの意志でそうした、とか
そういう公正証書、遺言のようなものが
有る場合、とかがそうなる、との事。

介護施設でよく、話題になるそうだ。


「なるほど。もし、そうだとしても
だんなさんの罪、とも言いにくいね」と、輝彦。

「なぜ?」と、由香。

「おそらく、そこまで手が掛かっているのは
役所全体で土地買収をしていた訳で。
それで、上の指示でそうさせられた、と
考えると、全てスムーズに処理できる。」

と、輝彦は推理した。


もし、そうだとすると
証拠は出てこない。
何の問題も無かった。

はず。


おそらく、そのまま更地にして
行政は転売するつもりだった。
でも、その場所で
なぜかコンビニを始めようと、奥さんが。
なぜか、発案した。


「なぜ?」輝彦は理解できない。

でも、何か理由があって
コンビニ経営を始めた。

ところが、上手く行かない。
万引きはある、パートを雇えば
商品を盗んでいく。

...なんらかの、統一した意志があって
経営を妨害しているのかもしれない。

不良パートは、解雇すればいいのに
なぜか、できなかった。


輝彦は思い出す。

昨年の冬、店が閉店、の噂があった時
輝彦を経営者にさせたがっていた
何者かの意志を。

もしかすると....。


「由香ちゃん、あの、パートのおばさん二人は
店が開店した頃から居たの?」


「うん、確か...。」と、由香は言い
ふたりとも、片野駅のそばに住んでる。

由香は、そう言って。

何かに気付いたようだった。



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