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下落した日本人
しおりを挟むそれで、不登校になったのだろうか、友里恵は。
かわいそうに。
しかし、そんな友里恵が
どうして自分のような大人の男を怖がらないのだろう、とは
思った。
そのあたりはドライなのだろうか。
高速で山陽本線を東進しているサンライズ・エクスプレス。
ほとんど揺れもなく、快適な乗り心地で
いつしか眠りに誘われる。
電球色の照明を落とし、眠りに就く事にした。
目覚めたら、もう東京なのだ。
旅の終わりは呆気なくて、いつも淋しさを感じる。
もう慣れたが。
快適な、サンライズ瀬戸の寝台個室で
眠りつつ、輝彦は思う。
もし、友里恵を不登校にした原因が
教師の性的欲望なら。
今追っている事件と、動機と背景は同じだ。
社会制度を悪用した、私利私欲の為の犯罪。
友里恵の例は、立件すれば有罪確定だろう。
問題なのは、いまの大人に
公正さが欠けている事で
そういう者が、公職に就く事が問題なのだ。
そして、日本の政治が
そういうものを容認しているのが、一番問題なのだろう。
そうして夢想するときの友里恵は、
楽しそうにしている、愛らしい表情である。
そういうものを守ってやりたいと思うのは
年長の者に当然にある感情だし
元をただせば動物の時代から
受け継がれてきた性質だ。
同じ種の生物を増やし育てると言う性質。
例えば植物は、自分以外を育てないし
動物でも、無性生殖のものなどには見られない。
知能の高い動物になって、比較的見られる傾向。
それが、知能の発達が過ぎたのか
同じ種の動物でも、ドメインの違いで
排他性を発揮したりするのは、霊長類の隣人あたりに
見られる傾向である。
友里恵のような幼い女の子に
性的欲望を持つなどと
大人がどうして思うのだろう。
本人が望むならともかく。
性的快楽を知った少女が
自ら大人を誘惑した、とも考えにくい。
その証拠に、友里恵は恋愛成就を望んでいる。
自ら選んだ相手と。
不登校になった後、普通に高校へ行き
輝彦のような大人と平然と会話できるなら
原因は中学にあったのかもしれない。
その頃、気づいてやれなかったのは残念だったと
輝彦は思う。
でも、その時の輝彦には精一杯だったから
それは仕方なかった。
輝彦の周辺の大人のように
分別のある人々ならば、友里恵のような
被害者は出ない。
なんと言っても、それは犯罪だからである。
当然だが、若き故に
友里恵の思いも性急である。
バイト先でふたりでいる事、それだけでは
満足できなかったらしく
普通のカップルのように、外で一緒に居たり
愛を確かめあったり、そういうモノを
夢想していたのだろう。
そういう気持ちになれるなら、それでいいのだろう。
しかし、それに応じてしまうと
法に触れる可能性もある。
友里恵は未成年であるし、まだ17歳だった。
婚姻前提であれば、問題はないのだが
親が告訴しないとも限らない。
輝彦の兄は警察官僚である。
不祥事は避けたかった。
まあ、デートくらいならいいか、と
軽く考えていた。
そう思っていた。
友里恵は、それからも店で
輝彦に寄り添ったし
恋人のように、愛らしい表情で
見つめ続けた。
傍観者があってもそうしていたので
バイト仲間は、それを誤解していた。
将来を託した、と思っていたのだろう。
そのうち、あからさまに
友里恵は、輝彦に接触するようになったので
バイト先の仲間は、ふたりが当然に恋愛関係にあると
思うようになったらしい。
そんなある日、友里恵の父親らしき人物が
店にやってきて
輝彦の事を遠巻きに観察していた。
が、視線は敵意がない事に
輝彦自身は安堵した。
現時点でも、もし
父親が警察を呼べば、輝彦は
逮捕されるかもしれない。
まあ、兄を呼べば解放されるだろうけれど。
友里恵が嘘を言うとも思えなかった。
この時点では、友里恵17歳なので
輝彦が性的行動を取っていれば
有罪確定である(笑)。
そんな事は、していない。
しかし、友里恵は
「お休みの日、あわないかなー」とか
あけすけに言うので、閉口した。
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