関東電力殺人事件

被疑者は国家レベル

とても遠い記憶に思えるのは、それが
現状とかけ離れた世界のように思えるからで
旅していくと、そういう事もあるのだろう。

トラベルライターの輝彦でも、そう思う。

それに、今回はスケールが少し大きい。

何せ、被疑者は国家レベルの相手だし
真相を知るものは、恐らく国外のどこかに居る筈である。
中国系を装った日本人攻撃の同時多発テロを装って
暗殺を試み、（多分）失敗したのは一体誰の仕業か？

本物の中国マフィアではない事は明らかである。
あまりにも偶然にすぎるから、である。


ひょっとすると、それは
日本国内からの追手であったかもしれない。

国外逃亡をまんまと成功させた事を知る者----内部、政府関係者か？


何れは明らかになる。




名古屋刑事を由布院駅に送りながら、輝彦は
そんな事を回想していた。


また会いましょう、と
笑顔で別れた輝彦だったが

ひとりになると、少し寂しく思えた。
それは旅愁、と言うものだろう。けれども
明日はまた、帰京して

捜査をするのだ。


そのための、ひとときの休暇を楽しもう。

夜の由布院を、ぶらぶら歩いた。

駅前から真っ直ぐ進むと、信号の無い交差点には
なぜか鳥居が立っている。

鳥居をくぐって行く道は、白滝川を渡る橋の方向である。



電話が鳴った。

「はい、兄さん？」

携帯電話は、相手の番号が分かるので便利だ。

電話の主は兄、警察官僚である。


「輝彦か？どこにいる？...そうか。例の件だがな。
詳しくは会って話そう。いつ帰る？」


携帯も、元公社のネットワークを使っているので
どこで盗聴されているか分からない、と言う事らしい。

政権が右になったので、そのあたりも
官僚としては気にする所なのだろう。


左翼と言うのは、一応は理論的である。
相手があって、それを革新する姿勢なのだから
当然だが、右翼と言うのはそうではなく
全部を自分のドメインだと思いこむから怖いのだ、と言う。

つまり、自己の配下であるのが当然だと言うおバカ(笑)
なのだから危険である、と言う。

そうでない人も居るとは思うが、そういう人が目立つ。


それで、わざわざ国境の島を国有地、などと言って
隣国と喧嘩を仕掛けたりする。

団地のババアが隣の家との境に植木置いたりするのと
何も変わらない(笑)から、それがどれだけバカな事かと思う。

真意はしかし、左翼政権の転覆にあって
原発利権の復興、電力会社救済にあったのだろう。


左翼政権が、その全てを解体しようとしていたから
手段を選ばずにそうした訳だ。


それで、自動車業界などは大迷惑だった筈だが。