54 / 187
向之原 60
しおりを挟む普通列車でゆっくり巡りたいと思うような
のどかな風景は、夕暮れを迎え
旅情を誘う。
遠い山並みには、過日より
風力発電所が見えている。
太陽光パネルを備えた住宅も増えている。
何気なく眺めていたそんな風景が
意味を持って見えてくるのは、ひとの意識の
面白いところである。
それら施設が増える理由の多くは、発電して
送電して売ると言う考えによるもので
つまり、国策がそうなったと示すものだ。
だが、電力買い取りのコストは、未だに
電力消費者に課せられると言うおかしなシステムで
つまり、それが新たな利権になってしまっている。
ただ、放射能が出る訳でもなく、爆発する訳でもない。
そう、国民の視点が変わってきたのは、全て地震の為である。
自然には、さすがに傲慢な電力族も勝てなかったのだろう。
それで、世の中が変わってくれればいいと思う。
極右系知事が引き起こした領土紛争のせいで
中国での日本企業にダメージがあった。
経済活動に支障が出た。
その最中に国政選挙があったとしても
そういう人を支持する経済団体は少ないと思う。
結果は何れ現れるだろう。
あまり関わり合いたくないと思うのは
普通の日本人の感覚だと思う。
大抵の政治家は、損得勘定(大方自分たちの)を
考えているだけで、国民の事を本当に考えている人は
少ないだろう。
そして、そういう渦に巻き込まれたのが
彼ら、一連の電力関連連続殺人の被害者たちである。
簡単に替え玉殺人と言ってしまっても
真智子とその姉のように
因果関係がある場合はまだ理解の範囲にあるが
他の二人は、どこの誰とも分からない存在なのだ。
おそらく、国外逃亡し、殺されたふたりに関連があるのだろうと思い、それを調査して貰おう。
これも、兄に託すべきだろうかと輝彦は思考した。
-----------------
向之原駅で、多少乗降があったようで
自由席車両にも、人が入ってくる気配を感じた。
シートをリクラインしているので、自ずと仰向けになる。
通路を通る人に自然と視線が移る...。
乗客のひとりに、輝彦は目を疑った。
池田湖に散ったあの真智子によく似た、でも
幾分若くて大柄な、スポーティな顔立ちの人。
直感的に輝彦は気づく。それが、もうひとりの、
本当の真智子である事に。
気づいたはいいが、果て、どう話しかけたものか悩んだ。
姉の存在を知らないとなると、輝彦との交点は何も無いのだ。
しかし、事件は知っているだろう。ならば、
池田湖で自分の替え玉が死した事は分かっているだろうと思う。
そこで、思い切って輝彦は「あの、失礼ですが勝又真智子さんでは...あ、いえいえ、怪しい者ではありません。
東京駅の日本食堂で貴女によく似た方と知り合いになった者です。深見と申します。」
と、座席についた真智子に声を掛けた。
幸い、付近に乗客はいない。
真智子は、驚いた様子で輝彦を見上げたが
眼を伏せ「はい、私....」と、言葉を詰まらせた。
-----------------
sent from W-ZERO
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる