関東電力殺人事件

深町珠

文字の大きさ
上 下
31 / 187

ある推論

しおりを挟む
もとより、確証を求めたら
本人か否かは全て疑わしい。

真智子の母親を名乗る人物ですら
自称である。

いささか、SF的な話になれば
輝彦の兄だと信じていた電話口の人物も
本人との確証はない(笑)。

無論、冗談であるが

輝彦自身が、そう認識する事を
認知、と精神医学ではそう言う。

それが怪しくなる事を認知障害と言うのであり
精神分析学的なマニュアル、米国精神医学会発行の
司法判断の際使用する手引書、DSM-4などにも
記載されているくらいである。

それは冗談にしても、組織犯罪として
世界規模で行うなら、そのくらいの事は出来ると
言う事だ。

極めて大胆な組織犯罪だと考えれば
現状の推理は、こうだ。

輝彦は、露天風呂から
月明かりの由布岳を眺めつつ、白滝川のせせらぎに
心地よく旅情を覚えつつ、考えをまとめた。


過去、勝又がまだ中間管理職だった頃に
国策である原発依存に批判的な部下が居た。

勝又自身は、東大出の技術者であり
オタクなので(笑)人の気持ちが分からず
傲慢である。

その女性部下と、宜しくない関係になる。
それは、その反原発闘士、父親譲りの彼女の
自爆テロだった。
彼を失脚させる為の罠である。

こういう事はよくある。この会社に限らず。
ソニックのような会社にすらあった事だ。

それが、明るみに出てはまずいので
何者かが、処理をした。

外国人の犯行と言う事にして
事実隠蔽をした。

警察も政治判断で、それに協力をさせられた。

が。


原発事故が起き、当時の左翼政権が
関東電力の解体を実行し、利権が無くなった。

そうなれば、事実隠蔽に異論が起こる。

冤罪事件として、外国人が釈放されるので
関東電力は、志水・勝又を切り捨てる。

同時に、過去の事件への
組織的関与を隠蔽したいが為に
口封じの為、彼らを消した事にして
海外へ逃がす。


そうして、国家賠償法の適用として
彼らの私財を没収、として
世論の目を誤魔化す。

実際には、本物の彼らは

国外に逃がす。

計画的に、原発事故直後から
替え玉とすり替えておく。
会長は、公式の場に出ず
社長も入院。

その間に、である。



そう考えると、全てが一本の線につながる。


左翼政権、当時のそれですら
支持母体に関東電力や、その労働組合が
名を連ねているが

ただ、政府で政権を握っていた人たちは
利権とは割と距離のある人達だったので

結局、利権側は我慢ならずに
政権転覆を企み、領土問題を紛争化。

隣国から、政権転覆を計る。

それは成功した。

そして、右翼系の政治家は
利権の回復を計る。


それで、上手く行く筈だったが.....。


海外に逃れていた、志水・勝又(あるいは、替え玉?)
が、暗殺される。


そう推理すると、国内の事件は反政府勢力の意図だと
考えられる。

原発利権に関わりの深かった、かつての右派与党である。

あるいは、組織ではなく思想犯たちが
個々に起こした事件なのかもしれない。


だが、国外の事件は....。

余波として起こった、反日過激派の仕業であるかもしれないし

その、国内の組織的事件を知った者の義憤に駆られた
強行事件であるかもしれない。


ただ、真智子事件だけは宙に浮いたまま、だ。

輝彦は、そんな空想をしながら
温泉に浸かりすぎてしまった(笑)


ディナータイムである。


グランド・フロアの緑深いレストランで
豊後牛ステーキ、である。

放牧で有名なこの地のそれは、この上なく美味である。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スマホ岡っ引き -江戸の難事件帖-

naomikoryo
ファンタジー
現代の警察官・佐久間悠介が交通事故の衝撃で目を覚ますと、そこは江戸時代。 混乱する中、手には現代のスマートフォンが握られていた。 しかし、時代錯誤も構わず役立つこのスマホには、奇妙な法則があった。 スマホの充電は使うたびに少しずつ減っていく。 だが、事件を解決するたびに「ミッション、クリア」の文字が表示され、充電が回復するのだ。 充電が切れれば、スマホはただの“板切れ”になる。 悠介は、この謎の仕様とともに、江戸の町で次々と巻き起こる事件に挑むことになる。 盗難、騒動、陰謀。 江戸時代の知恵や人情と、未来の技術を融合させた悠介の捜査は、町人たちの信頼を得ていく。しかし、スマホの充電回復という仕組みの裏には、彼が江戸に転生した「本当の理由」が隠されていた…。 人情溢れる江戸の町で、現代の知識と謎のスマホが織りなす異色の時代劇ミステリー。 事件を解決するたびに深まる江戸の絆と、解けていくスマホの秘密――。 「充電ゼロ」が迫る中、悠介の運命はいかに? 新感覚エンターテインメント、ここに開幕!

カフェ・シュガーパインの事件簿

山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。 個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。 だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

憑代の柩

菱沼あゆ
ミステリー
「お前の顔は整形しておいた。今から、僕の婚約者となって、真犯人を探すんだ」  教会での爆破事件に巻き込まれ。  目が覚めたら、記憶喪失な上に、勝手に整形されていた『私』。 「何もかもお前のせいだ」  そう言う男に逆らえず、彼の婚約者となって、真犯人を探すが。  周りは怪しい人間と霊ばかり――。  ホラー&ミステリー

唾棄すべき日々(1993年のリアル)

緑旗工房
経済・企業
バブル崩壊で激変した日本経済、ソフトウエア産業もまた例外ではなかった。 不況に苦しめられる中小企業戦士の日々を描きます。

失踪した悪役令嬢の奇妙な置き土産

柚木崎 史乃
ミステリー
『探偵侯爵』の二つ名を持つギルフォードは、その優れた推理力で数々の難事件を解決してきた。 そんなギルフォードのもとに、従姉の伯爵令嬢・エルシーが失踪したという知らせが舞い込んでくる。 エルシーは、一度は婚約者に婚約を破棄されたものの、諸事情で呼び戻され復縁・結婚したという特殊な経歴を持つ女性だ。 そして、後日。彼女の夫から失踪事件についての調査依頼を受けたギルフォードは、邸の庭で謎の人形を複数発見する。 怪訝に思いつつも調査を進めた結果、ギルフォードはある『真相』にたどり着くが──。 悪役令嬢の従弟である若き侯爵ギルフォードが謎解きに奮闘する、ゴシックファンタジーミステリー。

処理中です...