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正義の鉄槌
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しかし、兄は官僚だから
組織の長として、正義を曲げる事も
あるのだろう。だから、輝彦に
期待しているような所も多分にあるのだ。
輝彦は、その日の晩312号室で
波の音を聞きながら、そんな事を思いつつ
眠った。
翌日は、のんびりと起きて
駅まで、宿の送迎バスで送ってもらった。
いろいろな事があった取材だったが
少し、寄り道取材があるので、鹿児島から熊本を経由する
事になっている。
兄と連絡を取る。
真智子の恋人は、同じ研究所に
たまたま同席した客員研究員で
今は、別の研究所に居るという
フリーの人間だそうだ。
その事に、輝彦は好感を持った。
組織の中で、不満顔で居るより
余程良いと思う。
日本の組織は、古臭くて
閉塞状態にあると思う。
会社や、役所に限らない。学校や
自治会などもそうだ。
集団の中のひとり、ひとりの為の集団。
その構造を利用して私利私欲を満たそうとする者が
組織をダメにする。
有る意味では、関東電力の志水や勝又も
そうだ、と言える。
組織に利用されて人生を翻弄された。
地味な家庭人で居れば、幸せで居られたものを
欲に囚われた結果、他の人間の欲に依って
利用され、消滅させられた。
欲。
本来は、生命として必要な食物を得る為の機能だが
それが、生命そのものを抹殺する。
奇妙な行動である。
だからこそ、正義が必要だ。
そんな事を輝彦は考えながら、指宿駅に降りたった。
何も変わらないように、足湯もそのまま駅前にある。
もう、この駅に降り立つ事もないだろうと思うと
ふと、旅愁を憶える。
駅には、あざやかな黄色のディーゼルカー「なのはな」が
楽しい旅へと誘っている。
...そう、何も考えなければ楽しい旅なのだ。
輝彦は、思い直して
旅を楽しもうと思った。
9時36分発、鹿児島中央ゆき快速「なのはな」。
のどかで愛らしい名称である。
何故にこんな長閑な場所を殺伐とした事件に巻き込んだのか、と
少し悲しくなった。
鹿児島県警の名古屋刑事のぼやきのように
東京で片づけてほしい、と思った。
改札に、周遊きっぷを差し出すと
ステンレスの、懐かしいような改札口で
若い駅員が、ありがとうございますと
暖かい笑顔で見送った。
鹿児島中央行きは1番線にご乗車ください、と。
コンクリートが風雨に晒された趣のあるホームを歩き
枕崎よりの3号車、海沿いのボックス席に座った。
組織の長として、正義を曲げる事も
あるのだろう。だから、輝彦に
期待しているような所も多分にあるのだ。
輝彦は、その日の晩312号室で
波の音を聞きながら、そんな事を思いつつ
眠った。
翌日は、のんびりと起きて
駅まで、宿の送迎バスで送ってもらった。
いろいろな事があった取材だったが
少し、寄り道取材があるので、鹿児島から熊本を経由する
事になっている。
兄と連絡を取る。
真智子の恋人は、同じ研究所に
たまたま同席した客員研究員で
今は、別の研究所に居るという
フリーの人間だそうだ。
その事に、輝彦は好感を持った。
組織の中で、不満顔で居るより
余程良いと思う。
日本の組織は、古臭くて
閉塞状態にあると思う。
会社や、役所に限らない。学校や
自治会などもそうだ。
集団の中のひとり、ひとりの為の集団。
その構造を利用して私利私欲を満たそうとする者が
組織をダメにする。
有る意味では、関東電力の志水や勝又も
そうだ、と言える。
組織に利用されて人生を翻弄された。
地味な家庭人で居れば、幸せで居られたものを
欲に囚われた結果、他の人間の欲に依って
利用され、消滅させられた。
欲。
本来は、生命として必要な食物を得る為の機能だが
それが、生命そのものを抹殺する。
奇妙な行動である。
だからこそ、正義が必要だ。
そんな事を輝彦は考えながら、指宿駅に降りたった。
何も変わらないように、足湯もそのまま駅前にある。
もう、この駅に降り立つ事もないだろうと思うと
ふと、旅愁を憶える。
駅には、あざやかな黄色のディーゼルカー「なのはな」が
楽しい旅へと誘っている。
...そう、何も考えなければ楽しい旅なのだ。
輝彦は、思い直して
旅を楽しもうと思った。
9時36分発、鹿児島中央ゆき快速「なのはな」。
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少し悲しくなった。
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ステンレスの、懐かしいような改札口で
若い駅員が、ありがとうございますと
暖かい笑顔で見送った。
鹿児島中央行きは1番線にご乗車ください、と。
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