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鹿児島信用金庫
しおりを挟む会長の場合は、真智子犯人仮説も成立する。
ただ、動機に乏しいにせよ。
社長は、犯人は別。
うーん....つながらないな。
電話を切り、裏通りのスーパーマーケット「タイヨー」で
昼食を買う。
鹿児島信用金庫のATMで現金を下ろした。
駅前まで徒歩で戻り、足湯の前にたどりつく。
つい、昨日。
そこに真智子がいた。
今は、もう。
どこにもいない。
その事に、寂しさを追認する輝彦であったが
足湯で温まっているうちに、癒される思いであった。
真智子が犯人、と決まった訳ではない。
他殺の可能性もあるのだ。
そうだ。鑑識の結果を聞いてみよう。
鹿児島県警の、あの刑事に
輝彦は電話を掛けた。
-----------------
真智子の死因は、溺死ではなく
毒物中毒死、であった。
致命的ではないが、胃癌の初期状態であり
恐らくは体内被爆の影響ではないか、との
検屍結果。
....癌。
若い人だと、進行も早い。
それに気づいて、会社を辞めて
贖罪の思いから、父を殺めたのだろうか。
輝彦は思う。
でも、それにしては旅を楽しんでいる様子だった。
殺人犯人の顔には思えない。
...だとすると、毒殺されて
湖へ投げ込まれたのだろうか。
いずれも、推理に過ぎない。
ただ、会長、社長も
毒物で殺されている。
犯人は、毒物に詳しい者で
彼らに、厳戒態勢でも容易に近づく事のできる人物だ。
社員か、家族か。
考え込んでいる輝彦の前に、魚見岳方面ゆきの
バスが来た。
12時36分。
鹿児島交通の路線バスに乗り、とりあえず休暇村に
戻る事にした。
取材は済んだが、まだ帰る気になれない。
ホテルに戻り、ロビーで冷たいコーヒーを飲んでいると
携帯電話の呼び出しメロディが鳴った。
ハイケンスのセレナーデ。
夜行列車のチャイムに使われている、メロディだが
以前、北海道に取材した時に聞いて以来のお気に入りだ。
電話の相手は、鹿児島県警のさっきの刑事。
名を、名古屋、と言った。
「あー、深見さん、わたし。あのねぇ、仏さんの親御さんが、あんたに会いたいっていうんだけど、どうする?」
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