科学は、如何にしてヒトを幸せにするか~ななの例~

深町珠

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制度

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「なるほどね。随分上手く取り入ったじゃないか。姑息なやり方で標的を手なずける……それが吸血鬼という生き物らしい」 

ヴァンの目がかっと見開かれた。

その瞬間、どす黒い暗雲が立ち込めたようにして、室内の空気がにわかに重量を増す。

明るく灯っていた電燈が突然ふっと消え、辺りは薄暮に包まれた。

「貴様の生き残るわずかな可能性は、今を限りに消滅した。冥府の先で後悔するんだな。己が俺の逆鱗に触れたことを……!」

その途端、漆黒の霧のような形をした凄まじい力がヴァンの身体から放たれた。

一瞬だが、黒数珠の力が緩み、弱まる。

遥の表情から刹那、笑みが消えうせた。低く舌打ちすると、

「無駄なことをする」

再び錫杖を振り上げて、力を込めた。それで数珠は元の勢いを取り戻し、ヴァンの身体を緊縛する。

先ほどよりもずっと強い戒めに、ヴァンは顔を歪ませた。

「遊びの時間はもう終わりだ。果てない地獄で永久にさまようがいい。……無為な二百年だったな」

ヴァンの身体が薄れかかって見える。聖は首を振って喉が枯れるほどに叫んだ。

「駄目だ!やめろ!殺さないで……!」

遥は涼しい笑顔で聖の懇願を聞き流し、錫杖を掲げてヴァンにとどめの一撃を振り下ろした。

「さようなら、愚かな吸血鬼さん」

「っやめろおおおっ!!!!!!!!」

聖が自分の鼓膜が破れるほどの叫び声をあげた、そのときだった。

何か熱い塊が体を駆け抜け飛び出していったかと思うと、パリン、と澄んだ物悲しい音が響き、結界が割れて破片が四方へ飛散した。

聖はそれをヴァンがやったのだと錯覚し、そのまま彼のそばへ駆け寄る。

膝をついて、黒数珠を引きちぎろうと手をかけた瞬間、

「え?!」

数珠をつないでいた紐がぶつりと音を立てて切れ、数珠の珠が弾けるようにして床へこぼれて勢いよく散らばった。

「……」

その様子を少し離れた場所で目撃した遥は、目を見開いて驚きを浮かべ、それから剣呑な眼差しになる。

(触れただけで壊れた……何で……)

聖は戸惑いながらも、青白く生気を失った顔で横たわるヴァンを覗き込み、肩に手をかけて揺すぶった。
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